日本人の20代以下の約10%が悩んでいるというアトピー性皮膚炎。1月10日、その“かゆみ”の原因の一つと、それを防ぐ物質を突き止めたと佐賀大学医学部の教授らが発表した。
今後は治療薬の開発も期待されている。

原因の一つは“ペリオスチン”

1月10日の会見で、アトピー性皮膚炎に効く薬の開発に意欲を見せたのが、佐賀大学医学部の出原賢治教授。

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佐賀大学医学部 出原賢治教授:
「ペリオスチン」という分子が、アトピー性皮膚炎の病態を形成するのに重要な役割を果たしているということを、約10年前に明らかにし発表しています。ただ当時は、このペリオスチンがかゆみにどのような作用をするのかは明らかにしていない。また、その作用を止めるような物質も見つけていなかった。それを今回明らかにしたというのが、この10年での研究での進歩

この研究は出原教授のほか、富山大学医学部の教授などが取り組んだもので、アトピー性皮膚炎の強いかゆみの原因の一つについて、タンパク質の“ペリオスチン”だと突き止めたという。

佐賀大学医学部 出原賢治教授:
“ペリオスチン”というのは、全ての人間が体内で普段からつくっているタンパク質です。骨とか歯の形成とかに重要な役割を果たしているタンパク質。アトピー性皮膚炎の患者さんでは、皮疹のところで非常に過剰につくられる

このペリオスチンは、どのようにしてかゆみを引き起こすのか。

佐賀大学医学部 出原賢治教授:
過剰につくられたペリオスチンは「かゆみ」を伝える神経の表面にある“インテグリン”というタンパク質に結合する。そうすると、刺激が神経に伝わっていき、脳に届けられて「かゆい」と認識します

長年の研究を支えたものは…

出原教授たちは10年前に、このペリオスチンがアトピー性皮膚炎と密接な関わりがあることを発見していたが、当時は“かゆみ”との関係はわかっておらず、長い年月をかけて研究を進めてきた。

その研究を支えたのは、ある思いだった。

佐賀大学医学部 出原賢治教授:
アトピー性皮膚炎の研究自体は、以前から行っている私の長い研究テーマではありますが、息子がアトピー性皮膚炎に苦しんでいて、そこにも、もしかしたら少しは役に立つかもしれないということは、私が研究を行ううえでのモチベーションのひとつになっていたかとは思います

出原教授たちは、元々製薬会社が開発していたCP4715という化合物が、ペリオスチンとインテグリンの結合を防ぐことを発見。この物質を、アトピー性皮膚炎を発症させたマウスに投与したところ、かゆみが改善することがわかった。

佐賀大学医学部 出原賢治教授:
CP4715を人間に応用し、アトピー性皮膚炎のかゆみに対する薬として承認していただくようにするということが、われわれの責務だと思っています

子ども・若者の約10%がアトピー性皮膚炎

現在、日本人の子どもや20代の若者の約10%がアトピー性皮膚炎にかかっていて、その割合は増加傾向にあると言われている。

7歳の息子がアトピー性皮膚炎に苦しんでいるという母親は、その様子をこう話す。

息子がアトピー性皮膚炎の母親:
やっぱり1番はかゆがる。体がかゆくてずっとかきむしっているので、それはちょっとかわいそう。かきむしりすぎて血が出たりとか、傷になったり

息子がアトピー性皮膚炎の母親:
かゆみを止める薬だったり、症状が軽くなるようなものが新しく出るんだったら、すごく期待しています

患者が持つ悩みについて、アトピー性皮膚炎に詳しい杉田和成医師は…。

佐賀大学医学部皮膚科 杉田和成教授:
まずはやはり“かゆみ”や皮膚に症状が出ているということでお困りの方が多いです。それによって見た目の問題だとか、あるいは(かゆみで)夜眠れないとか、いわゆるQOL(生活の質)を低下してしまう、そういう問題をはらんでいると思うんですね

治療薬の開発をめざして

杉田医師も、出原教授たちの研究に期待を寄せている。

佐賀大学医学部皮膚科 杉田和成教授:
出原教授の(研究している)化合物「CP4715」が、実際の臨床の現場で使用できるようになる(可能性がある)のは、画期的なことだと思います。非常に期待しております

出原教授は、「薬の開発には長い年月が必要で、アトピー性皮膚炎のかゆみの原因は一つではない」としながらも、今回の研究結果を、かゆみに対する治療薬の開発に生かしたいと話す。

佐賀大学医学部 出原賢治教授:
CP4715という化合物の特徴ということ、それから、患者さんにとって使いやすいお薬でありたいということ、そうしたことから、このCP4715を、できれば塗り薬として患者さんに提供できるようにしたいなと考えております

(サガテレビ)

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