岸田首相が指示した追加の物価高対策をめぐり、自民党内で意見の食い違いが起きている。
焦点となっているのは、生活困窮世帯への子供1人あたり5万円を現金給付する案だ。
まず打ち出したのが公明党。5万円の給付について「特別給付金」としていち早く案に盛り込み、財源は「2000億円前後になる」としている。14日には山口代表が会見で給付案について「15日に政府に申し入れる」と明言した。

当初、この動きを冷ややかに見ていたのが自民党だ。
自民党も党としての提言案を15日に政府に申し入れる予定だが、4月に統一地方選を控えていることから「露骨すぎる」(自民党議員)との声が上がり、ある自民党幹部は「公明党は相変わらず現金給付が大好きだな」と吐き捨てた。
公明党は過去にも定額給付金や地域振興券の配布などを主導したほか、コロナ対策でも現金給付を主張するなど「給付金」にまつわる“歴史”があるからだ。
自民党も5万円給付提言
しかしこうした中、自民党の幹部が公明党と同じ内容の提言を打ち出したことで、党内が揺れている。
世耕参議院幹事長が「参議院の緊急提言」として訴えた、困窮子育て世代に対する子供1人あたり5万円の給付案だ。
13日の自民党の全体会議で示され、党としての提言に盛り込むかどうかについては萩生田政調会長一任となった。

しかし、世耕氏は一任となった翌日の14日の会見でも「(自民党としての提言に)盛り込んで頂きたい」と強調。
こうした動きに対して「現金給付なんていう古いバラマキはもうやめてほしい」と怒りをあらわにする若手議員がいる一方で、党内からは「統一地方選で選挙協力を組む公明党に加え、世耕さんまで言い出していることを無視はできないだろう」との声が出始めている。

結局、党としては「バラマキ批判」を避けるためにも、提言には「5万円」「給付金」などの打ち出しはしないものの、世耕氏にも配慮し、「困窮子育て世代への支援」といった内容を盛り込むことで検討している。
「給付とは言っていないが、給付しないとも言っていない、どうとでも読み取れる表現」(関係者)で決着を図りたい考えだ。
ある関係者は「あとは岸田さんに決めてもらえばいい」と語っていて、「5万円の現金給付」を実施するかどうかは、結局、岸田首相が決断する形となる。
野党からも現金給付の動き
現金給付の動きは与党にとどまらない。
立憲民主党も10日、物価高対策として、所得の低い世帯の子ども1人につき5万円を支給する法案を国会に提出した。

新型コロナ・物価高騰対策予備費の約5兆円を活用して、4月末までに約378万人の子どもに支給することを目指す。
統一地方選を前に各党から相次ぐ現金給付案。対象とならない人からは不満の声があがることが予想される中、どのような判断が下されるのか。