セクハラで謝罪した弁護士は、企業のハラスメント講習の講師を務め、国会でも意見を述べるなど、広く活躍していた。

“セクハラ撲滅”弁護士がまさかの告白

2年前の国会に、その人物の姿はあった。

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馬奈木厳太郎弁護士(2021年6月・参院内閣委員会):
弁護士の馬奈木と申します

国会に参考人として出席し、意見を述べていた馬奈木厳太郎弁護士(47)。

馬奈木厳太郎弁護士(2021年6月・参院内閣委員会):
まだ間に合います。いったん法案を取り下げませんか?

メディアに露出する機会も多く、演劇や映画界のハラスメント撲滅活動を行ってきた馬奈木弁護士が、自らのセクハラ行為を告白。波紋が広がっている。

被害女性は当時、依頼人だった

馬奈木弁護士が1日、インターネット上に公表したのが「ご報告と謝罪」と題する文書。

馬奈木厳太郎弁護士が公表した文書より:
私はこれまで弁護士としてハラスメント講習の講師を務めてきたほか、(中略)とくに演劇界のハラスメントをなくすための取り組みにかかわってきました。そのような取り組みに関わってきた私自身がある方に対してセクシャルハラスメントを行ってしまいました。しかもその当時その方の依頼を受けており、代理人という立場にありました。

文書によると、馬奈木弁護士がセクハラ行為に及んだという依頼人は、数年来の知人。

弁護の依頼を受ける前からプライベートでも連絡をとり合い、食事などもする間柄だったという。

馬奈木厳太郎弁護士が公表した文書より:
私はそのような関係を続けるうちに、私自身が既婚でありながら、その方に対して好意を抱いてしまいました。(中略)その方も私に対して好意を寄せていると思い込み、身体に触れたり、体の部位に言及したメッセージを送ったり、性的関係を誘うメッセージを送ったりしました。

馬奈木弁護士は既婚者でありながら知人女性に好意を抱き、身体に触れたほか、性的関係を迫るメッセージを送信。

女性が拒んでもなお関係を迫る言動を続けたうえ、依頼を受けていた裁判の対応にまで言及して追い込んでしまったとしている。

セクハラ撲滅に取り組んでいた“正義の弁護士”によるセクハラ告白だった。

福島原発事故“生業訴訟”では弁護団の事務局長

馬奈木厳太郎弁護士(2017年10月):
国の責任がきちんとした形で認められるということを期待しています。

馬奈木弁護士は、福島第1原発事故で避難した住民らが国と東京電力に損害賠償などを求めたいわゆる“生業訴訟”で、弁護団の事務局長を務めたことでも知られている。

馬奈木厳太郎弁護士(2017年10月):
生業訴訟の件で控訴を先ほど福島地方裁判所に対して、仙台高等裁判所宛ての控訴状を提出してきました

去年6月、“国の責任”を巡る集団訴訟の最高裁判決では、原告の住民らを前に判決内容を告げた。

馬奈木厳太郎弁護士(2022年6月):
判決は国の責任を認めないという全く受け入れられない内容の結論でした。これが判決になります

「被害を救済すべき立場の弁護士が…」

裁判を共に戦った馬奈木弁護士のまさかの告白に、“生業訴訟”の原告団長・中島孝さんも驚きを隠せない。

“生業訴訟”福島原発訴訟 中島孝原告団長:
我々を鼓舞してくれていた馬奈木さんがこんな事件を起こしたことはびっくりしたし、残念。衝撃を覚えている。被害者の方に誠実に向き合って本人の痛みの解消、苦しみに誠実に向き合ってほしいと思う。

1月中旬ごろに馬奈木弁護士から「セクハラをした。大変ご迷惑をした」と、弁護団退任の申し出があり、2月24日付で正式に退任したという。

当の馬奈木弁護士が自身のセクハラ行為を自覚したのが去年の末のこと。

被害女性が弁護士会に懲戒処分を求める書類を提出したことで、初めて自覚したという。

馬奈木厳太郎弁護士が公表した文書より:
その懲戒請求書を読み、私は初めてその方が私との関係を全く望んでいなかったこと、(中略)弁護士という私の肩書きや私との年齢差、人間関係への配慮から強く抗議できず、私の言動に苦しんでいたことを知りました。

「被害を救済すべき立場の弁護士が被害を生じさせてしまった」と謝罪した馬奈木弁護士。

被害者の知人女性側は民事訴訟を起こす方針で、3日に会見を開くとしている。

(「イット!」3月2日放送)