演劇や映画界のハラスメント問題撲滅の活動をしてきた弁護士に、性的関係を強要されるなどして、精神的な苦痛を受けたとして、訴訟を依頼していた舞台俳優の女性が、1100万円の損害賠償を求めて提訴した。セクハラ撲滅で知られた弁護士が、セクハラ行為で訴えられたことになる。

訴えられたのは、演劇や映画界のハラスメント問題に取り組んできた馬奈木厳太郎弁士(47)。訴状などによると、原告の舞台俳優の女性(25)は、2018年、「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会(以後、「なくす会」)」を設立。

提訴後、記者会見を行った原告の女性(3日午後 東京・千代田区)
提訴後、記者会見を行った原告の女性(3日午後 東京・千代田区)
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女性は、馬奈木弁護士に「なくす会」の顧問に就任してもらうとともに、自らが訴えられていた訴訟も依頼したという。しかし、女性が、恩義を感じ、顧問として気を使っていたことに乗じて、馬奈木弁護士は、2019年9月ごろから2022年1月ごろにかけて、セクハラ行為を繰り返したとのこと。

女性は、ハラスメント講習会が行われた後の懇親会で、体を触られたり、訴訟の打ち合わせにかこつけて呼び出され、路上でキスをされるなどしたという。

また、馬奈木弁護士から、LINEで「入浴中の写真を送ってくれてもいいよ」「僕がだんだんと知れればいいの。性感帯とか」などのメッセージも送られてきたとのこと。さらには、「なくす会」の仕事を継続することと引き換えに、性行為を強要され、その結果、女性は、精神的な不調に陥ったとされる。

女性は、強い精神的苦痛を受けたとして、きょうまでに、馬奈木弁護士を相手に、1100万円の損賠償を求める訴えを、東京地裁に起こした。

弁護側は、性的関係を明確に断ることができなかった背景について、「優越的な人間関係への配慮や、心理的コントロールがあり、弁護士の立場を利用したもので、極めて悪質」としている。この手口は「エントラップメント型ハラスメント」と呼ばれているという。

提訴後の記者会見で、女性は、「馬奈木氏には、生涯、弁護士として活動しないことを求める」と述べた。これまでに馬奈木弁護士は、自らのブログで、「被害を救済すべき立場の弁護士が被害を生じさせてしまった」として謝罪している。

社会部
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