日銀の総裁人事案が国会に提示された。これから金融政策を担う植田和男氏に経済界からさまざまな声が寄せられている。

戦後初“学者出身”日銀総裁誕生か

14日午後、日銀総裁候補の植田和男氏は、記者団を前にこう話した。

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日銀総裁候補・植田和男氏:
もし国会で承認得られれば、誠心誠意頑張ります。

14日、政府が国会に示した日銀の人事案。

4月8日に任期満了を迎える黒田総裁の後任として、経済学者の植田氏を提示した。

植田氏が起用されれば、戦後初の学者出身の日銀総裁となる。

経済界からさまざまな声

植田氏の起用に対し、経済界からはさまざまな声が聞かれた。

日本商工会議所 会頭・小林健氏:
実体経済に向き合って運営して欲しい。学者さんだから特にということはない。
持続的な成長は大命題だが、それをどういうアプローチでやっていくか。
一生懸命やってもらいたい。

アサヒグループホールディングス 社長兼CEO・勝木敦志氏:
様々な政策がこれから用意されると思うが、経済の安定、経済の発展のために期待したい。

すかいらーくホールディングス 会長兼社長・谷真氏:
マーケットをしっかり見て、消費者、事業者との対話をしっかり重視して、金融政策を実行していただきたい。

日銀総裁候補・植田和男氏:
国会できちんといろんな質問にお答えしますので。

日銀総裁人事は24日以降、衆参両院で植田氏の所信の聴取と質疑が行われ、政府は衆参両院の同意を得て、正式に任命したい考えだ。

日本独自の金融政策をどうかじ取りをするのかが試される

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

内田嶺衣奈 キャスター:
金融のかじ取りを担う日銀の総裁に植田氏を起用する人事案が国会に提示されましたが、崔さんは、どうご覧になりますか?

エコノミスト・崔真淑さん:
ここまで日銀の総裁人事が注目されているのは、当面は現在の超低金利政策を続ける一方、どこかのタイミングで、超低金利政策を修正する可能性があるため。

実際、マーケットも金利上昇への思惑からか、利鞘が増えるとの期待が先行して銀行や保険業などの株価が上昇している。

また海外メディアの反応を見ると、初の博士号ホルダーで金融とマクロ経済学のプロであり、政治とは適正に距離を置きつつ、日本経済の状態を表すデータと真摯に向き合いながら金融政策をしてくれるのではと期待している。

これまでの黒田総裁のもと日本銀行が行ってきた政策というのは、世界の中央銀行の中でも日本銀行しか行っていない、新しい政策が多かった。これに、新総裁はどう向き合うかのか?試されることになる。

内田嶺衣奈 キャスター:
日本の中央銀行しか行ってこなかった政策とは?

エコノミスト・崔真淑さん:
主に二つあります。
一つは、長期金利を低く抑えこむイールドカーブコントロール政策。通常は長期金利は需要と供給で決まる訳だが、そこに踏み込んだのが日銀。

イギリスの経済雑誌『The Economist』などは、今年の春闘動向で賃上げが確認されたら、こうした政策を止める可能性があるとも報道している。

もう一つは、日銀による株式ETF買い。中央銀行が投資信託というカタチで株価の買い支えに手を貸しているのではないか、など上場企業のガバナンス(企業統治)に副作用が大きいという指摘があるが…。

私自身が京都大学大学院の山田和郎准教授と一緒に2022年に発表した論文では、むしろガバナンスを改善という検証結果。

”異次元の金融緩和策”は、一定の効果はあった

内田嶺衣奈 キャスター:
日銀の緩和策については、「副作用」や「歪み」といった言葉を使って修正を求める声があるようですが、これについては、いかがですか?

エコノミスト・崔真淑さん:
いわゆる「異次元の金融緩和策」について様々な議論があるが、私自身の研究や先行研究を見ると、一定の効果はあったと、評価してもいいのではないか。

これまでの金融政策を思い込みで批判するのではなく、日銀に関する学術論文が蓄積されており、しっかり次の時代に向けて精査することは大切です。

内田嶺衣奈 キャスター:
私たちの暮らしにも関わる“日銀の金融政策”、どのようなかじ取りがなされるのでしょうか。

(「Live News α」2月14日放送分より)