二酸化炭素削減に向けて鍵を握る技術「CCS」の、2023年度の実用化が目指されている。

CO2削減の切り札「CCS」 経産省・企業が事業化に向け動き加速

「CCS」は、発電所や化学工場などから排出された二酸化炭素を回収し、地下深くにためる技術で、地球温暖化の原因の一つである二酸化炭素を削減する切り札として、研究開発が進められている。

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経済産業省は、26日に開いた有識者や民間企業で構成する検討会で、CCSの実用化に向けた工程表をまとめ、2023年度に600万~1200万tの二酸化炭素をためる事業を開始する目標を示した。

2050年の脱炭素社会の実現を目指す政府は、補助金などを通じて支援する方針。

CCSを巡っては、伊藤忠商事やENEOSなど3つの企業連合が、26日、事業化に向けた検討に入ることを発表している。

人間社会の持続のため排出“ゼロ”は難しい…出てしまうCO2をどうするか

「Live News α」では、早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さんに話を聞いた。

小澤陽子 キャスター:
CO2を地下にしまい込むという試み、長内さんは、どうご覧になりますか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
CO2排出削減は待った無しの取り組みではありますが、SDGsでも大切にされているサステイナビリティ、つまり持続可能性もしっかり考えることが必要です。

石油由来の燃料を使うとなんらかの形でCO2が出ます。この排出を極小にすることが大切ですが、無理矢理ゼロにすることは、人間社会の持続可能性を損なってしまうということもあるかもしれません。

小澤陽子 キャスター:
CO2の排出を無理矢理ゼロにすることと、人間社会の持続可能性との両立は難しい。これは、どういうことなんでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
例えば原油を精製すると、ガソリンや軽油のほかに、プラスチック原料の「ナフサ」などが生成されるんですね。

容器やストローなど、様々なプラスチック製品をプラスチック以外に置き換えていくことが進められていますが、例えば医療機器など、人間の生活にどうしても必要なものにプラスチックを使わなければいけない場面というのは、これからも一定程度残っていくわけです。

ですから全ての製品を、一律に廃止するのは難しい。どんな製品をどんな原料から作っていくのか、これを現実的に見てくことも重要だと思います。

小澤陽子 キャスター:
CO2の排出量を減らしていくことも大切ですが、持続可能性な取り組みになっているのかというのも、冷静に考えることも必要なのかもしれませんね。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
そうなんです。先ほど、石油からはガソリンや軽油など、様々なエネルギーがとれるというお話をしましたが、例えばディーゼル規制の厳しい日本では、軽油をあまり使わない。ただ原油を精製する過程で、どうしても軽油が生まれる。国内消費に回すだけでは余ってしまうので、それを日本は今、韓国などに輸出しています。

将来的に石油の需要が減っていき、その値段が下がった時に、結局ナフサなどほかのものを作るために、ガソリンや軽油をほかの国に輸出してしまう。そうすると結局、ほかでCO2が出てしまうという懸念もあるわけです。

ですからCO2の削減も重要ですが、出てしまうCO2をどうにかする技術も重要なのではないでしょうか。今回の技術は非常に重要だと思います。

小澤陽子 キャスター:
地下貯留は新しい技術のため、コスト面での課題もあるのかもしれませんが、いま地球のために出来る現実的な選択肢なのかもしれませんね。

(「Live News α」1月26日放送分より)