13日で発生から約1週間、死者が3万4000人を超えたトルコ大地震。
被害が甚大になっている原因として、専門家は“パンケーキクラッシュ”と呼ばれる現象が起きていたと指摘します。

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非常に危険度が高いと言われる“パンケーキクラッシュ”。
日本でも起こる可能性はあるのでしょうか?「めざまし8」は専門家に詳しく聞きました。

“パンケーキクラッシュ”とは?日本でも起こる可能性

トルコ大地震の被害を拡大させた“パンケーキクラッシュ”とは?
地震工学が専門の、愛媛大学・森伸一郎特定教授によると、中層以上の建物が1階・2階・3階と何層にもわたり層崩壊を繰り返し、床・天井がパンケーキのように重なって崩壊してしまう現象です。

“パンケーキクラッシュ”とは?
“パンケーキクラッシュ”とは?

この現象が起きると、建物が数秒(一瞬)で崩れてしまうため、避難が難しいといいます。また、上から面で崩落するため、生存空間がなくなり、生命への危険度が高くなってしまいます。
原因の1つは、細い柱であったり、鉄筋の量が少なかったり、コンクリートの強度が不十分だったり、といったことによる「柱の耐震強度不足」です。

森特定教授は、日本でも同様の現象が起きる可能性について、こう指摘します。

愛媛大学 森伸一郎 特定教授:
1981年の「新耐震基準」より前の古い建物であれば、1層全体が崩壊する可能性があります。しかし、それが複数の階で連続する可能性があるかというと、かなり低いだろうと考えられます。

また、震度7の激震に見舞われることや、適切な設計や施工が行われていないことなど、悪い条件が重なると複数層で壊れる可能性も否定できないと話します。

「建築恩赦」制度に疑問の声

トルコでいま、大きな問題になっているのが「建築恩赦」という制度です。
トルコでは1999年に起きたトルコ北西部地震を受け、耐震基準の見直しがおこなわれ、日本と変わらない厳しい基準になりました。

しかし耐震基準を満たさない違法建築でも、行政に書類を提出すれば、そのまま利用を継続して問題なしとする制度。この「建築恩赦」を受けた建物が、被害地域に最大で7万5000あったとみられています。

愛媛大学 森伸一郎 特定教授:
いわゆる既存不適格建築物という問題は、例えばニュージーランド地震の時でもそうですし、他の地震の時でも起きる問題で、これは世界共通の問題だと思います。
過去のものを耐震補強して現在の基準まで上げないといけないというルールは、世界のどこにもありませんので、あくまでも「努力目標」ということですね。
日本の場合は、公共建築物・大規模建築物の場合、とても強い指導が最近なされているというくらいです。

阪神大震災でも… “キラーパルス”の恐怖

森特定教授は、“パンケーキクラッシュ”の他にも、被害を大きくさせた要因として“キラーパルス”という現象が起きていたと指摘します。

倒壊したトルコの街の様子
倒壊したトルコの街の様子

日本でも、阪神淡路大震災で観測された“キラーパルス”。構造物に最もダメージを与える周期をもつ地震動です。

今回の地震も、トルコに最も多い7階~15階建ての建物に対し、大きな破壊力がある1~2秒の周期の揺れが、複数回含まれる地震動が発生。被害を拡大させました。

愛媛大学 森伸一郎 特定教授:
やはり地震動、地震によってかかってくる荷重がとても大きかったということです。
その揺れが“キラーパルス”と呼ばれるのは、建物にとって非常に不都合な周期が、卓越するような地震動が、設計で考えられていたよりも2倍3倍という大きな地震荷重が、作用したと考えられます。

日本でも起こり得る巨大地震 何が大切になる?

南海トラフ地震や首都直下地震などが危惧されている日本。
今後、どのようなことが大切になってくるのでしょうか?

愛媛大学 森伸一郎 特定教授:
実際に耐震診断は、毎年多くなされています。ただその流れに乗り切れていない建築物があるということです。ですから、既存不適格で耐震性が不十分な場合、方策としては3つ。
1つは建て替える、もう2つ目は耐震補強する、3つ目は廃棄する。
それぞれどれにも様々な問題がありまして、解決はそれほどたやすくないというのが現状だと思います。

(めざまし8「わかるまで解説」より2月13日放送)