”アドベンチャートラベル”という言葉を聞いたことがあるだろうか？
これは、自然の中でアクティビティや異文化体験などを感じてもらう旅行形態のこと。
市場規模は世界で70兆円。
9月、北海道で開かれる「アドベンチャートラベル・ワールドサミット」という商談会に世界が注目している。
「北海道観光」の未来は？
8月上旬、鈴木直道北海道知事がガイドの案内で訪れたのは北海道東部・弟子屈町の硫黄山周辺。
北海道の持つ観光のポテンシャルの高さをガイドの丁寧な説明で改めて実感していた。
「（ガイドの説明を受けて）自然の良さを体験してもらって植物の背景やその土地の文化や食に関心を持ってもらえればと思います」（鈴木知事）
「アドベンチャートラベル・ワールドサミット」は9月、北海道内で開かれる体験型の観光ツアーの国際商談会だ。
アドベンチャートラベルは、欧米などでは定着しているアクティビティー、自然、異文化体験の3要素のうち、2つ以上を含む旅行形態。
一人当たりの観光の消費額は一般的な旅行の約2倍となる、40万円と言われている。
サミットには国内外の観光業界の関係者60ヵ国800人ほどの参加が見込まれていて、北海道観光の可能性を広げ、世界に発信するチャンスでもある。
釣りガイド歴20年以上の児島秀明さん。
現在、洞爺湖近郊で、釣りを中心としたアドベンチャートラベルのガイドをしている。
「これはかわいらしいですけれどニジマスです。子どもだとパーマークという黒い点々がお腹の中にある。ということはこの子を産んだ親たちがいる。時には60センチを超えるびっくりするようなサイズもいる」（児島 秀明さん）
「（Q：こんなに浅い川にいるのか？）川ですから、起伏に富んでいる。大きな魚が隠れる場所がたくさんある。そういったものを狙うのが魚釣りという遊び」（児島さん）
埼玉県から参加した福田さんも、児島さんのガイドで、釣りの魅力に気づき、北海道に頻繁に来るようになった一人だ。
「北海道は魚も大きさも種類も違うのでそこがすごく楽しい。趣味なので高いといえば高いが安といえば安い。この経験ができるのは北海道しかない」（埼玉県から参加した福田 剛さん）
ガイドは釣りの場所を案内するだけではない。
釣りのコツやルアーの貸し出し、野生動物の接近に備えた対策など、ツアー参加者がより釣りを深く楽しめるサービスの提供を心がけている。
「海外の方々はいろいろな国でガイドを使ったアクティビティツアーを経験している方が多い。これはもう金額ではないと思う。それに見合ったものよりも大きなサービスが提供できればと思う」（児島さん）
1台数十万円の高級自転車で「サイクリング」
北海道観光の価値を押し上げる可能性を秘めたアドベンチャートラベル。
実は、都市圏でも体験できるものがあった。
北海道・北広島市のFビレッジにアドベンチャートラベルの拠点がある。
アメリカの自転車ブランド「スペシャライズド」。
レンタルやツアーが中心の体験型の店舗だ。
販売価格が1台数十万円の高級自転車が、2時間3300円からレンタルできるのだ。
店の周辺には札幌の白石区まで約20ｋｍ伸びるサイクリングロードや、未舗装の道路、山林など多種多様なコースがある。
しかし、適したコースは北広島に限ったことではない。
「北海道って自転車がすごく適しているフィールドだと思っていて、東京だとサイクリングロードに出るまでに都内を走ったり、暑くて疲れてしまう。ここは環境的にもすごく気候的にもいいですし、すぐこういったベースとなる施設からサイクリングロードもあるし、オフロードを走るコースもある」（スペシャライズド 谷口 幸生さん）
北海道の”当たり前”が感動の体験に繋がる可能性がある。
さらに多くの人が経験したことのある自転車というツールにもチャンスがある。
「皆さんの家にはママチャリがあって、それがイコール自転車というイメージが強いが、スポーツバイクを試したらこんなに遠くに行けて気持ちいいんだと、アクティビティとしての自転車の楽しみ方を見つけていただけると思う」（谷口さん）
いよいよ9月に控えたアドベンチャートラベルワールドサミット。
北海道にとっても、様々な「気づき」をもたらすきっかけになる可能性もある。
「この商談会が上手くいくことによって、これから欧米のAT（アドベンチャートラベル）のトラベラーがたくさん皆さんの地元にやってくる。自分たちがいいと思っていた部分はもちろん、そうではないところが貴重なものなんだ、文化的な面白さがあるっていうことで来てくれる。彼らが来ることによって、私たちに新しい気づきもあると思うし、自信にもつながる」（道経済部観光局 後藤 知佳子 AT担当局長）
世界の旅行業者などが北海道のアクティビティを体験する商談会「アドベンチャートラベルワールドサミット」。
北海道の「強み」を再認識する大事なきっかけになりそうだ。
