日本酒の海外展開を後押しする、新たな取り組みがスタートした。

スマホをかざして“未開封”か確認

日本酒が入った瓶に、貼られたシール。

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スマートフォンをかざすと…画面に「未開封」「商品情報へ」といった文字が。

この酒が本物で、未開封であることが確認できるのだ。

このシールには、ICタグが組み込まれている。

日本酒の瓶を開封すると、ICタグにつながった電線がシールと一緒に切れることで、“開封された”という情報が反映され、偽造防止になる。

日本酒は、海外市場で競争力をつけるためには、ワインやウイスキーのように“熟成期間”によって価値が上がる“蒸留酒”を増やす必要がある。しかし一方で、長期の資金調達が課題となっている。

そこで、「SBIトレーサビリティ」と「三菱UFJ信託銀行」は、偽造を防ぐ「ブロックチェーン」技術を使い、日本酒の権利を個人が所有できるシステム作りを開始した。

これによって酒造会社は、熟成段階から権利を販売することができるようになる。

蒸留酒の世界で活用進む「NFT」日本酒トークンで“本物の日本”証明へ

「Live News α」では、一橋ビジネススクール准教授の鈴木智子(さとこ)さんに話を聞いた。

内田嶺衣奈 キャスター:
マーケティングや消費者行動を研究されている鈴木さんの目には、日本酒トークン、どのように映っていますか?

一橋ビジネススクール 准教授・鈴木智子さん:
ワインやウイスキーなどの熟成酒の世界では、10年、30年といった熟成期間の証明や、所有権を確認する手段として、NFT(Non Fungible Token)の活用が2020年頃から始まっています。

例えば、人気の高いNFTの中には、2021年にドンペリニヨンがレディー・ガガとコラボレーションして発売した、100本の限定シャンパンがあります。

関係者は「伝統」と「デジタル」のかけ算から生まれる未来に期待を寄せており、今回の日本酒トークンもまた、そうです。

内田嶺衣奈 キャスター:
日本酒の販売でNFTは、どのような役割を果たしていくのでしょうか?

一橋ビジネススクール 准教授・鈴木智子さん:
日本酒の市場を活性化するには、その魅力をきちんと伝える必要があります。

具体的には、生産者と消費者をつなぐ“情報”と“物”の流通を増やし、魅力に触れる機会を増やすことが求められます。この課題の解決に対するひとつの答えが、NFTなのかもしれません。

実は、ネット通販などで売られている価格の高い日本酒の中には、偽物がまざっているリスクも少なくないのです。NFTは本物であることを証明する手段としての活用が期待されています。

また、日本酒は、麹菌や酵母菌の力によって育つ“生き物”であり、おいしさを保つためには、適切な温度管理が欠かせません。所有者を確認できるNFTでは、これまで温度管理に気を配れる人が所有していたのかなども、確認することが出来ます。

内田嶺衣奈 キャスター:
今後の海外マーケットへの期待については、いかがですか?

一橋ビジネススクール 准教授・鈴木智子さん:
日本酒の国内市場はなだらかに縮小が進む一方、世界的な日本食ブームも手伝って、海外への輸出はこの12年連続で伸びています。

海外で売る場合は、その日本酒を育んだ風土や職人たちの苦労など、物語を伝えることが極めて大切になります。

これから日本酒トークンは“本当の日本”を味わうことが出来る証として、海外で認められることを期待したいです。

内田嶺衣奈 キャスター:
偽物の流通を防ぐことは、購入者が安心感を得られるとともに、生産者を守る事にもつながります。本物のおいしさを多くの人に知ってもらえるといいですね。

(「Live News α」1月31日放送分より)

   鈴木さんにうかがいました。ありがとうございました.