ネットで購入した商品が届かず、お金だけ取られた…。

こうした被害は、大人だけに限ったものではない。実は、高校生の間でも起きている。40人クラスの場合、1クラスに2人程度が経験しているというのだ。

これは、消費者庁が徳島県内の高等学校等の生徒(有効回答数4627人)を対象に、デジタル取引の利用頻度やネットを介した消費者トラブルの被害状況について調査して明らかになったもの。

調査によると、「商品の機能・品質が思っていたよりもかなり悪かった」経験がある(「一度だけあった」「2・3度あった」「何度もあった」の回答の合計)生徒は57.3%、「開封したばかりの商品が壊れていた」経験がある生徒は38.2%、「注文したものが届かず、お金だけ取られた」経験がある生徒は5.9%、「詐欺に遭い、だまされてお金を払った」経験がある生徒は3.2%だった。

消費者トラブルの経験(画像提供:消費者庁)
消費者トラブルの経験(画像提供:消費者庁)
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「注文したものが届かず、お金だけ取られた」経験がある生徒は、全体に占める割合は5.9%だが、実数では271人に上り、そのうち70人が「2・3度あった」または「何度もあった」と回答。被害金額は不明だが、40人クラスで換算すると、1クラスに2人程度、経験者がいることになる。

「詐欺に遭い、だまされてお金を払った」経験がある生徒は、全体に占める割合は3.2%だが、実数では146人に上り、そのうち44人が複数回経験。手口や被害金額は不明だが、1クラスに1人程度、経験者がいるということになる。

なおリリースでは、この2種類のトラブルを「特に重大な消費者トラブル」としている。

「特に重大なトラブル」の経験者数(画像提供:消費者庁)
「特に重大なトラブル」の経験者数(画像提供:消費者庁)

この数値について、鳴門教育大学大学院の坂本有芳教授は、「トラブルに遭遇する割合が20分の1前後に達するというのは、かなり大きな割合である。例えば、近年の道路交通事故の発生件数は人口あたり0.24%に過ぎず、建物火災に至っては0.03%に過ぎない。今回の調査で示された消費者トラブルの多さは、まさに桁違いである」と危険視している。

また調査では、高校生らに消費生活についてのクイズも実施。
例えば、「店で買物をするとき、契約が成立するのはいつの時点だと思いますか?」
〈1〉商品を受け取ったとき
〈2〉代金を払ったとき
〈3〉店員が「はい、かしこまりました」と言ったとき
〈4〉分からない
という4つの選択肢から選ぶものだ。


なお、このクイズの正しい答えは〈3〉となる。

消費生活についてのクイズ(画像提供:消費者庁)
消費生活についてのクイズ(画像提供:消費者庁)

この消費生活についてのクイズは、「注文したものが届かず、お金だけ取られた」や「詐欺に遭い、だまされてお金を払った」経験がある生徒ほど、平均点が低い傾向にあった。

「注文したものが届かず、お金だけ取られた」経験が「全くない」生徒の平均点は10点満点で6.2点、「1度だけあった」生徒は5.3点、「複数回あった」生徒は4.6点だった。「詐欺に遭い、だまされてお金を払った」経験が「全くない」生徒の平均点は6.1点、「1度だけあった」生徒は5.0点、「複数回あった」生徒は3.7点であった。

「特に重大な消費者トラブル」の経験回数別にみたクイズの平均点(画像提供:消費者庁)
「特に重大な消費者トラブル」の経験回数別にみたクイズの平均点(画像提供:消費者庁)

こうした結果が出たわけだが、高校生が被害に遭わないために、どんな対策をすればよいのか?調査を行った消費者庁新未来創造戦略本部の担当者に詳しく話を聞いてみた。

デジタル取引の消費者相談は増加傾向に

――なぜこのような調査をした?

社会のデジタル化が進展し、デジタル取引に係る消費者相談が増加傾向にある中、若年者の消費生活や消費者被害の実態を把握することと、成年年齢引下げやデジタル化の進展に対応した消費者教育の手法等について検討することを目的として、徳島県内の高等学校等の生徒と教員を対象に調査を実施しました。


――なぜ徳島県の生徒が調査対象となった?

