北海道のほぼ中央に位置する美瑛町。なだらかに丘が広がる美しい自然景観が魅力で、日本有数の観光地の一つになっている。

新栄の丘(提供:美瑛町観光協会)
新栄の丘(提供:美瑛町観光協会)
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この美瑛町の観光協会が3月10日、Twitterで「立入禁止エリアに入ること」について注意を呼びかけ、1万7000以上の「いいね」がつくなど話題となっている。(3月24日現在)

投稿ではまず、「どうして畑に入るの?どうしてゴミを捨てるの?どうして看板は見てくれないの?」と問いかけている。

そのうえで「『美瑛の丘』は畑です。私たちが食べる野菜を作る大切な場所です。個人の農家さんが好意で美瑛の景色を楽しみに来て下さる方のためにと・・全部立入禁止せず職場を少しだけ開放して下さっている場所です」と注意喚起した。

また、このツイートには画像が貼られていて、雪が積もった「美瑛の丘」とみられる場所に多数の足跡がついている様子が写っている。

ツイートに貼られた画像を見ると、「入ってよい場所」と「立ち入り禁止の場所」の明確な線引きがあるのかは分からない。立ち入り禁止であることは、どのように示されているのか? また、「美瑛の丘」を観光する時には、どのようなことに気を付ければいいのか?

美瑛町観光協会の担当者に“守るべきマナー”を聞いた。

雪解けと共にゴミが山のようにあらわれた

――改めて「美瑛の丘」の魅力は?

「美瑛の丘」は観光のために作った場所ではなく、美瑛町一帯の農業景観(地形)が他の地域にはない、イタリアのトスカーナ地方にも似ており、外国に訪れたような「絵になる風景」の場所と言われています。

ケンとメリーの木(提供:美瑛町観光協会)
ケンとメリーの木(提供:美瑛町観光協会)

――「美瑛の丘」は正式名称?

正式名称は「波状丘陵」です。美瑛町の地勢は、おおむね波状丘陵で、その丘陵をぬって、美瑛川、置杵⽜川、宇莫別川、辺別川などの河川が流れ、その流域が⽔⽥となっています。丘陵部には畑が広がり、東部には⼤雪⼭系が控えているため、独特の景観を呈しています。

「美瑛の丘陵景観」「美瑛の波打つ丘」などよりも、美瑛町を訪れる方から自然発生的に、今では「美瑛の丘」の名で知られるようになりました。

そのため、「美瑛の丘はどこですか?」と質問を受けることがありますが、地勢(地形)のことを指すため、「具体的にここ」という場所を示すことが難しいです。

――3月10日というタイミングで注意喚起のツイートをした理由は?

これまでも観光関係機関に協力を依頼したり、巡回人数を増やしたりして、直接、注意を行っておりましたが、四六時中、行っているわけではないため、監視の目が届かないところで、立ち入りやゴミのポイ捨てが多数ありました。

また、雪が降ることで立ち入った足跡(痕跡)やゴミも雪で消し去られ、誰かに続いて追随することが一旦は止むということを繰り返していました。

雪解けと共にゴミが山のようにあらわれ、この冬、美瑛町に訪れた痕跡が一気に目に見え、地域の方からの声が増してきたからです。地域の方の心の声を届けたくて、ツイートしました。

観光客に対して好意的ではなく、快く思っていない農家さん、地域の方もいます。具体的には、作業しているところを無断でカメラを向けられたり、敷地に入られたり、ポイ捨てのゴミ、トイレをその辺でされたり、路上駐車が増えることで道路をスムーズに通ることができなくなる、などです。


――美瑛の丘の「入ってよい場所」と「立ち入り禁止の場所」の違い(境界など)はどのように示されている?

ツイートした写真の場所は「マイルドセブンの丘」の名で知られている場所で、現在、地主の方が好意で駐車場(私有地を開放)を作り、見学エリアをロープなどで仕切っています。

他にも、美瑛町にはいくつかの場所があり、町で駐車場を整備し、観光スポットとして紹介しているところもあります。基本的には舗装された場所以外は、ほとんどが私有地のため、看板やロープなどを張っておりません。

マイルドセブンの丘(提供:美瑛町観光協会)
マイルドセブンの丘(提供:美瑛町観光協会)

――看板は、どのような場所に掲示していた?

ロープの手前あたりになります。ここの場所は、地主さんの意向もあり、あまり目立つ看板は設置されていません。

注意喚起の難しさ

――注意喚起に関して、難しいと感じていることは?

主に以下の3点です。

・それぞれの土地に所有者がいること
・どうして入ってはいけないかという理由を浸透させること
・立ち入りには許可が必要な場所があること

立ち入り禁止の看板(提供:美瑛町観光協会)
立ち入り禁止の看板(提供:美瑛町観光協会)

――マナー違反をする外国人観光客もいる?

います。雪の中に飛び込んだり、水着で入ったりする人もいます。また、道端に車を止めて、雪の上ではしゃぐ動画をSNSなどで発信する人もいます。北海道は、土地の多くは畑や牧草地のため、雪の上であっても許可なく入ることは禁止されています。

「美瑛の丘」は単なる観光スポットではない

――「美瑛の丘」を観光する時には、どのようなことに気を付ければいい?

「美瑛の丘」=「単なる観光スポットではなく、美瑛の地勢(地形)」であるということを知ってほしいです。


――春の今の時期に旅行で訪れるとしたら、どのように楽しんでほしい?

雪解けと共に、去年の秋にまいた「秋まき小麦」が顔を出し始めます。春の息吹と共に、生命がぐっと感じられる季節です。

一方で、春は農家さんにとって、とても大事な季節です。畑に種をまいたり、苗を植えたりと、昼夜を惜しんで作業を行いますので、作業の邪魔にならないよう、舗装された場所から風景をご覧になってほしいと思います。

春の風景を心に刻んで、別の季節に同じ場所に訪れていただけたら幸いです。

「美瑛の丘」は、基本的には舗装された場所以外は、ほとんどが私有地のため、看板やロープなどを張っていないという。この春に観光に訪れる場合は、まず「単なる観光スポットではなく、美瑛の地勢」であるということを理解し、さらに農家の作業の邪魔にならないよう、舗装された場所から風景を楽しんでほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。