激動の時代、誰もが自分のキャリアなど将来への不安を抱いている。

その不安を取り除いてくれる存在がいるとしたら…。

国際コーチング連盟会員のライフコーチで、BYBSコーチング代表のボーク重子さんは、著書『人生・キャリアのモヤモヤから自由になれる 大人の「非認知能力」を鍛える25の質問』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中で、「ライフコーチは自分らしい生き方を支えるチアリーダー」だと語る。

これまで育児や子育てをする親向けの著作が多かったが、今回は自身初の大人向け。先行き不透明な時代でも、自分らしいキャリアをつくる新しい武器「非認知能力」を身につけるためにはどうすればいいのか、その手法が記されている。

そんなボークさんが、日本ではまだあまり知られていない「コーチング」について解説。コーチングを受けることで、私たちはどう変われるのだろうか。

「良い子」であればあるほど生きづらい時代

子ども時代や学生時代、それなりに成功と言われる人生を歩んできたとしたら、おそらくたくさんの「良い子の正解」に従ってきたのではないでしょうか?

もしくは、従わざるをえなかったのではないでしょうか?

・「あなたのためを思って言っているのよ」という親の正解
・「女の子・男の子はこうあるべき」という世間一般の正解
・「言われたことを言われたようにやる」という指示待ちな正解
・「目立たない・失敗しない・主張しない」というリスクを取らない正解
・「良い成績・良い大学・良い就職」という成功の絶対的正解
・「他者に勝つのが幸せと成功」的な勝者という正解

こんな正解が「幸せ」と「成功」を約束してくれたからかもしれません。

だけど社会に出てみたらこれまで良しとされてきた「良い子の正解」が機能しなくなっている現実に直面した。そんな経験はありませんか?

先が分からない社会では「良い子の正解」が通用しない(画像:イメージ)
先が分からない社会では「良い子の正解」が通用しない(画像:イメージ)
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前例を踏襲して親の言う通りにやっていれば間違いなかったはずなのに、グローバル化・多様化・AI化・少子化・女性活躍・人生100年時代・社会保障不安が加速する3年先がどうなるか分からない社会ではそんな成功法則はもう機能しない。

親世代とは全く違った世界。私たちが生きているのは、これからずっと生きていくのは、そんな社会です。

例えば終身雇用なんてとっくの昔に崩壊しているし、2030年には今ある職業の49%が機械にとって変わられるとも言われ、これまであった職業がなくなり新しい職業が生まれ、お給料は30年上がらないのに人生100年時代はもっとお金が必要になり、悠々自適の老後どころか80歳くらいまで働かないといけない。

マッキンゼー・グローバル研究所のリポートによると2030年までロボットのせいで3億7500万人が職を変えないといけないかもしれないと言っています(45カ国で労働需要がどう変わるかを予測した調査)。

人生設計の最大の部分を占めるキャリアはもろに激変の社会の影響を受けます。だからこそ当惑するし、心細くなるし、時に震えるほど不安になるのです。

ライフコーチとは地図のない社会に地図を作る仕事

それはまるで地図のない社会に、地図の書き方を教えられないままに、なんの武器も渡されずに猛獣がいる野に解き放たれるようなものです。

あなたには前例も正解もなく、ロールモデルもいない社会で、自分の人生を切り開いていくことを求められています。

だからもし不安を感じているとしたら、至極当然の反応なのです。そして安心してね。今、みんなが抱えている「一体どうやって生きていけばいいのか?」「前例もロールモデルもいない激変の時代にどうやってキャリアを築いていけばいいのか?」にも解決策はあります。

みんなが抱く“不安”を解決する際、出番になるのはライフコーチ(画像:イメージ)
みんなが抱く“不安”を解決する際、出番になるのはライフコーチ(画像:イメージ)

地図がないなら、地図のない人生に地図を作ればいい。これまでの地図が役に立たないのなら、役立つ新しい地図を描けばいい。

そこで出番になるのがライフコーチなのです。3年先が見えない社会を生きる私たちに地図を描く方法を見せてくれ、描く作業を伴走してくれる仕事、それがライフコーチという仕事です。

『LIFE SHIFT2 100年時代の行動戦略』(東洋経済新報社)では、ライフコーチは今後重要度を増す仕事として書かれています。なぜならライフコーチの仕事は「現状認知」に始まり「目標設定」「目標達成」というプロセスをお手伝いすること、いわば自分にとって意味のある、現実的で達成可能な地図を描き達成せていく作業だからです。

そこでライフコーチはクライアントが自分を知り、自分のいる場所を正確に把握して、自分にとって本当に意味のある目標を設定して、確実に達成できるように伴走します。

それはまるで暗闇に光を照らすような、一人で心細い時に側で見守ってくれる応援団のような、そんな心強い存在、それがライフコーチなのです。

新しい時代を生きるために必要なのは新しい武器

今でこそ私は「非認知能力育児のパイオニア」「非認知能力育成のパイオニア」として知られていますが、1990年代後半に32歳でアメリカに移住した時の私は「良い子の正解」が全く役立たないグローバル化・多様化が一足先に始まったアメリカ社会で立ち往生していました。