平成29年度から令和元年度の3年間にわたり、徳島県内の全ての高等学校等の生徒を対象に、消費者教育教材「社会への扉」を活用した授業を実施し、大規模な調査を行った経緯があります。この調査は、消費生活に関する知識の定着度や意識の変化を把握することを目的としておりました。

そこで、今回の調査においても、徳島県教育委員会を通じて全学校の協力を得ることができたため、徳島県の高等学校等の生徒を対象に、本調査の主目的である生徒の消費者被害やデジタル取引の利用の実態等のほか、消費者教育の授業後の生徒の知識の定着度について調査を行いました。


――重大な消費者トラブルの経験者の数についてどう思う?

今回の調査では、40人クラスで換算すると、「注文したものが届かず、お金だけ取られた」経験がある生徒は1クラスに2人程度、「詐欺に遭い、だまされてお金を払った」経験がある生徒は1クラスに1人程度いるという結果が得られました。

これは、徳島県という特定の地域における調査結果であることに留意する必要はありますが、高校生の消費者トラブルの経験に関する実態を示す一つの調査結果として捉えられるものと考えています。


――重大な消費者トラブルの経験が多い生徒ほど、クイズの点数が低い傾向をどう見ている?

今回の調査結果からは、重大な消費者トラブルの経験の多寡と消費生活についてのクイズの得点の高低の因果関係については分析できませんが、一定の相関関係は認められることから、消費生活に関する正確な知識を持つことの重要性が示唆されているものと考えられます。

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おかしいなと思ったら「消費者ホットライン188」に相談を

――「注文したものが届かずお金だけ払った」「詐欺に遭い、お金を払った」といったトラブルに遭った場合、どうしたらいい?

あきらめたり、一人で悩んだりせずに、「消費者ホットライン188」に相談ください。地方公共団体が設置している身近な消費生活センターや消費生活相談窓口につながり、専門の相談員による助言やあっせんにより、トラブルの解決を図ることができる場合もあります。


――被害に遭わないために、消費者庁や学校はどんな対策をしていくべき?

消費者庁では、若年者の消費者被害・トラブルの未然防止や拡大防止を図るため、「消費者ホットライン188」の周知やSNS(LINE公式アカウント「消費者庁 若者ナビ!」やツイッター「18歳から大人」)での注意喚起情報の発信等に努めています。また、「消費者教育ポータルサイト」においては、学校の教員等が活用できる消費者教育の教材等の情報を集約・発信しており、高等学校等へ消費生活相談員等の講師を派遣する出前講座も引き続き実施していく予定です。

今回の調査結果からは、「外部講師による出前講座の実施」といった消費者教育手法には、生徒が「特に重大な消費者トラブル」に遭うことを防ぐ効果がある可能性も示唆されていると考えられることから、各学校等においては、上記のような消費者教育教材や出前講座をぜひ活用していただければと考えています。

消費者ホットライン188 ポスター(画像提供:消費者庁)
消費者ホットライン188 ポスター(画像提供:消費者庁)

――家庭でできる対策は?

若年者の消費者トラブル防止のためには、保護者の方にも、最近の消費者トラブルの傾向やクーリング・オフ等の対応策について知っていただくことが必要であるといえるため、消費者庁では保護者向けセミナーの開催や動画の配信も行っています。

また、各家庭においては、普段から家族同士のコミュニケーションを図り、子どもの様子を見守り、何かおかしいなと思ったら速やかに「消費者ホットライン188」に相談することが被害防止につながると言えます。


――この調査は今後、どう活かしていく?

高校生等を始めとした若年者に向けた消費者教育や消費者トラブルに係る注意喚起を行っていく際の参考資料として活用していきたいと考えています。



若者が消費者トラブルの被害に遭わないようにするには、消費者庁の担当者が話すような対策を心がけたほうがよさそうだ。また、おかしいなと思ったら、すぐにホットラインに相談して欲しい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。