“街をシェアする新しい働き方”が注目を集めている。

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知的障がいのある作家が描くアート作品をビジネスに転換するスタートアップ企業「ヘラルボニー」の東京HR部門シニアマネジャー・伊藤良太さん。

ヘラルボニー東京HR部門・伊藤良太シニアマネージャー:
普段(の職場)とは違うところで今日はミーティングがあるので、そこで打ち合わせをしたいと思います。

東京・丸の内で変わる “ワークスペース”のあり方。そして多様な人を引きつける新たな街づくりが始まっている。

“街シェア” で生まれる新たな価値

正午過ぎ、東京駅から降りてきた伊藤さんがまず向かったのは、自身の会社ではない。

新東京ビル4Fにある活気あふれるカフェラウンジ「Shin Tokyo 4TH」だ。

伊藤さんの勤めるスタートアップ企業は、本来「TOKIWA ブリッジ」という、三菱地所がサポートするシェアオフィスを拠点として活用している。

TOKIWA ブリッジの入居者になると、「大手町ビル」「新東京ビル」「常盤橋タワー」など、三菱地所が運営する東京駅周辺の複数の連携施設を利用することができるため、業務内容に応じて、ワークスペースを使い分けられる。

ヘラルボニー東京HR部門・伊藤良太シニアマネージャー:    
人事という領域だと、どちらかというと(本来の拠点と)別で、集中して話をしたい時に使わせてもらっている。

この日、伊藤さんは、人事と採用について他社のアドバイザーとの打ち合わせのため、普段の拠点である「TOKIWA ブリッジ」とは異なるワークスペース「新東京ビル」を選んだ。

ヘラルボニーアドバイザー(メルカリ所属)・西丸亮氏:
こうクリエイティビティが発揮される空間だと、思いつかないアイディアだったり、コミュニケーションの中で気づきが得られると思うので、すごくすてきな空間だと思う。

利用できる複数の施設は、東京駅を中心に徒歩でも5分から10分圏内。

この日、伊藤さんが「新東京ビル」の次に訪れたのも、別の連携施設である常盤橋タワーの「My Shokudo」。    

「My Shokudo」でのランチミーティングを経て、本来の拠点へ。

ヘラルボニー東京HR部門・伊藤良太シニアマネージャー:    
歩くことによっての、リフレッシュであったり、仲間とのコミュニケーションもできるので、歩くことも結構いい時間につながっている。

このように働き方が多様化し、オフィスも変化が求められる時代になった。

働く人が目的ごとに複数施設を利用し、“街をシェアする”ことは、丸の内エリア全体にも新たな価値をもたらすという。

三菱地所フレキシブル・ワークス ペース事業部・河野安紀部長:    
(丸の内を)回遊した先で得られる機会やそこで交わるコミュニティーはそれぞれ違う。そこに新たに入っていただくことで、既存のそれとはまた変わった変化が出てきたり、未来に向けて、新しい社会変革につながっていくような価値の創造につながっていけばいいなと思います。

イノベーションが生まれるきっかけに

「Live News α」では、マクアケ共同創業者/取締役の坊垣佳奈(ぼうがき・かな)さんに話を聞いた。

海老原優香 キャスター:
今回の取り組み、どうご覧になりますか。

マクアケ共同創業者/取締役・坊垣佳奈さん:
どんな働き方を実現していくべきなのか。これは組織作りや、企業のカルチャー形成に直結するものであり、経営者や人事にとっては非常に重要な経営課題になります。

社員のことを考えてつくられた人事制度も、それが自社のカルチャーに寄り添ったものでないと、なかなか浸透しません。

今回の“街をシェア”するように、複数の施設を目的にあわせて利用できる三菱地所の取り組みは、さまざまな刺激を受ける自由で闊達(かったつ)なコミュニケーションのカルチャー形成の力になるように思います。

海老原優香 キャスター:
確かに、社外の方と接することでアイディアがひらめいたり、気づきが得られることがありますよね。

マクアケ共同創業者/取締役・坊垣佳奈さん:
今、日本で求められているイノベーションも多様性、つまり外の世界から受ける刺激や相互理解、異なる個性を認め合うことから生まれます。

今回の試みのように、毎日少しずつ違う人と顔を合わせる機会が作れたり、移動が息抜きになったりするのは、イノベーションが生まれるきっかけに、通じるものがあるのではないでしょうか。

思考硬直化を避ける工夫を

海老原優香 キャスター:
坊垣さんはお仕事を通じて、異なる者同士のコミュニケーションの大切さを感じるケースなどはありますか。

マクアケ共同創業者/取締役・坊垣佳奈さん:
私の場合、マクアケでの仕事を通じて地方の中小企業の方と接する機会も多いのですが、ものづくりから販路まで、すべてが固定化してしまっている場合があります。

すると、同じ人たちと同じ構造の中で物事を考える機会しか作れず、考えが深くなることはあっても、広がっていかないという悩みを、よく聞きます。

こうしたジレンマを組織論では、「タイトカップリング」といいます。これは同じ場所・同じ空間で同じ人たちの中で毎日会話をしていると、思考が硬直化していくことを表します。

この「タイトカップリング」を避けるために、目的に合わせて場所を変えて仕事をしたり、少しずつ違う人と顔を合わせる機会が作れる工夫を企業の制度として取り入れたり、そのカルチャーを社内に根付かせることが求められています。

海老原優香 キャスター:
例えば、同窓会が楽しいのは、かつて同じ環境にいた友人たちがそれぞれ別の道を歩んでいることで、新しい一面を垣間見たり、刺激を受けたりするからだと思います。

仕事でも同じはずです。外の世界との出会いやコミュニケーションが、自分の中の新しい可能性を広げるきっかけになるかもしれません。

(「Live News α」3月23日放送分より)