鹿児島県内の有効求人倍率が増加傾向が続いている。就職希望の人にとっては選択肢が増えている状況だが、企業側にとっては人材獲得の競争が激しくなっていることを意味する。それぞれの視点から見た鹿児島の求人・求職の今を取材した。

今まで求人がなかった県外からも

鹿児島市の鹿児島商業高校。この春就職する3年生が、体育館に集まった後輩の1、2年生に、自分たちが体験した就職活動について語った。

教師:
(就職の面接は)どう緊張した?何が大変だった?

就職内定の3年生:
人生で味わったことのない雰囲気だったので、めちゃくちゃ緊張した

教師:
その中で思うようにしゃべることができた?

就職内定の3年生:
日本語がわからなくなったけれど、頑張って言いました

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鹿児島商業では例年、卒業生の半数が就職する。自身の将来を考える1、2年生たちは、先輩の体験談にじっと耳を傾けていた。

学校の進路指導室を見せてもらうと、鹿児島県内はもとより、九州、静岡、東北など全国各地から届いた求人票のファイルが壁の本棚にびっしりと並んでいる。

2022年度、学校に求人票を送ってきた企業の数は、実に、全国から延べ2,025社と過去最多だ。

進路指導を担当する伊牟田悟教諭は「今まで求人がなかった県外の地域からも求人票をもらったり、驚きを感じる部分もある。現場でいろんな企業と話すと、人手不足がより深刻だと感じた」と就職戦線の現状を語った。

「少子化にともなう人手不足は今後も続く」

2022年、過去最高の1.35倍になった鹿児島県内の有効求人倍率。企業が求めている人数が求職者を上回っている。
ハローワークかごしまの鮫島和貴所長は「ウィズコロナで人流制限もだいぶ緩和されてきた。政府や自治体の経済対策もあり、求人も順調に回復基調にある」と現状を説明する。

高い求人倍率は、企業が積極的に経済活動を展開している1つの指標ともいえるが、別の側面も持ち合わせている。それは、少子化にともなう人手不足だ。

ハローワークの利用者に「求人の数は多いと思うか」と質問してみた。

利用者:
数は結構あると思うが、希望する職種と一致するものがなかなか見つからない

利用者:
調べていくにつれて、結構、求人の数が多く「急募」も目立って見られたので、どこも人が足りないんだと感じる

少子高齢化による人手不足は全国的にも慢性的に続く大きな課題となっている。ハローワークかごしま・鮫島和貴所長は、「政府は異次元の少子化対策をやっているが、これで出生率が改善しても、労働力として参画できるのは20年後ぐらい。人口減少で人手不足は、今後もベースとしてずっと続く」とみている。

慢性的に「人手不足」に悩む福祉施設では

人手不足は地方の視点で見るとより深刻だ。

2023年1月、薩摩半島南部、鹿児島県南九州市で高校生を対象に地元企業の合同説明会が開かれた。南九州市企画課の南部建さんは「どの企業も非常に人材確保に苦労していると聞いている。これ以上進むと、会社も入れ替わりがうまくいかない状態。今後は生徒の取り合いみたいな形になるのかもしれない」と危機感を募らせていた。

南九州市内にある福祉施設「音野舎(のんのしゃ)」で働き、採用を担当する春田由美子さんは、会場で、高校生らに仕事のやりがいを熱く語っていた。

特別養護老人ホーム 音野舎・春田由美子さん:
(入所者に)季節を感じてもらうのが私たちの役目。お正月とかクリスマスとか。職員と一緒にすることで生きていることを感じてほしいし、常に考えながら計画して実施している

春田さんが働く福祉施設「音野舎」では約110人の従業員が働いているが、利用者180人の世話を24時間態勢で行うにはギリギリの人数だという。

食事の時間、利用者に「自分で食べられますか?」と声をかける春田さん。利用者がスプーンで料理を口に運ぶとすかさず「おいしいですか?」と問いかけ、うなずく利用者。

コミュニケーションの大切さを感じるが、介護・福祉の業界は、慢性的に「人手不足」に悩んでいる。それがあらゆる業種に広がりつつある今、春田さんは人材確保がより難しくなっていると実感している。

特養ホーム音野舎・春田由美子さん:
待っていても、まず来ないです、今は。1年中募集をかけても

以前は夏祭りなどのイベントを開催して施設をPRし、それが人材採用につながっていたという。しかし春田さんは「今、コロナ禍で(外部からの)慰問も何も受けることができない。地域とのつながり、交流もないので、発信することが限られている」と切実な現状を語った。

離職率低下のための取り組みが「次の人材確保」に

新たな人材がなかなか集まらない中、春田さんがより力を入れるのは「スタッフをつなぎとめる」努力だ。「態度や表情、言動で感じるものがある。そういうときは見逃さないようにしている」という春田さん。悩み相談などスタッフと積極的にコミュニケーションをとり、職場の改善に努めている。

さまざまな企業が人材難にあえぐ中、ハローワークかごしまの鮫島所長はこの施設のように「離職率低下のための取り組み」が「次の人材確保」につながる可能性を指摘する。

ハローワーク鹿児島・鮫島和貴所長:
自分の保護者や従業員が「うちの会社はいいよ」と言えば信じられること。一番、実感がこもった話だと思う。企業が知恵を絞って、従業員の声を聴きながら発展できるようになれば

働き手から“選ばれる”職場となるには、どうすればいいのか。働き手の減少が進む中、その手段の構築は待ったなしの段階に入っている。

(鹿児島テレビ)

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