銭湯に山などの背景画を描く「銭湯絵師」。日本に数人とも言われる。

北海道・旭川市の温浴施設で女性絵師が制作に挑んだのが大雪山系の山々。見たらきっと元気になる、そんな画が誕生した。

JR旭川駅から歩いて15分。市民の憩いの場となっていた温浴施設・スパ&サウナ オスパーではリニューアルに向けた準備が続いていた。

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開業から35年。初めての大がかりな改装だ。

SPA&SAUNA オスパー 辻 可奈子さん:
重油の値上がりや資材の高騰で、銭湯や大きな温浴施設も無くなっていく中で、さみしいという思いでした。当店も苦境に立たされることがあったんですけど、みんなで相談して頑張っていこうという思いで今回に至りました

この日、東京からやってきた田中みずきさん、40歳。日本では数人しかいない、銭湯絵師だ。

今回、田中さんが描くのは富士山ではなく、旭川市民のシンボル・大雪の山々だ。

銭湯ペンキ絵師 田中 みずきさん:
普段は8割~9割富士山を描いています。皆さんはどんなイメージを旭岳に持っているのかなと

お風呂に入った人があしたも頑張ろうと思えるように。優しくて力強い山を描く。

巨大なキャンバスをローラーで豪快に染めていく女性。田中みずきさん。

女湯と男湯の壁に、それぞれ1日がかりで描き上げる。この日は北海道の最高峰 旭岳を描く。

地域の人にとっては、普段から見ている山。そのイメージに合うのか。試行錯誤が続く。

銭湯ペンキ絵師 田中 みずきさん:
皆さんはどんなイメージを旭岳に持っているのかとか、この感じで良かったのかとか、描きながら迷ったりとかが結構多かったので、難しかったです

田中さんへの依頼を決めた温浴施設・スパ&サウナ オスパーの辻さんは。

SPA&SAUNA オスパー 辻 可奈子さん:
コロナ禍になってお客様が少なくなった時に、まさに今こそ何か月か休んでリニューアルするべきじゃないかという思いに至って、思い切ってやることにした。旭岳は旭川市民のシンボル的な存在の山なので、それを見ながらゆっくりお風呂に入ってもらえればという思い

温浴施設は燃料高騰やコロナ禍という逆風にさらされてきた。それを乗り越えるための今回のリニューアル。

大浴場はタイルを張り替えて全面改装。新設されたサウナではロウリュが楽しめる。

一方、今まで通っていたお客さんのためにあえて残したところも。

SPA&SAUNA オスパー 沢田 稔秀さん:
このサウナを気に入っているお客様が一定数いる。昭和ノスタルジックのイメージを残したままのサウナにしたいと思っていました

一連のリニューアルの目玉となるのが、女性銭湯絵師・田中さんの絵だ。

作業開始から1時間30分…全体像が浮かび上がってきた。

銭湯ペンキ絵師 田中 みずきさん:
ここから細かい山の光を入れていく作業になります

開始から7時間、火口に立ち上る噴煙を描き、旭岳の完成だ。

山を映すのは「姿見の池」だ。

SPA&SAUNA オスパー 辻 可奈子さん:
迫力あって、ちょっと優しい感じがするような、女性のお風呂場にピッタリ

銭湯ペンキ絵師 田中 みずきさん:
山が重なったような形なので、そこが上手く表現できるのか悩みながら描いていた。広くて気持ちいいなという感じを味わってもらえたらなと思います

オープン前に地元の人々を招いて内覧会が開かれた。

男湯の壁に描かれるのは、大雪山連峰だ。

参加者が見守るなか、最後の一筆が加えられた。

銭湯ペンキ絵師 田中 みずきさん:
完成です

参加者:
きれいだね。素晴らしい

参加者:
最高でしょ。オープンしたらすぐ来るから

銭湯ペンキ絵師 田中 みずきさん:
馴染みのある山が日常の中にあるのはすごく素敵なことだと思っていて、その日の、日の光だったり気分によって見え方が変わって来ると思うので、自分の気持ちを照らし合わせながら絵を楽しんでもらえたらすごくありがたいと思います

疲れた日はこの画に会いに来てほしい。

雨の日も、雪の日も、大雪の山があなたを待っている。

北海道文化放送
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