僕の上を行く人に遭遇した!

先日会議で産経新聞に行ったらスゴい人に会った。56歳で初めてパパになり、息子さんは今2歳の保育園児、ご本人は59歳で来年定年だというのだ。私事で恐縮だが僕は53歳の時に初めての子どもが産まれた。これまで「高齢育児」を自慢?していたのだが、この夕刊フジ編集長の中本裕巳という人、僕の上を行っている!

56歳で初めてパパになった「夕刊フジ」編集長・中本裕巳さん(59)と息子さん(2)
56歳で初めてパパになった「夕刊フジ」編集長・中本裕巳さん(59)と息子さん(2)
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中本氏が書いた「56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました」(ワニ・プラス)という本をもらったのだが、面白くてその日のうちに一気読みしてしまった(産経の会議中もずっと読んでいてスミマセン)。

奥様が妊娠7か月の時におたふく風邪から心筋炎になり、緊急帝王切開という展開にはハラハラしたが、僕が最も気になったのは、「残された時間がない」「将来のお金がない」「若いころの体力がない」の「3ない子育て」という言葉だった。

「56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました」(ワニ・プラス)
「56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました」(ワニ・プラス)

57歳の役職定年ですでに給料が10万円減り、来年の定年後には再雇用にはなるがさらに10万円以上減るという。冷静に考えるとかなりシリアスな状況だと思うのだが、ご本人は結構のんきで、心配なのは早産だった息子の無事の成長と、夫婦の体力だけだという。「体力があればどこまでも働けますから」という言葉には迫力があった。

何より、言葉や表情に、半ばあきらめていたわが子を授かった嬉しさがあふれていることに、何年か前の自分を思い出し、少しウルッときた。

岸田さんに何をやってほしいか

岸田文雄首相は「異次元の少子化対策」を最重要課題として掲げているが、対策の柱は、

①児童手当など経済的支援の強化
②学童保育、病児保育、産後ケアなどの支援拡充
③働き方改革の推進

の3つだと言われている。

中本家にはこの中で何が必要かと聞いたら、「高校生までは所得に応じた支援を。大学生以降は奨学金の拡充を望みます」という答えが返ってきた。

経済的支援では、児童手当について自民党の茂木敏充幹事長が所得制限撤廃を主張、野党も撤廃に全面賛成だが、FNN産経の最新の世論調査では「撤廃反対」が57%で「賛成」の38%を大きく上回っている。

FNN世論調査(2月18・19日実施)より
FNN世論調査(2月18・19日実施)より

保育園の待機児童は劇的に減っているし、高校の授業料は無償化されている。東京では医療費も高校生までほぼ無償化された。だから共稼ぎ夫婦は経済的支援がなくても子育てはできると思う。だから高校生までは所得に応じた援助でいいのではないか。

一方で大学や専門学校の学費は高いし、一人暮らしの場合は生活費もかかる。奨学金は充実させるべきだし、塾に行きたい子への支援も必要かもしれない。

中本氏は「ウチは中の中の中流家庭」と言っているが、この「高校生までは所得に応じた支援、大学生以降は奨学金の拡充」というのが平均的なパパママの願いではないだろうか。岸田さん、こういう声をちゃんと聞いた方がいいよ。

「日本死ね」とは全く思わない

中本家の出産は奥様が生死をさまよい、赤ちゃんもわずか1300グラムで産まれてきたが、日本の医療が2人の命を救った。医療費は数百万円かかったが、高額療養費制度のおかげで自己負担額はわずかで済んだ。だから中本氏は「日本死ね」とは全く思わないそうだ。

保育園の入所は少し苦労したが無事入れた。だから日本という国は「案外、産みやすく育てやすい国だと思います」という。「むしろ、産みにくい国という刷り込みがあるような気がして、子育てに関して、不安をかきたてる報道は(小紙を含めて)多いですが、子育てって大変だけどこんなにも素晴らしい、といったことがほとんど伝わっていない」ということだった。

確かに「子育ては大変」というネガティブな情報は多く、僕も産まれる前は相当ビビっていたが、実際にやってみると中本氏が言うように「子どもは、なにものにも代えがたい元気をくれる」ものだ。経済的支援も大事だが、岸田首相にはもっと広く大きな視点で子育て政策を考えてもらいたい。

【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。