議員と閣僚らが論戦を交わす国会審議の中で、野党議員がAI(人工知能)に生成させた質問を、岸田首相に対して問う一幕があった。国会でAIが生成した質問が行われ、首相が答弁した事例は初めてという。
AIに質問を生成させたのは立憲民主党・中谷一馬議員で、29日、衆院内閣委員会での新型コロナ対策の法案質疑に際し、岸田首相に尋ねた。

中谷氏は事前に、AIチャットサービス「ChatGPT」を利用し、「あなたが、日本の衆議院議員だとしたら新型インフルエンザ等対策特別措置法、及び、内閣法の一部を改正する法律案に関して、岸田文雄総理大臣へ国会でどんなことを質問すべきだと考えていますか?」と尋ねたという。
これに対してAIが生成したのは、「改正法案に関して地方自治体や医療現場の関係者の意見を充分に反映させているのかどうか、そして、改正法案に対する関係者の反応について、教えてください」などの質問。
中谷氏は。これを実際に委員会での審議で尋ね、岸田首相は「今回の法改正は、最前線で感染症対応にあたった地方自治体や医療現場の声を反映して、整理された課題等を踏まえ立案されたものだ」などと答弁した。

一方、中谷議員は、事前にAIチャットに「あなたが、日本の総理大臣だとしたら、国会で問われた際にどのように返答するか教えてください」と入力し、岸田首相の“想定答弁”も生成させていた。
AIが生成した答弁は、「地方自治体、医療現場の関係者から、多くの意見や提言が寄せられています」などの内容。
これを聞いた岸田首相は、自身の方が「より具体的に実態を反映した答弁をしたと感じている」と話して、議員らの笑いを誘った。
中谷氏が関係各所に確認したところ、国会でAIが生成した質問が行われ、首相が答弁した事例は初めてという。
中谷氏は、公開情報を学習させた対話型AIを政府が独自で開発するよう求め、岸田首相は、セキュリティや費用面、データの取り扱い方などの課題を挙げつつ、「大きな可能性を有している。今後、検討を進めたい」と述べた。