自己啓発本もキャリア構築本もたくさん読みました。結婚もしたし、出産もしたし、現代アートの修士号だって持っていたけど、私の人生は止まったままだったのです。

それがある時をきっかけに私の人生が180度変わります。

それはこれまでとは全く違う武器を身につけたことでした。それがコーチングで学んだ人生を変えるスキルの数々だったのです。それは私にとって最高のリスキリングでした。

コーチングは日本ではまだまだ新しいもので「一体なんだろう」と思われるかもしれません。コーチングは前述のように「現状認知」に始まり、クライアントにとって本当に意味のある「目標設定」をして、確実に「目標達成」するプロセスを伴走する仕事です。

そしてそのために使用するのはスキルです。

コーチングは目標達成するために一緒に伴走する仕事(画像:イメージ)
コーチングは目標達成するために一緒に伴走する仕事(画像:イメージ)

「がんばれー」「勇気を出して」「自分を信じて!」「失敗なんて怖くないわよ」という精神論ではありません。「頑張る」「勇気を出す」「自分を信じる」「失敗を恐れずに行動する」、そんな自分をスキルを使って作っていく作業。それがコーチングです。

精神論は素晴らしいのですが応援する声かけだけではまるで念力でスプーンを曲げるようなもので、人によって結果が出たり出なかったり。だからこそコーチングで使うのはスキルなのです。

コーチングは科学やリサーチ結果をベースにしたスキルの数々で確実にクライアントを結果に導きます。スキルは人を選びません。知っていれば使えるけど、知らなければ使えない。そしてスキルは使えば使うほど上達して、より自分の一部となっていきます。

コーチングを受けると何が変わるのか?

それは従来の機能しない思考と行動の癖が、機能する思考と行動のパターンに変わっていくことです。これまでの「良い子」の思考と行動の癖では遅かれ早かれ今の社会では立ち往生します。アメリカ移住当時の私がそうだったように。

これからは「良い子」という誰かの正解ではなく、「自分を知る=現状認知」、そして「自分はどうしたいのか=自分にとって本当に意味のある正解・目標」を見つけ、「自分の幸せと成功=目標達成」をしていく必要があります。

そのために機能しないこれまでの思考と行動の癖をスキルを使って機能する思考と行動の習慣に書き換えていきます。

押し付けられた「理想の自分像」の代わりに自分を知ることから始めます。そうして「こうあるべき」という幸せや成功の形ではなく自分にとって意味のある幸せと成功を夢見る。次に他力本願ではなく自力で達成できる目標を設定する。自分以外に本当の安心安全はないからです。

そして従来の「夢は大きく」ではなく「夢は小さく、そして数多く叶える」をモットーに小さな目標を設定して確実にクリアしていく。それを積み重ねていくうちに大きな目標を達成している。そうやって自分の幸せと成功を確実に自分で掴み取っていく。

「良い子の正解」が通用しない激変の時代に必要なのは、そんな社会で機能する思考と行動の癖を身につけること。このリスキリングを助けるのがコーチングで行う作業です。

その一歩はあなたが「これから機能する思考と行動の新習慣を身につけたい」と思うことから始まります。新しい挑戦は震えるくらい怖いことかもしれない。でもそれは出口の見えない不安とは違って、自分の人生を切り開いていくための冒険を前にした希望に満ちた震えです。

Welcome to the new world.

自分を生きようともがくことから自分らしい人生の幸せと成功の冒険は始まります。そんなあなたを応援しています。心から。

コーチ重子

『人生・キャリアのモヤモヤから自由になれる 大人の「非認知能力」を鍛える25の質問』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
『人生・キャリアのモヤモヤから自由になれる 大人の「非認知能力」を鍛える25の質問』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
ボーク重子
ボーク重子

Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表。ICF(国際コーチング連盟)会員ライフコーチ。アートコンサルタント。
福島県生まれ。30歳目前に単独渡英し、美術系の大学院サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートに入学、現代美術史の修士号を取得する。1998年に渡米、結婚し娘を出産する。非認知能力育児に出会い、研究・調査・実践を重ね、自身の育児に活用。娘・スカイが18歳のときに「全米最優秀女子高生」に選ばれる。子育てと同時に自身のライフワークであるアート業界のキャリアも構築、2004年にはアジア現代アートギャラリーをオープン。2006年、アートを通じての社会貢献を評価され「ワシントンの美しい25人」に選ばれた。
現在は、「非認知能力育成のパイオニア」として知られ、140名のBYBS非認知能力育児コーチを抱えるコーチング会社の代表を務め、全米・日本各地で子育てや自分育てに関するコーチングを展開中。大人向けの非認知能力の講座が予約待ち6ヶ月となるなど、好評を博している。著書は『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)、『「非認知能力」の育て方』(小学館)など多数。