みずほフィナンシャルグループとLINEは、共同で設立を目指してきたネット銀行「LINE Bank」の計画中止を発表した。

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みずほフィナンシャルグループとLINEは2018年、共同で新たな銀行を設立すると発表。2020年度の開業を目指してきたが、システム開発の遅れなどから2年延期していた。

そして今回、LINEアプリ上で全ての銀行サービスが完結する“スマホ銀行”をスタートさせる計画だったが断念する形となった。

安全安心・利便性の実現と競争激化

今回の計画中止には、さまざまな事由がみられる。

中止の理由について、みずほフィナンシャルグループとLINE は「安全・安心で利便性の高いサービス提供には、さらなる時間と追加投資が必要。お客様のご期待に沿うサービスのスムーズなご提供が、現時点では見通せない」と説明している。

計画中止の背景には、ネット銀行の競争がすでに激化しているなど、外部環境の変化もあるとみられている。

構想から4年を経て撤退は英断

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
「LINE Bank」の断念、馬渕さんの目には、どのように映っていますか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
LINE上で「金融サービスがスムーズに受けられる」と期待されていただけに残念ですが、正直この発表に驚きはありません。

「LINE Bank」の構想の発表から、今回の撤退を判断するまで4年以上かかっています。

構想が前に進めなくなる「ネックポイント」が指摘されていたため、無理やり事業を進めなかった点は英断だったと言えます。

構想が前進しなかったネックポイント3つ

堤 礼実 キャスター:
「ネックポイント」というのは、具体的に、どのような課題があったのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
一番大きな理由は「内部的な問題」のように思います。

LINEがZホールディングスと経営統合を進めた結果、同じグループ内に既に「PayPay銀行」があります。

「グループに2つも銀行はいらない」「LINEが金融事業をやる意味はあるのか」といった、後ろ向きな声が内部で上がっていたようです。

二つ目にあるのは、ここ数年の「環境変化」です。いま、個人情報の保護やサイバーセキュリティー対応、さらにはマネーロンダリンク対策など、システム構築のハードルはがどんどん高まっています。

そんな中でも、2021年には、みずほ銀行でシステム障害が相次ぎ、同時にLINEでも個人情報の問題が発覚しました。こうした課題をクリアするためのシステム投資は、かなりの金額になることが予想されます。   

さらに、三つ目になるのが「出遅れ」です。開業に時間がかかっている間に、楽天銀行は約1300万口座を突破。29日、住信SBIネット銀行がネット銀行として初の株式上場を果たすなど、差を開けられてしました。

オンライン銀行は、先行者利益がものをいう世界です。出遅れを挽回するのは厳しいと判断したようです。

堤 礼実 キャスター:
今回の「LINE Bank」の断念は、今のオンラインによる金融サービスが抱える課題とも重なる部分があるように思いますが、いかがですか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
金融サービスは私たちの大切なインフラです。最近は、金融業界で口座開設の獲得競争が激化しすぎているのも懸念点です。

口座開設キャンペーンに費用がかかって、システム投資が不十分になってもいけません。

経営のスピード感が求められる時代ではありますが、企業が疲弊しすぎてしまうことで、私たちのサービスにも、影響が出てしまうのは本末転倒のように思います。

堤 礼実 キャスター:
今や、手の中のスマホを通して、さまざまな銀行サービスを受けることができるようになりました。

ただ、金融というビジネスは便利さよりも、やはり安心感や信頼が大切ですよね。私たち利用者が安心してお付き合いのできる、便利なサービスが広がっていけばと思います

(「Live News α」3月30日放送分より)

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