これまでUFO(未確認飛行物体)とされていたものは、太陽系にやってきたエイリアン(異星人)が地球を偵察するために母船から放出した探査機の可能性があると米国防総省の当局者が明らかにした。

1945年、米海軍が赤外線カメラで撮影したUFOとみられる飛行物体(U.S. Navy)
1945年、米海軍が赤外線カメラで撮影したUFOとみられる飛行物体(U.S. Navy)
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米国防総省は7日、「未確認飛行物体に対する物理的制約」と題した研究論文の初稿を公表した。

米国防総省「未確認飛行物体に対する物理的制約」
米国防総省「未確認飛行物体に対する物理的制約」

論文は国防総省の全領域異常解決局(AARO)のショーン・カークパトリック局長とハーバード大学天文学部のエイブラム・ローブ学部長がまとめたもので「人工恒星間物体(恒星などに束縛されずに移動する人工的な物体)は、地球への接近通過中に多くの小型探査機を放出する母船である可能性がある」とエイリアンの母船の存在の可能性を初めて指摘し、その仕組みを次のように想定する。

「母船が地球と太陽の2分の1以内の距離を通過するときに、たんぽぽの綿毛が散るように無数の小さな探査機を放出して地球やその他の天体の調査をする。それはNASA(米航空宇宙局)が未知の惑星を探るときにまず「ボイジャー」や「パイオニア」探査機を送るのと同じだ。その際探査機は太陽の引力か独自の操縦能力によって母船から分離されるが、探査機が出す噴霧は既存の調査望遠鏡ではその太陽光の反射を捉えられないので、天文学者は気づかないだろう」

論文はその実例として2017年10月ハワイの天文台が発見した天体『オウムアムア(Oumuamua)』を挙げている。

それは天体観測史上初めて太陽系外から飛来した恒星間天体のことで、この天体は葉巻型で、彗星のように尾を引かず太陽系を横断しているため「人工的」なものとも考えられるようになりハワイ語で「偵察者」の意味もある「オウムアムア」と名付けられた。

「オウムアムア」のイメージ画(European Southern Observatory/M. Kornmesser)
「オウムアムア」のイメージ画(European Southern Observatory/M. Kornmesser)

この天体が地球に再接近する半年前の2017年3月9日、メートル級の流星(IM2)が地球に衝突したが、その動きはIM2と連動していることを思わせ「オウムアムア」から放出されたと考える研究者も少なくない。

この天体をめぐっては、地球外生物の人工物であるとする説と自然発生的に形成されたものという説と天文学者の間で意見が分かれているが、今回の論文の著者の1人のローブ学部長は、「エイリアンの飛行物体」説の旗頭的な存在と言われる。

今回の論文は、先月初め中国の気球が米国領空に侵入した際、一部の気球とされた物体を目視した米空軍のパイロットたちが「正体不明だった」と証言してUFOではなかったかという疑いが生じた。そこで、マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出・共和党)らの要請でAAROが調査を行い今回その要旨が公表されたものだった。

米上空現れた中国の“スパイ気球”
米上空現れた中国の“スパイ気球”

論文はその疑問には直接答えていないが、気球騒ぎ当初にサウスカロライナ州沖で撃墜された中国の気球を別にして、その後アラスカ州やカナダのユーコン州、ミシガン州ヒューロン湖上空で撃墜され機体の回収もできなかった「物体」は地球を調査するための探査機だった可能性があるということにもなった。

さらに、これまで目撃されたさまざまなUFOとされた物体も探査機だったという疑いが深まってきた。

その論拠にもなった天体「オウムアムア」は現在土星の軌道を越えた空間を進んでおり、2030年までは太陽系内にいると考えられるのでさらなる実態解明が期待できる。

また今回、米国防総省が公表した論文で「UFO探査機と母船存在説」にお墨付きが出たわけで、今後のUFOをめぐる論議が活発化することが予想される。 

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】 

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。