日本でも多くの人が口にしている、コーヒー。
世界有数のコーヒー生産国・グアテマラのある農場では今、“水も電気も燃料も使わない”方法でコーヒー豆が精製されている。

この記事の画像(28枚)

このコーヒーを使った日本初となる常設店舗を訪れ、飲んでおいしく、地球にも優しいコーヒーの裏側を取材した。

環境・生産者にも優しい「自転車脱穀機」グアテマラから広がる新コーヒー

東京・日本橋にあるコーヒーショップ「GOOD COFFEE FARMS Cafe & Bar」。

精製方法の違う、3種類のコーヒーが飲み比べできるコーヒーセット(「3種の飲み比べコーヒーセット」990円)など、甘くて果実味のある味わいから、酸味の強い味わいまで、様々な種類のコーヒーを楽しむことができる。

実はこのコーヒー、環境負荷に配慮した特殊な精製方法で作られている。

GOOD COFFEE FARMS 事業開発責任者・空賀啓輔さん:
こちらのコーヒー豆、実はグアテマラで作っているんですけど、このコーヒー豆を脱穀するために、コーヒーの赤い実を自転車脱穀機に入れて、皮を剥いています。

「GOOD COFFEE FARMS」は、世界有数のコーヒー生産国・グアテマラ出身のカルロスさんが立ち上げたもの。日本で働いた経験を生かし、2017年にコーヒービジネスをスタートした。

日本式の農業用ハウスや、ユニホームでの朝礼をグアテマラのコーヒー農園に取り入れ、味や品質管理の向上に力を入れてきた。

今回が日本で初めての常設店舗となるが、コーヒー作りにおいて、あるコンセプトを掲げている。

GOOD COFFEE FARMS 事業開発責任者・空賀啓輔さん:
“三方良し”というのを掲げていて。消費者にとっておいしいのはもちろん、生産者にとっても負担が少なくて、そして環境にも優しいコーヒーを作っていきたいと思っています。

GOOD COFFEE FARMS 事業開発責任者・空賀啓輔さん:
自転車脱穀機をアイコンとして使っていて、それを使うことで、水を全く使わない、もちろん電気も燃料も使わない。環境負荷というのを大きく下げられている。

自転車脱穀機では、人力だけで、実の中からコーヒー豆の元となる種子を選別し、取り出すことが出来るという。

グアテマラでは数年前まで、大型の精製設備を使って種子を取り出すのが一般的だったが、その際に大量の水や電気、燃料が使われ、CO2排出水源汚染が大きな問題になった。

また精製設備が高価なため、小規模農家は栽培から収穫までしか行えず、設備が整った会社にコーヒーの実を低価格で買い取られてしまう問題もあった。

そこでカルロスさんが自転車脱穀機を開発し、自社のコーヒー農園で展開。

小規模農家でも低コストで導入することができ、細かい精製作業まで行えるようになったため、生産性の高いコーヒーを次々と作り出すことが可能となったのだ。

今後については…

GOOD COFFEE FARMS 事業開発責任者・空賀啓輔さん:
このグッドなコーヒーを飲んで楽しむ、そういうコミュニティーと言いますか、輪をどんどん広げていきたいと思う。生産側でも消費側でもコンセプトに共感してくれて、色々とサポートしてくださっている方が多い。

GOOD COFFEE FARMS 事業開発責任者・空賀啓輔さん:
他の中南米の国々に進出する計画もありますし、消費側においても日本だけではなくて、ヨーロッパであったりとか他のアジアの国々にも、グッドなコーヒーの考え方を広げていって、私たちのコーヒーで世界を変えようと。

“機械を人力に”でSDGsに貢献 労働時間など労働環境の情報も重要

「Live News α」では、日本総合研究所・シニアスペシャリストの村上芽(めぐむ)さんに話を聞いた。

内田嶺衣奈 キャスター:
今回の試み、SDGsに詳しい村上さんの目にはどのように映っていますか?

日本総合研究所 シニアスペシャリスト・村上芽さん:
化石燃料で動かす脱穀機を避けて自転車のペダルを漕いで脱穀できるようになると、エネルギー消費量を減らしてCO2排出量の削減になります。

これは、SDGsの目標7にある「エネルギーの効率的な利用」や、目標13「気候変動に具体的な対策を」に貢献することができます。

省エネをとうとう人力にしてしまうという例は珍しく、面白い試みでもある一方で、この取り組みをコーヒーの生産国で広げていく際には、いくつかクリアすべき課題があるように思います。

内田嶺衣奈 キャスター:
今回の試みを他の国で広げていく際に、どのような課題があるのでしょうか?

日本総合研究所 シニアスペシャリスト・村上芽さん:
通常では、機械の方がその日に必要な量の豆を短時間で脱穀できるはずです。これを人力にすることによって、今度は長時間労働を生んでしまわないか。そして適切な労働時間で十分な収入を得られるのか、そういった懸念があります。

また脱穀以外の工程、例えばコーヒー豆を乾燥させる際、太陽熱やそのほかの再生可能エネルギーを使っているかどうかといった情報や、働く環境に関する情報も出てくると、より強く「サステナブルなコーヒー」と呼ぶことができるはずです。

内田嶺衣奈 キャスター:
確かに、私たちが口にする飲み物や食べ物についてどうやってつくられたものなのか、その情報が公開されていると安心感がありますね。

日本総合研究所 シニアスペシャリスト・村上芽さん:
お店で「サステナブルなコーヒー」を選ぶ際に、目安となる様々な「認証」の仕組みがあります。
例えば、アメリカの研究機関である「スミソニアン渡り鳥センター」が作った「バードフレンドリーコーヒー」では、土壌や水の使い方、鳥などのまわりの生き物への影響など、チェックすべきポイントがたくさん細かく決まっています。

こうした認証制度をクリアした商品であれば、栽培環境だけではなく、農家で働く人の労働環境の安全性や、研修・教育の有無、医療へのアクセスなども考慮していることが多く、安心して商品を手にとることが出来ます。

内田嶺衣奈 キャスター:
つくられた背景をしっかり見つめ、商品を選ぶ。それも私たちに出来るSDGsなアクションだと思います。

(「Live News α」1月30日放送分より)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(28枚)