ファーストリテイリングは、従業員の年収を最大4割引き上げると発表した。
大胆な引き上げの狙い、そしてその影響とは。

“新人店長”は10万円アップ!報酬水準低い日本…優秀な人材獲得が狙い

ユニクロなどを運営するファーストリテイリングは11日、2023年3月から国内の従業員約8400人の年収を、数%~40%程度引き上げると発表した。

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新入社員の初任給は4万5000円増の30万円に、入社1年目~2年目で就任することが多い新人店長は、10万円増の39万円に引き上げる。

海外店舗の従業員に比べて、日本国内の従業員の給与は低く、今回の賃金アップにより、従業員の意欲を高め、優秀な人材確保につなげる狙い。

日本は海外に比べ報酬水準が低くとどまっており、今回の給与大幅アップが、国際的な人材獲得を狙う日本企業の賃上げに影響する可能性もある。

若い層に手厚い賃上げ “世界水準”の人材評価で競争力と成長力強化へ

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい、経済アナリストの馬渕磨理子(まぶち・まりこ)さんに話を聞いた。

内田嶺衣奈 キャスター:
年収が最大で4割アップするファーストリテイリングの試み、どうご覧になりますか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
日本を代表する企業の前向きな決断に、日本全体が「賃上げ」に向かう明るい兆しを感じます。
今回の発表は単純な賃上げというよりは、給与体系の変更といった方が実態を表していて、ここまでやれば優秀な人材が集まるというラインを超えているように思います。

日本の賃上げというのは、すべての従業員のベースを一律に上げることが多いんですが、今回の発表は「みんな一緒」ということではなく、特に「若い層」に手厚いものになっています。

この背景には、グローバル企業ゆえの危機感があります。例えば、非製造業のマネージャー・課長クラスの賃金は、日本の場合、アメリカの半分以下なんです。ですので、これまでの給与体系を維持していると、優秀な人材は日本企業を選ばなくなる懸念があります。

そこで人材の評価軸のベースを「世界水準」とすることで、競争力と成長力を強化する狙いがあると思います。

内田嶺衣奈 キャスター:
これほどの大幅な賃上げが出来るのは、なぜなんでしょうか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
ファーストリテイリングの売上げは約2兆3000億円、そして社内に抱える現金は1兆3000億円を超えています。
円安の恩恵と海外での販売が好調だったことで、2023年8月期の見通しは増収増益で、売上高・営業利益ともに過去最高になると思われます。

今回の取り組みにより、年間の人件費は15%増と言われています。単純計算すると約470億円の負担増となりますが、これまでの十分な経営体力に加えてさらなる生産性の向上などにより、人件費の増加分の吸収は十分に可能と判断したと思われます。

内田嶺衣奈 キャスター:
働く人にもっと報いようと、給料を上げる企業が後に続くといいですね。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
おっしゃる通りで、物価高が続き賃上げへの期待が高まる中で、2023年の春闘で連合は5%程度の賃上げを求めていますが、今回のファーストリテイリングの判断は、日本の賃金のあり方にプラスの影響となりそうです。

これは日本企業がグローバルで戦えるように、他の企業にも「ついて来て欲しい」というファーストリテイリングの柳井会長からのメッセージなのかもしれません。

内田嶺衣奈 キャスター:
世界で戦える企業を増やしていくことは、今後日本が成長していくために欠かせない条件だと思います。世界の水準でしっかりと評価されることは、1人ひとりの働くモチベーションの向上にも大きくつながっていくように思います。

(「Live News α」2023年1月11日放送分より)