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5日午後2時過ぎ、「民間の力を引き出す為の規制改革、スタートアップ育成にも全力で取り組む」と述べたのは、岸田首相だ。
政府が成長戦略の柱の1つとして掲げるなど、いまや日本の経済成長の原動力として欠かせない存在となっている、スタートアップ企業

そんなスタートアップ企業の育成策とは?
「Live News α」では、各業界の企業トップに話を聞いた。

数よりも“質” 立ち上げの次の段階へ

政府は2022年を、「スタートアップ創出元年」と位置づけていた。
そこで「Live News α」は、企業のトップが集う経済3団体の新年祝賀会で、こんな質問。

小澤陽子キャスターが企業トップに直撃
小澤陽子キャスターが企業トップに直撃

「2023年はスタートアップにとって、どのような元年になるのか?」企業のトップに話を聞いた。

若手社員が現場で経験を積み、社内でスタートアップを次々と生み出す伊藤忠商事。岡藤正広会長の回答は「スタートアップ“選別”元年」だ。

伊藤忠商事 岡藤正広 会長:
たくさんのスタートアップ企業が毎年出ているが、いかんせん寿命が短い。これからは、内容をよく見た上で、淘汰される企業が出てくるんじゃないか。

小澤陽子 キャスター:
政府が、「育成5か年計画」を打ち出しました。27年度までにスタートアップ10万社を創出したいということだが、これに関してはどのように思われますか?

伊藤忠商事 岡藤正広 会長:
やはり数ではないと思う。量より質というか、生き残る企業をつくらないと。どんどん立ち上げるけど“後はもう知らない”と。次が大事なんですよね。立ち上げてからどのようにして、内容を進化させていくか。

SDGsに重点を置いたスタートアップ展開を行う大和証券。中田誠司社長の回答は、「スタートアップ“跳ねる”元年」。

大和証券グループ本社 中田誠司 社長:
2023年は「うさぎ年」ですが、相場の格言で「卯年は跳ねる」と呼ばれている。
やはり企業というのは、社会課題を解決することによって継続性・永続性があるわけだが、そういう意味では、全ての企業が社会課題・SDGsに向き合っていく、それは既存の企業我々も含めて、そういう姿勢が必要だと思う。

今年の干支にちなんだキーワードを挙げた企業のトップは他にもいる。
「スタートアップ“躍進”元年」と回答したのは、三井不動産の菰田正信社長だ。

三井不動産 菰田正信 社長:
我々も2015年からスタートアップ振興をずいぶんとやっている。それで、創出の段階はほぼ終わっている。ホップ・ステップ・ジャンプでいうと、ステップからジャンプの段階に入ってきていると思っている。
我々やることとしては、資金・場・コミュニティの提供、これをやっていく必要があると思っています。
あるいは大企業にいても、自分で会社を辞めて企業を起こそうという人たちをリスペクトする文化とか、そういう国民の意識、そういうものを醸成していく必要がある。

“当たり前”の存在目指すスタートアップ最前線企業「一回で諦めない」

一方、スタートアップ経営の最前線を走る企業は、2023年をどう位置づけるのか。

食品宅配サービスを展開する「オイシックス・ラ・大地」の高島宏平社長は、「スタートアップ“ふつう化”元年」と回答。

オイシックス・ラ・大地 高島宏平 社長:
スタートアップというキャリアが、普通の働く人たちにとって、当たり前の選択肢に
少し前までフリーランスは特別だったと思いますが、かなりフリーランスが普通になってきたように、スタートアップが特にキャリアとして、普通になる1年になるといいなと思っています。

就職や転職の際に、スタートアップが当たり前の存在に…。それは、業界全体の共通の課題のようだ。

ミドリムシを使ったバイオ燃料事業などを手がける「ユーグレナ」の出雲充社長も、次のように話す。

ユーグレナ 出雲充 社長:
「スタートアップ“教育”元年」にしないといけない。
YouTuberになりたい子どもはたくさんいるが、まだまだ“スタートアップって何それ”の状態だから、スタートアップ教育を推進していく事によって、5年で10倍、10万社がようやく達成できるんじゃないか。

小澤陽子 キャスター:
企業の創業者として、どんなものを大切にしてきましたか。これからのスタートアップに求めるものは何でしょうか?

ユーグレナ 出雲充 社長:
良い(質問)ですね。「一回で諦めない」。
スタートアップ、ベンチャーは、私もそうだが毎日毎日、大失敗ばかり。でも、そんなことにめげていたら、今までできなかったこと、新しいこと、イノベーションを生み出すなんてことはできない。
だから1回2回3回、10回、100回失敗してもへこたれない。必ず成功するまで努力し続ける、頑張り続けるというのが、ベンチャー、スタートアップに一番大切だと思う。

番組スタジオでは、小澤キャスターが、取材で感じたことをこう語った。

小澤陽子 キャスター:
印象的だったのは、政府が掲げる「5年でスタートアップ10万社」という目標に対して、その数も大事だけれど、やはり量よりも質という声でした。
スタートアップ企業の5年後の生存率は15%という厳しい現実の中、その“質”を高めるためには、失敗しても再びチャレンジするスピリッツと、それをサポートする環境が求められているように感じました。

(「Live News α」2023年1月5日放送分より)