福井県の豪雪地帯の高齢者施設に、介護スタッフとして15人のインド人女性が働いている。2022年から勤務がスタートし、初めて迎えた冬。彼女たちの目に初雪はどのようにうつったのか?

雪に興奮!大はしゃぎ

2022年12月14日、福井と石川の県境にある勝山市北谷町で今シーズン初の除雪車が出動した。この雪を誰よりも待っていたのは、同じ北谷町にある特別養護老人ホーム「さくら荘」で働くインド人スタッフたちだ。

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ダナさん:
すっごーい!私は南インドですから、見たことがありませんの!

雪に大はしゃぎするダナさん
雪に大はしゃぎするダナさん

雪をつかもうと片手を上げて歩くのは、南インド出身のダナさんだ。南インドは年間を通して平均気温30度前後、最低気温が20度を下回ることがないという。雪を見るのは生まれて初めてだ。

そこへやってきたシニさんも「最初の雪、楽しみです!びっくり」と終始、興奮した様子だ。「インドの家族に真っ先に見せたい」と夢中になって写真を撮った。

ポーズを決めるサティヤさん
ポーズを決めるサティヤさん

サティヤさんは、しとしとと降る雪の中でポーズを決めて記念撮影。3人とも子どものように大はしゃぎだ。

複数の語学話すインド人は優秀

さくら荘では介護士不足を解消するため、2022年6月から看護師の資格を持つインド人女性15人を特定技能労働者として雇用している。

彼女たちを送り出したのは、人材育成会社「NAVIS(ナビス)」。長年、日本語研修センターを運営してきたナビスは4年前からインド国籍の人材を教育している。

NAVISインド研修部マネージャー・三浦あゆみさん:
研修は6カ月で日本語能力試験のN5~N3(日常会話、読み書きがある程度可能)レベルまでを研修している。介護研修も行っていて、介護現場で使用する日本語の学習や、ロールプレイ(実際の現場を想定した会話のやりとり)で声掛けの練習をしている

元々、インド人は英語など複数の言語を話すことができ、語学は堪能だという。優秀な人材を求めていた「さくら荘」とマッチして、インド人女性15人が勝山市で働くことになった。

カレーの辛さや味は地域によって違う

1日3食、すべて手作りのカレーを食べるというインド人スタッフたち。自宅アパートでカレーをつくってくれた。「メニューは鶏肉のカレーとご飯です。一緒につくって食べましょう!」と力を込める。インドでは住む地域によってカレーの味も辛さも全く異なる。この日は、南インドのウマさんの地元のカレーをつくった。

インドにいたときは、料理をしないウマさん
インドにいたときは、料理をしないウマさん

ウマさん:
このビデオ、私のお母さん見たらうれしくなると思う。私はインドで全然(料理を)作りません(笑)

母の味を再現しようと日々、カレーづくりにも精進しているウマさん。2時間ほどじっくり煮込んで完成した。仕事から帰ったダナさんも加わり、午後3時半、遅めのランチとなった。スプーンやフォークは使わず、右手でご飯とカレーを混ぜて口に運ぶ。「母のようなカレーをつくってくれた。本当においしい」と、故郷を思い出し自然と笑顔がこぼれる

一方、つくったウマさんは「私だけ辛い…」。実は辛いのが苦手だった。

日本にいながら、いつも遠く離れた家族を思い生活している。彼女たちの多くは、給料の一部をインドにいる家族に仕送りしている。

ウマさん:
インドの病院で働いた時は、給料は少なかった。足りなかった

日本でたくさんの“初”を体験

人材育成会社では、彼女たちが日本で働く背景を次のように話す。

NAVISインド・鴛渕貴子社長:
彼女らはミドルクラス以下の方たちが多い。20代、30代であっても一家を支える立場。海外で働いて家族を養いたいというのが一番の目的。日本のDNAを身に付けたインドの人たちが世界中で活躍してくれると、日本にとっても素晴らしいことかなと考えている

年が明け、福井市内の神社に初詣にやってきた。彼女たちの宗教はヒンズー教やキリスト教で、日本とは異なる信仰をしている。ただ神の存在は1つだという思いで、日本式に手を合わせて願い事をした。

日本の文化、おみくじも体験した。引いたのは「スエキチ」で、少し残念そう。おみくじは境内の一部に結び付け、日本式の作法で初詣を終えた。

家族を支えるためにインドを離れ、忙しく働く彼女たち。ただ年齢はまだ20代から30代と若い。仕事の疲れをまったく感じさせず、雪に初詣にと日本の冬を満喫していた。

(福井テレビ)

福井テレビ
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