全校児童12人の福井・大野市の和泉小学校で3月、卒業式が行われた。2023年の卒業生は、男子児童1人だけ。在校生は、学校を巣立つ“お兄ちゃん”を、涙と笑顔で送り出した。
少人数の学校だからこそ"できたこと"

大野市・和泉地区の人口は、約480人。少子化の影響で、和泉小学校の在校生はこの10年間、20人を超えることはなかった。2022年度の卒業生は村松徹郎くん、ただ1人。卒業式が始まり、村松くんが入ってくると、在校生は大きな拍手で迎えた。卒業証書は、地元に伝わる和紙「穴馬紙」で作られる。作成したのは村松くん本人だ。校長は手作りの卒業証書を手渡し、この6年間を振り返った。

山田善信校長:
4年生からは、学年で1人となりました。寂しさや不安もあったでしょうが、持ち前の明るさと元気の良さで、何事にも一生懸命頑張ってきましたね

村松くんは、3月11日のクロスカントリースキーの全国大会で3位に入賞したスポーツマンだ。いつも笑顔で下級生に接し、太鼓の演奏や運動会などで活躍する姿はみんなの憧れだった。卒業式では、5年生以下の在校生が感謝の言葉を直接伝えていった。

在校生:
僕も6年生になったら、立派なリーダーになりたいです

卒業する村松徹郎くん:
楽しい思い出をともにつくった在校生の皆さん。きょうまで支え、育ててくださった家族の皆さん。本当にありがとうございました

児童全員に心を配ってきた村松くんは、まさにみんなの“お兄ちゃん”。別れの歌を歌うと、これまでの楽しい思い出がよみがえり、在校生の頬には涙がつたった。

卒業する村松徹郎くん:
たくさんの人と出会って、先生にいろんなことを教えてもらって。少人数の学校だからこそできたこともあり、誇りです
“お兄ちゃん”から一人一人へ手紙

最後は、和泉小学校恒例の花のトンネルをくぐってお別れとなった。花輪を持つ在校生に対して、松村くんは歩きながら一人一人に手紙を渡していった。最後は先生たちも総出で出迎え、力強く握手。たった1人の卒業生を、学校全員で送り出した。

村松くんは、4月から地元の和泉中学校に通う。しかし、少子化でこの中学校は統廃合となるため、通うのは1年間のみ。2年生からは、バスで約40分かかる市内の陽明中学校へ転校することが決まっている。
(福井テレビ)