「たくましい消防士」から「優しい消防士」へ、消防士の理想像が変わるかもしれない。消火や救急の技術を学ぶ静岡県消防学校の入校式が2023年4月行われた。新人職員117人のうち女性は10人で1割を占める。「女性や子供に寄り添っていける消防士になりたい」と、目標を語った。
18~28歳の117人が入校

静岡市清水区にある静岡県消防学校で、6日入校式が開かれた。市や町で採用された新人の消防職員が訓練を通じて、消防士としての知識や技術を身につける。
入校したのは、この春 県内の消防本部に採用された18歳から28歳までの消防職員117人だ。このうち女性は10人、1割だ。

式では三沢 泰 校長が「目標を高く持ち、住民の期待に応えてほしい」と訓示すると、静岡市消防局の漆畑諒さんが「責務を自覚して全力を挙げて勉学に努める」と宣誓した。

志太消防本部・荒金 遼河さん:
どんな時でも誰かの助けになれる、そんな消防士になりたい

富士消防本部・宮川 若奈さん:
災害の際には女性の消防士が必要と言われていたので、女性の方々や子供にも寄り添っていける消防士になりたい

県消防学校・山田 友也 教官:
訓練は、消防士ならではの消火活動、救助活動もある。心肺蘇生を含めた救急活動の訓練も今から予定している
入校した消防職員は、半年間 寮生活をしながら知識や技術の習得に励む。
女性消防士 入校者1割だが全体では3%
消防学校によると、初めて女性が入校したのは1990年度の3人で その後いなかったが、2018年度11人・2019年度10人・2020年度11人・2021年度14人・2022年度11人・2023年度10人と、このところ10人前後が続いている。いずれの年も新人職員の1割程度だそうだ。

静岡県全体の消防士は4646人で、このうち女性は152人 3%だ(2021年4月現在)。年齢が高い世代には女性消防士がいなかっただけに、全体でみると1割には届かない。
消防学校によると、女性消防士の志望動機は、「家族が病気やケガの時に助けてもらった隊員の姿を見て憧れた。その時は何もできなかったので、今度は助ける側に回りたい」「学生時代にスポーツ経験があり体力をいかしたい」などが多いそうだ。
消防学校で何を学ぶ?
さて、消防学校で何を学ぶのか、確認しておこう。
消防学校は県内の市や町の消防職員や、消防団員が教育訓練を行う学校だ。

訓練の種類は、採用されたばかりの新人消防職員が学ぶ初任科(115日)、2年目以降の職員が対象となる潜水などの技術を学ぶ水難救助科(14日)、火災の調査に関する知識などを身につける火災調査科(10日)などがある。

特に新人職員が学ぶ初任科の訓練は厳しいそうだ。消防職員としての基本的な技術や体力を身につけるため、腕立て伏せなどのトレーニングや、重い荷物を背負って夜間に歩き続ける訓練なども行う。
自分の命を懸けて人の命を救いに行くだけに、過酷な状況を想定しての訓練が必要なのだろう。

訓練の達成度合いは、男女で差があるのだろうか、県消防学校・宮田真人副校長に聞いた。
静岡県消防学校・宮田真人副校長:
消防士の教育を13年してきて約100人の女性消防士をみてきたが、途中で脱落した人はひとりもいない。覚悟を決めて入校してくるので、意志が強いのだろう

新人職員たちは2023年9月下旬まで消防学校で学んだあと、採用された市や町の消防で実際の職務にあたる。
(テレビ静岡)