借金返済を免れるため元同僚を殺害し、その遺体をダム湖に遺棄したとして、強盗殺人などの罪に問われた男の裁判員裁判。その判決が3月10日、福井地方裁判所であり、「借金の返済を免れるために殺害したことは明らか」として無期懲役の判決を言い渡した。

2カ月にも及ぶ裁判のあと、裁判員が会見に応じた。被害者の弁護人からは死刑判決が求められ、「判決前日は寝られなかった」、「自分が被告の人生を決めてもいいのか…」など、胸の内を明かした。

裁判長「極めて身勝手な犯行」

強盗殺人と死体遺棄、銃刀法違反の罪に問われたのは福井市の無職・丹羽祐一被告(48)。起訴状などによると2020年6月、市内の学習塾に勤務していた時の同僚・青柳卓宏さん(当時40)から借りていた約1,160万円の返済を免れようと、青柳さんを殺害し、遺体を坂井市内のダム湖に遺棄したとしていた。

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3月10日の判決公判で河村宜信裁判長は、丹羽被告は借金返済をめぐり、「青柳さんから『法的措置に出る』と告げられると、すぐに殺害行為に及んでおり、借金の返済を免れるために殺害したことは明らか」と強盗殺人罪を認定。「極めて身勝手な犯行で、動機や経緯に酌むべき事情は一切ない」とした。

一方で、凶器の包丁やきりを準備した以外に「計画性は乏しく、執拗(しつよう)性や残虐性も際立っていない」とし、求刑通り無期懲役を言い渡した。

今回の裁判で弁護側は、丹羽被告の犯行動機は家族に借金が発覚するのを恐れたためで、強盗殺人ではなく、殺人が成立すると主張。懲役10年が相当としていた。

審理を振り返り…「ストレスはあった」

判決後、裁判員6人のうち3人の男性がカメラの前で2カ月間の審理を振り返った。

「寝るときや仕事の時に裁判について思い出した。ストレスはあった」と話したのは、78歳の男性だった。

一方、39歳の男性は「イメージしていたよりはストレスはなかった」と振り返ったうえで、「2カ月は長いが、しっかりした判決を出すうえでは必要」と不満は感じなかったという。

裁判を審理する上で欠かせないのが、写真などの多数の証拠だ。2人の裁判員は、特に被害者の遺体が写った写真が印象に残ったと話した。

22歳の男性裁判員:
遺体の傷や位置や数の場所を示した写真を見せてくれた。やはり殺意の強さを感じて。一番印象的だった

39歳の男性裁判員:
遺棄されたダム湖での写真には遺体の一部が写っていて、少しびっくりした。でも、これを見て事件の悲惨さをしっかりと考えた。裁判に真剣に臨む最初のきっかけになった

そして、最も苦慮したのは量刑だと口をそろえた。
22歳の男性裁判員は、被害者の弁護人が死刑を求めたことに触れ、「同情といった心苦しい部分はあった」と打ち明けた。しかし、「量刑を決める上で公平を意識した」という。

39歳の男性裁判員は、「被告人も1人の人間。1人の人生を自分が決めてしまうというのが、すごいことをしているという印象」と率直に語った。

「判決の前の日は寝られなかった」と振り返ったのは、78歳の裁判員だ。

78歳の男性裁判員:
死刑という話も出たが、被告のこれからの人生を考えると頭を使った。どうしたらいいのか…自分なりに悩んだ。皆さんの意見を聞いて、最終的にきょうの判決に至った

「一生かけて罪を償ってほしい」

この判決を受けて被害者の兄(51)が、「判決を聞いても、うれしさも悲しさもない。どんな判決でも弟は帰ってこないから」とのコメントを発表した。そして最後に、「死ぬ瞬間まで反省し、自分のした罪と向き合って一生かけて罪を償ってほしい」と締めくくった。

一方、丹羽被告は判決から10日後の3月20日、名古屋高裁に控訴を申し立てた。被告の弁護士は控訴の理由を明らかにしていない。

(福井テレビ)

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