性的少数者「LGBTQ+」。なかでも、幼いころから自分の性別に違和を感じる子どもたちがいる。男女の性別にとらわれず互いの違いを認め合おうと、学校で理解を深める取り組みが始まっている。

北海道内の小学校に通う樹(じゅり)さん(仮名)。体と心の性別に違和があるトランスジェンダーだ。

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男の子として過ごしていた4歳のある日、母親の優子さん(仮名)にカミングアウトした。

樹さんの母親・優子さん :
年中さんの時に自転車に乗っていて「なんで自分は女の子なのにトイレは立ってしないといけないの?」、「自分は女の子なのに」って単刀直入に言われたから「あ、女の子なんだ」って思ったかな。「そうなんだ!」みたいな

「息子」として育ててきた、わが子の突然の告白。それは「驚き」よりも「納得」だったと振り返りる。

樹さんの母親・優子さん :
いくらミニカーとか、戦隊もののおもちゃを買っても楽しそうじゃない。それより、おままごとセットのほうがずっと遊んでいた。「男らしさ」という言葉を使ったらよくないのかもしれないけれど、それがなかった、この子には。だからそこで、「ああ、確かに」と

 

樹さんのように心と体の性に違和を感じるトランスジェンダーや、同じ性別の人を好きになるゲイやレズビアン。

自分を男性とも女性とも認識していないクエスチョニングなどの性的少数者はLGBTQ+などと呼ばれ、日本では10人に1人ともいわれている。

当時通っていた幼稚園は「女の子」として通うことを受け入れ、樹さんも自分から友達に伝えた。

樹さん:
「自分は女の子だよ」って言った

一方で周囲の大人からは心ない声も。

樹さんの母親・優子さん :
「4歳が言ったところでわかっていない」、「親が本気にして話を大きくして」とも言われた

優子さんは樹さんの言葉を受け止め、まっすぐに向き合うことを選んだ。

樹さんの母親・優子さん :
いまはそういう世の中じゃない。変わってきている。ただでさえ苦しい思いを本人はしている。それを親や周りの大人が増やしちゃいけないと思った

樹さんは当時4歳。小学校に入学するまで2年あったが、学校に相談することにした。懸念があったからだ。

樹さんの母親・優子さん :
トイレの問題。プールの授業があります、どうしますか。もし、どうしても男女で分けなきゃいけなくなったときは「女の子」。そういうことを2年かけて話し合った

トイレは多目的トイレを使うこと、プール授業の際は女子が使う部屋で最後に着替えることなどを確認した。

樹さんの母親・優子さん :
「そのままで来ていいよ」って学校は言ってくれた。「なにも隠さなくていい。そのまま、いたい君のままで来てね」って

相談していなければ「男の子」として入学するために、長く伸ばしていた髪を切るつもりだった樹さん。

小学2年生のいま、チャームポイントの長い髪はそのまま。ありのままの自分で通っている。

SOGI-Mamii's代表・高橋愛紀さん:
体の性、好きになる性、心の性。どのように自分の性別を認識していますか?

札幌市の小学校で、多様性を学ぶ取り組みが始まっている。

SOGI-Mamii's代表・高橋愛紀 :
LGBTっていう言葉を知っている人? LGBTは障害ではないんです。病気でもないんです。違いを受け入れるということを、してみてほしいなと思います

2022年に札幌市の新琴似緑小学校で行われた、多様性について学ぶ授業。

希望する保護者も参加した。

6年生の保護者 :
早くはないし、男女の性別を区切らず人間としてかかわることは大事なので、すごくいいと思った

6年生の保護者 :
いろんな人がいることを感じて認め合う。そのきっかけになればいい

文部科学省は2022年12月、小学校から高校までの教師に向けた、指導のガイドブックを12年ぶりに改訂した。

新たに「性的マイノリティに関する課題と対応」の項目を追加。配慮や支援の具体的な事例が盛り込まれている。

札幌市の研究推進校のひとつに指定されている元町中学校では、全校生徒が互いの違いを認め合う大切さを学んだ。

SOGI-Mamii's代表・高橋愛紀さん:
男らしさ、女らしさをどんなふうに考えていますか? 自分と違うから普通じゃないと思ったりしていませんか

講演後に生徒が書いた感想だ。

「自分自身がセクシュアルマイノリティの当事者です。日常的に疑問を感じることがよくあるので、ほっとする講話でした」

「自分の普通を他人に押し付けてはいけないと思った」

札幌市立元町中学校・美田学秀校長:
ためらいは、ちょっとはありました。学校でこういう話をすることは、知らない子にとって新しいことをわかってもらう意味では意義があったと思う。子どもなので1回聞いただけじゃすぐできない。中学3年間で少しでも成長してくれればという思いがある

小学2年生のトランスジェンダー、樹さんと母親の優子さん。2人には心強い存在がいる。

カミングアウトのあとも変わらずにそばにいる、幼稚園からの幼なじみとママ友だ。

ママ友:
樹さんは会ったときから何も変わらない。本人のまま

ママ友:
サポートじゃないけど、「守れることは守りたいから言って」みたいな感じ

樹さんの母親・優子さん :
この2人だけは本当に変わらずにずっと接してくれるから、幼稚園に行けていたし、今もなにかあると連絡を取り合ったりしている

子どもたちも、関係は同じ。

ともだち:
仲良くなった。仲良くなって、3人でずっとあそんでた。男の子でも女の子でも。だから、どっちでも仲良くできる

樹さん:
優しい大親友だと思っていて、いまこうやって遊んだりして本当に仲のいい友だちだと思っている

樹さんには知っていてほしいことがある。

樹さん:
トランスジェンダーの人がまわりにはたくさんいるよっていうこと。とくべつじゃない

樹さん:
あ、13番。大吉だ!

樹さんの母親・優子さん :
え、ほんとだ!

新しい年の始まり。願うことは。

樹さんの母親・優子さん :
LGBTQの子どもたちを助けてあげたい。苦しんでいたり、悲しんでいたり、言えないと思っている子がいるなら、ひとりじゃないことをわかってほしい

樹さん:
「仲間だね」って言ってあげたい

違いを認め合い、ありのままで過ごせるように。環境づくりが広がっている。

北海道文化放送
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