山あいの集落に住民のつながりを呼び起こす取り組みがスタートした。長野市の芋井地区で3月から始まった「移動居酒屋」。コロナ禍でめっきり減った酒を酌み交わしながら地域のことを語らう場が復活した。
キッチンカー横付けの「移動居酒屋」
山あいを走るキッチンカー。長野市の芋井地区の古民家施設に2台のキッチンカーが横づけされた。
![古民家施設に横づけされたキッチンカーで酒や弁当を販売](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/1/4/700mw/img_145b9acd209305942d1af2df032c3420279628.jpg)
元気な「乾杯」の一声。中で始まったのは住民たちの宴会。酒や弁当をキッチンカーから購入して、皆で酒を酌み交わしながら語らう移動居酒屋「ポテトむらパブ」だ。
![住民たちの宴会が始まった(3月4日)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/a/a/700mw/img_aab2949926a57f536ac674ab3bbf6cbe295533.jpg)
参加した住民は、「こういうこと大好きだね。昔は当たり前にあったんだ」と話し、久しぶりの宴会を楽しんでいた。
地域のことを本音で話したい
「移動居酒屋」は住民の要望がきっかけで実現した。
市街地から車で20分ほどの芋井地区。住民はこの10年ほどでおよそ500人減り、現在は1958人。高齢化率は46.8%だ。
![長野市芋井地区](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/d/9/700mw/img_d98571c71e60f10d0ec6dd1b6275a54d284480.jpg)
芋井の入山集落に暮らす西沢定男さん(85)・照子さん(83)の夫婦。2人で農業に励み、定男さんは時折、退職した会社の仲間から頼まれる仕事もしている。この地で3人の子を育て上げ、今は2人暮らしだ。
![西沢定男さん・照子さん夫婦](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/e/0/700mw/img_e0b6c7e0e4e57d38fa61ba6630d982b7288778.jpg)
夫・定男さん(85):
孫たちが一緒にいればな、にぎやかでいいんだけど、ダメだ
妻・照子さん(83):
ね…
一緒に暮らしていた三女の家族は2年前、孫の進学を機に家を離れたという。最近は家の中だけでなく「集落も少し寂しい」と2人は感じていた。
妻・照子さん:
会合といいますか、そういうのもやらなかったり、やっぱりさみしいですけどね
![芋井地区の高齢化率は46.8%](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/2/700mw/img_52e4ecb690bc7e6dcab1a796a4b6cb98477033.jpg)
コロナ禍で祭りや行事の後などに酒を飲みながら住民同士で語らう場はめっきり減った。
住民の減少と高齢化が進む中、「みんなで集落や地域のことを酒を飲みながら話せる場が欲しい」と西沢さんは仲間と地域おこし協力隊員に相談してみた。
西沢定男さん:
「酒を飲みながら本音を聞きたい」っていう気持ちは持っていた。過疎化が進んできて、子どもたちが少なくなってきて、これからの芋井全体のことをどのようにやっていくか、みんなで飲みながらいろいろ本音が出てくれば
![地域おこし協力隊員の岸豊さんが「移動居酒屋」を実現させた](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/8/700mw/img_f8a2985bf2eb7df73767670252019faa153844.jpg)
要望を聞いた地域おこし協力隊員の岸豊さん(54)。
住民グループや弁当のデリバリーなどを行う会社に協力を仰ぎ、今回の「移動居酒屋」を実現させた。
地域おこし協力隊・岸豊さん:
“社交場”から“井戸端会議”みたいな話で、地域おこしの話し合い、ミニ企画などが立ち上がっていくような感じになれば
久しぶり 笑顔でおいしいお酒
![キッチンカー2台が横づけされた古民家施設に約30人の住民が集まった](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/8/8/700mw/img_887057a8bd6f045a2bb7ec4f6c5d3b69403176.jpg)
古民家施設に集まる住民たち。
久しぶりの宴会に集まったのは30人ほど。岸さんの乾杯の音頭で始まった。
![楽しむ住民](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/c/700mw/img_5c1bf835af380af2684ff53266ca3bef315795.jpg)
「最高!」との声が上がり、宴会を楽しむ住民たち。すると、すぐに地域についての語らいが始まった。
西沢定男さん:
今、一番悩んでいるのは、芋井小学校が児童17名なんですよ。あの学校がなくなっちゃうと、芋井の若い人たちがますますいなくなっちゃう
住民:
飯綱高原の生活基盤が長野(市街)になっちゃっている。だから子どもを(別の小学校へ)送っていくわけですよね。一人ずつでもいいから通わせてくれないと、芋井小学校へは(子どもが来ない)…
![久しぶりの宴会を満喫する西沢さん夫妻](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/7/6/700mw/img_76d5700d6b3ff5c343d5abc488a0b33c256900.jpg)
会合の場があればと話していた妻の照子さんは、「飲んだり食べたりしながら、よもやま話も良いことだよね」と住民たちとの交流を満喫していた。
またやりたい 月1回めどに開催
![住民と語らう西沢照子さん(左)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/1/700mw/img_51ed3e6fc9d27430a7b6ad4852e4cdf6311184.jpg)
集落のつながりを再確認する場となった宴会。
住民と語り合いたいと願っていた西沢さん夫婦はー。
西沢定男さん:
楽しかったです。来てよかったね。こういう機会をつくってもらって、感謝、感謝です。2回、3回続けた方がいい
西沢照子さん:
子どもの話、生活の話、いろんなところで話し合えば、楽しい会になる。またやりたいと思います
![要望を実現させた地域おこし協力隊・岸豊さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/c/4/700mw/img_c40845f7b696f79ed1e76b9806fefefc237842.jpg)
企画した岸さんは移動居酒屋から地域活性化のアイデアが生まれる可能性があるとみている。
地域おこし協力隊・岸豊さん:
よそでも応用が利くものだと思う。ぜひ、まねというわけではないですけど、(他地域でも)やっていただければいいんじゃないかと期待
移動居酒屋「ポテトむらパブ」。施設や集落を変えながら、今後も月1回をめどに開かれる。
(長野放送)