岩手・大槌町に、会えなくなった人に思いを伝える電話ボックスがある。東日本大震災から12年目の3月11日、思いを伝えに受話器に語りかける1人の男性がいた。電話線がつながっていない「風の電話」から、大切な人に語りかける。
友人の形見のマフラーを手に
大槌町浪板の高台にある、季節の花が咲く庭園・ベルガーディア鯨山。
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その片隅にたたずむように置かれた1台の電話ボックスが「風の電話」だ。電話線はつながっていない。
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3月11日、マフラーを大事そうに抱える男性が「風の電話」を訪れた。奥州市の黒石寺で行われる蘇民祭で、祭りを取り仕切る役の一人・佐々木光仁さんだ。
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東日本大震災前、祭りで使われる麻袋を作ってくれていた大槌町の知人の行方が今も分からないままだ。
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黒石寺蘇民祭保存協力会・佐々木光仁さん:
(コロナで)2年、蘇民祭ができなかったけど、今年は小さくだけど、やることができました。まだ冷たい海の中かもしれないけど、帰りにはお墓参りもさせてもらいますね
友人の形見のマフラーを手に、受話器に静かに語りかけた佐々木さん。
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黒石寺蘇民祭保存協力会・佐々木光仁さん:
長い間(麻袋を)作ってくれて、それで祭りが成り立ってきた。ここに来ると泣いてしまう。「せっかく守ってくれた祭りができなかった」と。「(今年は)縮小しながらも裸男たちが、やっと境内に来て清めてお札もらって帰ったよ」って(伝えた)
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震災から12年たった今も、この電話を訪れる人は絶えない。3月11日「風の電話」には、東日本大震災の日とは対照的な暖かい春の風が吹いていた。
(岩手めんこいテレビ)