政府が雨宮正佳(まさよし)日銀副総裁に、次期総裁への就任を打診したと一部で報道される中、市場では円安が進んだ。
“黒田路線”引き継ぐ?副総裁の名前浮上…円安進行で株価も反応

日銀の黒田総裁と共に大規模緩和策に携わってきた、雨宮副総裁に政府が次期総裁就任を打診したと一部で報道される中、6日の東京外国為替市場の円相場は、前の週末より3円以上値下がりし、一時1ドル=132円台半ばまで円安が進んだ。

市場関係者は「日銀の緩和策が当面続くとの観測が強まった」としている。

東京株式市場では円安進行を受け、輸出関連銘柄を中心に買いが広がり、日経平均株価の上げ幅は一時300円を超えた。
総裁が誰であれ…金融緩和の“ゆがみ”修正は段階的に行われる
「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい、経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。
内田嶺衣奈 キャスター:
日銀の次期総裁をめぐって円安が進行していますが、どうご覧になりますか?

経済アナリスト 馬渕磨理子さん:
きょう6日に為替が円安に進んだ背景には、名前が出てきた雨宮氏が、黒田総裁の路線を引き継ぐスタンスの方だと見られているからです。
雨宮氏2018年以降、副総裁として、黒田総裁の進める“異次元緩和”をサポートしてきました。つまり、もし雨宮氏が総裁となるならば、金融緩和策が基本的に続きそうだ、であるならば「円安だ」、というロジックが働いたと思われます。
なぜ、そこまで人事に注目が集まるのか。それは、次の総裁が誰になるかが、日本の金融政策に大きな影響を及ぼすからです。
実際に“ポスト黒田”として、雨宮氏の他に名前が出ている方の中には、金融緩和路線を大幅に変更する可能性がある方の名前も挙がっています。
内田嶺衣奈 キャスター:
金融緩和の見直しに踏み切るために、必要な条件はどのようなものがあるのでしょうか?
経済アナリスト 馬渕磨理子さん:
金融緩和の目的とは、物価の上昇を上回るペースで、持続的に賃上げが行われ、日本経済を苦しめてきたデフレからの脱却です。
「ルイス転換点」という考え方があります。労働供給量、つまり働き手が底を付くと「賃金が上昇」する現象です。決してプラスの循環ではありませんが、日本は今、人手不足が深刻化しているため、賃金が上がる転換点にさしかかっている可能性が指摘されています。
一方の物価については、2013年に政府と日銀は「2%の物価目標」を掲げた政策協定を取り決めましたが、この目標を「柔軟化するべきだ」との声も出ています。

内田嶺衣奈 キャスター:
そして今後について、馬渕さんはどうご覧になりますか?
経済アナリスト 馬渕磨理子さん:
実は次の総裁に誰がなっても、どこかのタイミングで金融緩和による“ゆがみ”の修正は段階的に行うとされています。
例えば、日銀が10年債を大量に買い入れて金利を上がらないようにしています。これはイールドカーブコントロールの1つなのですが、短期の金利よりも、長期金利の方が利回りが低いといったゆがみが指摘されています。
こういった“ゆがみの修整”を行う場合、金利が少しずつ上昇することに繋がるので、為替は「円高」へと向かうとされています。日銀の人事とその後の政策を引き続き注視していく必要があります。
(「Live News α」2月6日放送分より)