「WISCは、ディヴィッド・ウェクスラーという心理学者が考えた知能検査のひとつで、10種類の基本検査からできています。その結果をもとに、4つの指標得点と全検査IQ(FSIQ)を算出します(WISC-IVの場合。現在は最新版のWISC-Vがある)。

WISC-IVの4つの指標得点は、わかりやすく説明すると、『言葉の理解力(言語理解・VIC)』『見て判断する力(知覚指標・PRI)』『記憶力(ワーキングメモリ・WMI)』『処理するスピード(処理速度・PSI)』というものです。そのほか、必要であれば性格検査なども行うことがあります」

この全検査IQが85以上であれば概して正常域の知能指数と見なされるが、70~84の場合は、正常域と知的障害の間に位置する「境界知能」に相当する。

子どもには知能検査や心理検査などを行い総合的に診断する(画像:イメージ)
子どもには知能検査や心理検査などを行い総合的に診断する(画像:イメージ)

「またWISCの4つの指標を見ることで、子どもの能力のバラつきを見ることができます。あとは、『見本と同じ絵を描かせる』『絵を見せてどう見えるかを答えさせる』など、必要に応じて心理検査を追加していきます」

こうした検査が行われたあとに、いよいよ本人への詳しい診察を実施。これらの総合的な結果を保護者に伝えるという流れになるのだという。

「クリニックによって多少の違いはあるものの、多くの児童精神科外来ではこうした対応が取られるはずです。心理検査は、その子どもがどんな状態に置かれているかを客観的に知る重要なツールの一つです。

なお、受診の際は、全国に約720名(令和4年12月時点)いるとされる子どもの心についての専門医である『子どものこころ専門医』がいる医療機関を選ばれるとよいかもしれません」

知らないから不安になる。こうした情報を知っておくだけで、児童精神科へのハードルはグッと低くなるはずだ。

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『普通にできない子を医療で助ける マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち5』(扶桑社)宮口幸治著・佐々木昭后作画
『普通にできない子を医療で助ける マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち5』(扶桑社)宮口幸治著・佐々木昭后作画

宮口幸治
立命館大学教授。(一社)日本COG-TR学会代表理事。京都大学工学部を卒業後、建設コンサルタント会社に勤務。その後、神戸大学医学部を卒業し、児童精神科医として精神科病院や医療少年院、女子少年院などに勤務。医学博士、臨床心理士。2016年より現職。著書に2020年度の新書部門ベストセラーとなった『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)などがある。