1月26日から「電子処方箋」の運用がスタートした。
病院で診察後に受け取り、薬局に出していた“あの紙”が電子化されるというのだが、何がどうかわるのか?

そもそも処方箋とは、医師が患者の病気にあわせた薬の種類や使い方などを記した書類のこと。
電子化することで、患者の同意があれば、複数の医療機関・薬局をまたがる過去の薬情報を医師・薬剤師と共有することができる。そうすることで、同じ成分の薬をもらうことや良くない薬の飲み合わせを防ぐことができるとしている。

電子処方箋の利用方法は?

これまで薬が必要なときは、病院の会計で処方箋を受け取っていたが、電子処方箋はちょっと事前の手続きが変わってくる。

まず間違えやすいのは、従来の健康保険証でも電子処方箋は使えるということ。
電子処方箋に対応した病院で健康保険証やマイナンバーカードを窓口で提示すると、「電子処方箋」か「紙の処方箋」かを選択することができる。

(出典:厚生労働省)
(出典:厚生労働省)
この記事の画像(8枚)

ここからはマイナンバーカードで電子処方箋を使う手順を説明する。
顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードを置いて、顔認証するか暗証番号を入力すると、今まで飲んできた薬の情報を医師に提供するか、確認する画面が表示される。

(出典:厚生労働省)
(出典:厚生労働省)

ここで同意を選ぶと、医師は病院や薬局をまたがる過去3年分の薬情報を参照できるようになり、それを元にしたよりよい医療サービスを受けることができるようになるという。最後に診察後などに発行される処方箋の種類(紙or電子)を選択して診察を受ける。

(出典:厚生労働省)
(出典:厚生労働省)

それが終わったら会計。先程、電子処方箋を選んだ場合は「処方内容(控え)」という書類が、紙の処方箋を選んだ場合は従来どおりの紙の処方箋が渡される。

(出典:厚生労働省)
(出典:厚生労働省)

薬局での受付も、本人確認・お薬情報を閲覧までは医療機関と同じ。電子処方箋の場合は顔認証付きカードリーダーで提出する処方箋を選択し、紙の場合は処方箋を提出する。薬の受け取りや会計などは今までと変わらないそうだ。

電子処方箋は、複数にまたがる医療機関や薬局のお薬情報を一元的にオンラインで管理。
患者自身も自分のお薬情報などをマイナポータル経由で見ることができるようになるという。

(出典:厚生労働省)
(出典:厚生労働省)

マイナンバーカードでも健康保険証でも中央システムに情報を送っています

同意があれば、過去の薬情報を医療機関・薬局で共有できて、薬の重複や良くない飲み合わせを防ぐことができるのは患者にとってメリットだが、課題もある。
現在厚生労働省が公開している「電子処方せん対応の医療機関・薬局リスト」に載っているのは、27日時点で167件。東京都では6件の医療機関・薬局だけに留まっている。

電子処方箋の対応病院はこれから増えるのか?今後の課題についても厚生労働省の担当者に聞いた。

――マイナンバーカードと従来の健康保険証を使うのは何が違う?

電子処方箋は、病院から中央システムに情報を送り、薬局でも調剤が終わった結果を登録することになっています。実は、マイナンバーカードでも健康保険証でもデータが中央にストックされていく事は変わりません。これらの情報を中央に貯めることで、お薬が重複しているときや組み合わせが悪い時に、アラートを出す仕組みになっているんです。

例えば摂取量に限界がある同じ痛み止めを腰痛と歯の治療でもらってしまう場合、あとのお医者さんで重複投薬のアラートが出るようになっています。このときマイナンバーカードで同意をいただけた方の場合は、「あの病院で腰痛を診たときの薬と被っている」という風にお知らせができます。

一方、同意をいただけてない場合は過去の情報を見ることできないので、「重複していませんか?」というお知らせだけ出るという仕組みになっています。そこで「似たような薬をもらってませんか?」と患者さんから教えてもらうってことはできるかと思いますが、できれば過去の情報も見せていただいた上で、「薬が被っているから」とか「飲み合わせが悪いから、ちょっとお薬変えますね」などということをお伝えできた方がよいと思います。

そこで、マイナンバーカードで同意いただけた方は「よい医療を提供できます」とご案内しています。


――処方内容の「控え」は何のために発行している?

電子処方箋の控えは「引き換え番号」という固有の番号をお伝えするためにお渡しています。
この引き換え番号と被保険者番号を薬局さんにお伝えいただくと、それをもとに電子処方箋を受け取り調剤をすることになります。

マイナンバーカードでは、発行された処方箋が顔認証端末で全部確認できて調剤してもらうことができます。今は健康保検証を使っている方が多いので、「控え」を出すことにしています。


――電子処方箋に対応している医院・薬局はこれから増える?

開始当日(26日)に電子処方箋に対応した医療機関・薬局は154件です。
これは、最初に利用申請をして電子処方箋サービスの接続ができる状態になり、システムを改修して接続テストをやって、最後に運用開始日を入力して、運用を開始するというプロセスになっています。
その運用開始日の入力が済んでいるのが154件で、利用申請は3万348件です。
今後は、毎週金曜日に更新して順次増やしていきたいと思っています。
 

(出典:厚生労働省)
(出典:厚生労働省)

電子処方箋をすでに導入した地域で見えた問題点とは?

電子処方箋の本格開始の前に、厚労省は去年10月末から1年間の予定で、モデル事業として山形県酒田地域、福島県須賀川地域、千葉県旭地域、広島県安佐地域で先行して導入を行った。そこではシステムや運用面の検証を行うとしているが、今までにどんなことがわかったのだろうか。

――去年10月から行っている実証実験ではどんな課題とメリットが分かった?

課題はまず、システム改修がなかなか進まなかったということです。
お医者さんが処方箋を発行する電子カルテシステムと薬局のシステム、その両方の改修が必要で電子処方箋システムと繋がらないといけないんですが、これがなかなか進みませんでした。

もう1つの課題としては、周知が足りてなかったことです。
やはり、マイナンバーカードがないと電子処方箋が発行できないと思われていたり、そもそも電子処方箋を知らないということもありました。
もちろん住民説明会などは行ったんですが、まだまだ全然周知が足りてないなと思いました。

メリットについては、モデル事業だけではないのですが、患者さんの重複投薬が見られるのは、やはり良いと思いました。医療機関薬局さんの方から、色々なご説明がしやすいなどのメリットがあるというお声を色々いただきました。

今後は、患者さんのメリットをもっと打ち出していかないといけないという風に思っています。
例えば、アプリなどを使って保険者番号と引き換え番号を薬局にお伝えしておくと、電子処方箋を見て調剤を始めてもらうことができるんです。そういう事を、もうちょっとやらないといけないと考えています。

(画像はイメージ)
(画像はイメージ)

厚労省のサイトでは、電子化のセキュリティー面について「医療機関や薬局が送受信する電子処方せんのやり取りは安全なネットワークを介して行われ、電子処方せんのデータは適切に管理される為、安心してご利用いただけます。」としている。

まだ始まったばかりという印象だが、厚労省の担当者が話すように、患者にとってのメリットを
もっと打ち出すことで広がっていくのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。