9月6日は“回転レストランの日”
きらめく夜景と窓ガラスに映るワインセラーのあかり。
幻想的な世界が広がる、札幌市中央区「センチュリーロイヤルホテル」の回転展望レストラン「ロンド」だ。
9月1日から10日まで同じく屋上に回転展望レストランを持つ「リーガロイヤルホテル京都」とコラボし、特別なコース料理を提供していた。
札幌と京都のシェフがお互いの街を訪れて選んだ食材でコース料理をふるまう。
このフェアは札幌の「センチュリーロイヤルホテル」が5年前、語呂合わせから9月6日を「回転レストランの日」と定めたことがきっかけで始まった。
しかしフェアの初日だった5年前の2018年9月6日。
最大震度7の揺れが北海道を襲った北海道胆振東部地震が発生した。
ブラックアウトの影響で「ロンド」は2日間にわたり営業ができなくなってしまった。
「被災地応援の意味もこめて、2023年は厚真町産のハスカップを使用することにした」（蝦名 訓 支配人)
しかし、2023年で京都とのコラボフェアは最後となる。
歴史に幕を閉じる「センチュリーロイヤルホテル」
2023年50年の節目を迎えたが、建物所有者との賃貸契約が満期を迎えることから2024年5月末その歴史に幕を閉じる。
名物だった 回転レストラン「ロンド」も閉店することに。
食事を味わいながら3時間かけてゆったり札幌の上空を1周する回転レストラン「ロンド」。
昭和の時代にはそんな施設がホテルやデパートなどにたくさんあったという。
「回転展望施設は1950年代の終わりくらいにでき始める。合わせると100施設ぐらいあると思う。『俺は動かん！座ったまま360度街を見下ろす！』という征服感や贅沢感というのは非常に大きい」(関西大学 永井 良和 教授)
昭和の風俗を研究する関西大学の永井教授によると、回転展望施設は2000年代を前に次々と廃止されてしまったという。
今や大規模な施設は、札幌と京都の2つを残すだけ。
そのひとつ、札幌の回転レストランが2024年姿を消す。
ホテルマンにも利用者にも 思い出詰まる“回転レストラン”
ここで長年働いてきた、ホテルOBの関根さんと太田さん。
「ロンド…なつかしい。70～80年代ですね？」「そうじゃないですか？髪型を見たら」(ホテルOB 関根 正志さんと太田 正さん)
ホテルマン人生のほとんどをここで過ごしたという。
こちらは開業当時の写真。
森の中からそびえたつかのように見える建物。
高さは81メートルで、札幌の商業ビルとしては当時最も高い建物だった。
「ロンド」からの眺めは、まさに絶景。
「ロンド」は訪れる人の様々な場面を美味しい食事と眺望で彩ってきた。
札幌国際大学で観光について研究している山田教授は、回転レストラン「ロンド」と「センチュリーロイヤルホテル」は札幌市民の特別な日の過ごし方に変化を与えたという。
「良い眺望の中で記念日をお祝いするとか、家族でお祝いをするというのが一番最初に行われたのはセンチュリーだった」(札幌国際大学 山田 芳之 教授)
記念日や来客があるたびに「ロンド」を利用してきた小山奈緒美さんと娘の杉村久瑠実さん。
「結婚式が終わった後？着替える前に撮った写真と、チャペルの前で撮った写真」(杉村 久瑠実さん)
久瑠実さんは、このホテルで結婚式を挙げた。
「結婚式の日ですね。特別に『クレープシュゼット』を作ってもらって支配人が隣りで解説をしてくださり、古川シェフが実演する特別なコーナーを当日作らせていただいた」(杉村 久瑠実さん)
2023年7月、結婚5周年の記念日には式で出された特別な料理を当時も厨房を担当していた古川シェフが再現してくれた。
「古川シェフが特別に『思い出のメニューより』というところを作ってくださった」(久瑠実さん)
「料理だけではなく、温かさや景色も楽しめる」(小山 奈緒美さん)
人々の心に残る回転レストラン「ロンド」。
開業前からこのホテルに携わってきた関根さんが、この建物の秘密を教えてくれた。
回転レストランがなかった⁉
「ホテルではなくビル仕様で最初は考えた。私どもがホテルにするいうことで、ホテルの目玉を作りたかった」(関根 正志さん)
実は設計段階では、回転レストランを設置する計画はなかった。
ビルの完成前に急遽取り付けられた回るレストランは、50年経った今も回り続けている。
入社から40年にわたり回転レストランの調整を行ってきた技術者の甘利さん。
「ここから点検をするかたちになる」(センチュリーロイヤルホテル 甘利 収 施設課長)
小さなモーターわずか2つで回しているのは、実は建物全体ではなく客のいる床だけだ。
「停電の時ぐらいで大きなトラブルは本当にない。よく働いてくれて。本当によくやるなあというふうに思います」（甘利 施設課長）
閉店まであと8か月。
現在、「ロンド」は予約が取りにくい状況が続く人気ぶりだ。
