思い出の洋服に、新たな価値を与える循環型ファッションのワークショップが開催された。
この記事の画像(14枚)染谷琴音記者:
「リカちゃん」が着ているこちらの洋服、実は着なくなった自分の衣服をアップサイクルしているんです。
ファッションコミュニティー・NewMakeが、タカラトミーの「リカちゃん」とコラボし、思い出の衣服をアップサイクルするワークショップを開催した。
普段は裁縫をすることがない人や、小さな子どもたちが、着られなくなってしまった思い出の服や、お気に入りの生地を持参して参加。
小学3年生の母親:
ダンスの衣装がサイズアウトしてしまったので、それを切って持ってきました。せっかくなので思い出衣装を「リカちゃん」用にしようと思って…。
初めて作ったトップスに、お母さんお手製のデニムを組み合わせ、世界で一つだけのオリジナル衣装が完成。デニムの端切れもアップサイクルした。
リカちゃんとアップサイクルに親和性
今回、ワークショップを主催するNewMakeが「リカちゃん」とコラボした理由とは…
STORY&Co. NewMakeディレクター・吉村真由さん:
もったいないけど捨てられない物ってみんなたくさん持っていて、もったいないなあと思ったところから、それをどういうふうに表現すればみんなが楽しく、見てる人も楽しいものづくりができるかなっていうところから、私がたどり着いたのが「リカちゃん」でした。
“大切なものに愛着を持って長く使う”。この親和性があったことが、ワークショップ開催につながった。
タカラトミー リカちゃん事業部・向井里奈さん:
「リカちゃん」とお洋服というのは、深いつながりがあるなと考えています。本当にお気に入りの一着を見つけて大切に扱って長く「リカちゃん」に着せてあげるということが、とても教育上もいいと思っているので、そういう考えから今回の企画には賛同致しました。
55年以上愛されてきた「リカちゃん」と、クローゼットに眠ってしまった自身の洋服のコラボレーション。
参加者に新たな気づきを体験してほしい、と主催者は語る。
STORY&Co. NewMakeディレクター・吉村真由さん:
アップサイクルをする拠点がどんどん増えて、もっと表現できる幅も増えていったら、ものを作る人以外にもワクワクするものとか気づきだったりとか、発見みたいなものを届けていけるんじゃないのかなと思っているので、もっと広くいろんなところでこの活動を広げていきたいです。
今回のワークショップで作られた作品は、東京都の渋谷ヒカリエ8階 CUBEで、5月2日(火)から5月7日(日)に展覧会での展示を予定している。
「リ・パーパス」で価値の差別化を
「Live News α」では、一橋ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに話を聞いた。
堤 礼実 キャスター:
今回の試み、いかがですか。
一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
新しい命を吹き込むように、別の意義や目的を与えることを、海外では「リ・パーパス」(rePurpose)といい、これはビジネスの注目ワードでもあります。
卒業式のスーツやウェディングドレスなど、今は着ることがなくなっても、思い出という感情的な価値によって、捨てられないという方は多いはずです。
そうした感情が詰まったものに、新しい役割を与えることで、思い出を形にして残すことができます。
これをビジネスとして展開すると、顧客と強い絆で結ばれるきっかけにもなるのです。
堤 礼実 キャスター:
確かに、自分自身の思い出の洋服を着た「リカちゃん」というのは、他にはない特別な思いが生まれますよね。
一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
「リ・パーパス」は、製品に感情的な価値を取り入れることで、顧客がより深いレベルで共感する製品を、作り出す強力なアプローチになります。
例えば、ママの思い出の洋服を、娘の「リカちゃん」に着せると、その人形で遊んだ子が、やがてママになると思い出に背中を押されるように、子どもに「リカちゃん」を与える確率が格段に高くなります。
思い出という価値は、購買を繰り返すスイッチになり、それを誰かに伝えたくなるクチコミの効果も期待できます。
コモディティ化が進む今日では、思い出という感情的な価値は差別化の要因となり、強いブランドイメージや評判を築くことができます。
堤 礼実 キャスター:
私自身も、母が子供の頃に遊んでいた人形を譲り受けたことがあります。母から子へ、次の世代に思い出がつながれるというのは、素敵なことですよね。
一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
思い出の詰まった品物を「リ・パーパス」する。しまい込んでいたものに新しい命を吹き込むと、それを見るたびに幸せな思い出がこみ上げてくる。
そんな素敵な取り組みにたずさわるスタッフは、やりがいや仕事への誇りを感じるはずです。
ビジネスで「リ・パーパス」を展開すると、社員の満足度やモチベーションにも貢献できるのです。
思い出が過去のものだけでなく、未来につながるきっかけとなるビジネスの広がりに期待したいです。
堤 礼実 キャスター:
ビジネスという観点ではもちろん、消費者側としてもうれしい試みだと感じました。もう着ないけれど、思い出が詰まっていて中々捨てられずにクローゼットの端で眠っている洋服もあります。思い出の品を別のカタチにして、その思い出が、新たな思い出を作ってゆく、そんな素敵なつながりが、広まっていくといいですね。
(「Live News α」3月27日放送分より)