日本でも話題になっている、AI=人工知能システムの「Chat(チャット)GPT」。2022年11月にOpenAI社(本社:アメリカ・カリフォルニア州)が公開したAIで、ユーザー数は2カ月で1億人に達し、インスタグラムやTikTokよりも速いスピードで広がっているという。
文章作成から問題解決まで
試しに「ネコを主人公にした子供向けのお話を500字ぐらいで作って」と筆者が入力してみた。すると、数十秒後、「ミケ」という特別な能力を持ったネコが魔女によって呪われた村を救い、さらなる冒険を続ける……というストーリーが画面に現れた。
正直なところ、「すごい」と思うのと同時に「恐ろしい」と感じてしまった。
この記事の画像(7枚)「ChatGPT」については、欧米メディアも連日報じている。急拡大する背景には、その能力の高さがある。とにかく処理が速くて、文章が自然だ。そしてその“能力”は、物語の執筆だけに留まらない。
「妻へのプレゼント」について何がいいか?とたずねると、数十秒後に「ジュエリー、バッグ、シューズ」などが列挙された。最後は「彼女のことを考えて選ぶ」ことが最も重要だと“アドバイス”してくれた。聞けば何でも教えてくれそうだ。
しかし注意も必要だ。回答がインターネット上にある大量のデータに基づいているがゆえ、必ずしも正確だとは限らない。元となる情報のアップデートも現時点では2021年までで、2022年に起きた出来事については何も学習していない。
教育現場では賛否両論
ChatGPTの能力は日常生活の域をはるかに超える。一部の研究者がChatGPTと合同で実験したところ、アメリカの医師免許試験にも合格した。これを学生が放っておくはずはなく、名門・スタンフォード大学で学生にアンケートを実施したところ、17%がChatGPTを課題などのために使用したと回答した。
OpenAIの設立者に名を連ねるイーロン・マスク氏も1月、ツイッターに「新しい世界だ。宿題よ、さらばだ!」と投稿した。
不正や盗用なども懸念されるため、欧米の学校では使用を禁止する動きがある一方で、教育者の中には「学生たちはすでにAIとは切り離せない世界で育ってきている」として、禁止せずに活用すべきだとする声も多い。
著作権、政治的スタンス…議論沸騰
もともとインターネット上にある情報をベースに回答が作成されているため、この技術が「著作権ロンダリング」だと指摘する声もある。
ChatGPTが作った回答に対し、思いついた要素を加えるよう依頼することで「オリジナル度」を高められるが、著作権をめぐる議論は今後も展開されそうだ。
また、嘘もあふれているネット上の情報がどう精査されているのか、回答に政治的な偏りがあるのか、アメリカが大統領選を2024年に控えるなか、注目される。
日本語力はまだ弱い
試しに、冒頭と同じ文面で「ネコ物語」の執筆を再度ChatGPTに依頼すると、今度は「トム」というネコが、捨てられた子ネコの新しい飼い主を探してあげ、感謝される物語が2分ほどでできあがった。
しかし、書き出しは「一つの街に、一匹のキャット、トムがいました」。さきほどとは違って、英語の直訳風で日本語が変だ。また、内容はポジティブな物語だが、正直、面白いとはいえない。いつになったら日本語がもう少し上手になるのだろうか。
「OpenAIはいまChatGPTを含む言語モデルの性能の向上に取り組んでいる」と、ChatGPTが答えた。
(FNNニューヨーク支局 弓削いく子、中川真理子)