キリンビバレッジから、ペットボトルの無糖ミルクティーが登場した。

食品開発の難しさを乗り越えた“無糖”

ビバレッジ新需要を求め、試行錯誤で開発された無糖ミルクティー。

新商品の無糖ミルクティーを飲む
新商品の無糖ミルクティーを飲む
この記事の画像(13枚)

麻生小百合記者:
無糖のミルクティーなので、後味もすっきりとしていて、これなら1本でもしっかり飲みきれそうです。

キリンビバレッジが3月7日から全国で発売する、「キリン午後の紅茶 おいしい無糖 ミルクティー」。 甘くないすっきりテイストのミルクティーは、これまでありそうでなかった新しいタイプだ。

キリンビバレッジ マーケティング部 午後の紅茶ブランドマネージャー・田代美帆さん:
食品表示法上、100ml当たり糖類が0.5g未満でなければ“無糖”とうたえないが、そこに本当に8年かかったというところなんですが、“無糖スペック”と呼べるために使える糖量の少ない乳原料をたくさんの中から見つけてきたというのが非常に難しいポイントだった。

商品化の壁となったのは、糖分を抑えるために適した乳原料の組み合わせ。

さらに、その乳原料に合う茶葉の選定。

紅茶の茶葉は、産地や発酵度合いにより、味や香りが様々に異なるため、茶液、香り、味の確認など茶葉の研究が行なわれた。

乳原料と合う茶葉の選定とブレンドの施策は、商品化の道筋が見えてきた、ここ約2年の間だけでも100回を超えるという。

“健康志向”で成長する無糖市場

この長い年月をかけた開発を後押ししたのは、“顧客ニーズ”。

キリンが注力する無糖紅茶市場は、2022年に前年比127%となる高い伸びを示している。

キリンビバレッジ マーケティング部 午後の紅茶ブランドマネージャー・田代美帆さん:
紅茶市場の拡張を無糖紅茶がけん引していると言っても過言ではないと思っている。お客様もやはり健康志向の高まりによって、無糖に対する意識が高まっているというのもある。

高まる“無糖需要“をカギに、紅茶市場のさらなる拡大を図る。

風味を保ちながら長期保存する高等技術

「Live News α」では、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。

内田嶺衣奈 キャスター:
無糖のミルクティーを手軽なペットボトルで楽しめるということですが、いかがですか。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
紅茶やコーヒー飲料の楽しみ方は様々ですよね。ミルクのありなしや砂糖のありなしも普通のことなので、ペットボトル飲料の無糖ミルクティーと聞いても、むしろ今までなかったの?と思われるかもしれません。

実は安全安心の長期保存が前提となるペットボトル飲料で、いつまでも茶葉本来の風味が楽しめるというのはかなり難しい技術なんです。8年かかったというのも納得です。

内田嶺衣奈 キャスター:
実は私もミルクティーが好きで、甘くない物があったらいいなと思っていなんですが、なかなか、なかったですよね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
ペットボトル飲料や缶飲料の清涼飲料水は、風味を保ちながら長期保存ができるようにするために菌を抑える技術が必要になります。

ペットボトル飲料の糖分ありのミルクティーは、この糖分が菌をおさえる仕事をしていた訳です。

一般的に清涼飲料水の殺菌や制菌の方法は、糖度を上げるか、あるいはPh値を酸性にするか、加熱殺菌によって、微生物が生きられない環境を作ります。

伝統的に、清涼飲料水に甘いものや酸っぱい味が多いのはそのためです。

この技術的に難しい課題を今回の無糖ミルクティーは、クリアしました。そのお陰で、喫茶店や自宅で楽しんでいた糖分なしのミルクティーを、手軽なペットボトル飲料で飲めるようになった訳です。

安心安全と美味しさの両立

内田嶺衣奈 キャスター:
普段、私たちが口にしている食べ物や飲み物は、苦心の末に誕生したものだったりするケースがありそうですね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
例えば、レトルト食品という言葉の語源であるレトルト釜という高温高圧殺菌釜で殺菌をすると、食品の風味が落ちてしまいがちでした。それを食品会社の努力によって、いま随分と美味しくなりましたよね。

家庭で作る食品と違って食品会社の場合、大量生産で、しかも長期間保存が前提となります。その上で競合他社との差別化を図るため、美味しさが求められます。そのためには大変な努力と技術が必要になるということです。

内田嶺衣奈 キャスター:
安心安全と美味しさ。やはり、どちらも求めてしまいます。様々な企業努力によって生まれる新商品が私たちの生活を、より満たしてくれそうです。

(「Live News α」3月6日放送分より)