「売り上げNo.1」や「お客さま満足度第1位」に「シェアNo.1」など、インターネットや街中にあふれる“No.1広告”。だが、その中には衝撃の実態が…。
大手調査会社やデータ分析の専門家は、「作られたランキング」だと指摘する。“No.1広告”の裏側を取材すると、驚きのカラクリが見えてきた。
ビジネスのために“作られる”ランキング
人は商品を選ぶ時、どのような売り文句にひかれるのか?

モバイルバッテリーを例に、「販売台数20万台突破」「2年連続顧客満足度No.1」「最新モデル」「人気芸人オススメ」の4つの選択肢を用意し、100人にどれを選ぶか聞いた。
【人気芸人オススメ】
芸人が責任持って勧めてくれそうな説得力がありますよね。
【最新モデル】
最近出たやつだから気になる。
【2年連続顧客満足度No.1】
「No.1」にひかれて。一番良いのかなって思いました。

調べた結果、一番多かったのが「2年連続顧客満足度No.1」。10代から60代の100人のうち54人と、半分以上の人が選んだ。
その理由について、データ分析の専門家は…。

データサイエンティスト 松本健太郎さん:
人が基本的に評価をすることが好き、あるいは評価されたものの中でいいものを選びたい、一番いいものを選びたいということですね。

一方で、こうした売り文句には注意が必要だと警鐘を鳴らす。

データサイエンティスト 松本健太郎さん:
「ランキングは作れる」ということだと思っています。何かしらビジネスに使うためにランキングが使われているんだと、認識をしていただくのが一番いいかなと思います。
販売会社は「イメージの調査」と説明
ビジネスのために作られるランキングとは、いったいどういうことなのか?

そこで取材班は、「女性に人気第1位」「子供に優しい第1位」「気軽に使える第1位」など、インターネット通販で10冠をうたうマウスウォッシュの販売会社に、どのような調査をしたランキングなのか問い合わせてみることに。すると…。

マウスウォッシュの販売会社:
イメージ調査についてなんですけれども、こちら言葉の通りになりますが、イメージ調査になりますので、実際に使用して比較した調査ではございません。

取材班:
使った人に製品のイメージを聞いたというものではない?

マウスウォッシュの販売会社:
イメージ調査というタイトルの通り、イメージの調査という形になっております。
取材班:
これを見ると、使った人に聞いたと思うのが普通では。

マウスウォッシュの販売会社:
貴重なご意見があったと、しっかりと記録に残させていただきます。
なんと、実際にマウスウォッシュを使った人に聞いたものではなく、一般の人を調査対象に、あくまでもイメージだけを聞いたというのだ。

よく見ると、ホームページには小さな文字で「WEBアンケートによるイメージ調査」と書かれている。これに対して大手調査会社は…。

インテージ 村上智人執行役員:
これは、No.1を取らせるために編み出された手法だと思っていただいた方がいいと思います。知らないブランドも含めて調査をして、1000人回答しました。じゃあイメージ満足度1位です、という言い方になってしまうと、これ本当に1位なんですか?というか。使ってない人に聞くことに意味があるのかと。

No.1が約束された、いわば“出来レース”の調査だという。その手法はというと…。
1位になるまでアンケート 行政処分下ることも
アンケートの結果、対象の商品が1位でなかった時には、上位の商品を別の商品に入れ替えて1位になるまでアンケートを繰り返す。

また、アンケートが行われている期間でも、ある時点で対象の商品が1位になったら、その瞬間にアンケートをストップするなどの手法があるという。

インテージ 村上智人執行役員:
当社にも(調査会社から)メール来ましたから、営業の。「No.1取らせます」って。

取材班:
調査会社に来たんですか?
インテージ 村上智人執行役員:
社長宛のメールに来ていました。営業しているんだなって。

調べてみると、「No.1を取らせる」とうたう調査会社がいくつも見つかった。

「No.1調査」を行う調査会社に取材を申し込んだが、「担当者の都合がつかない」と断られてしまった。さらに後日、HPを再び調べたところ、「No.1調査」のページはすでに削除されていた。

消費者を惑わす、この「No.1広告」を巡っては、行政処分が下されるケースも。

埼玉県では2020年、家庭教師の派遣サービス業者が同様の悪質な広告を出していた。

埼玉県庁 消費生活課 荏原智美主任:
「お客さまの満足度」と「第一志望校合格の実績の満足度」ということで、実際に利用した方が満足しているかのように見受けられる表示をしているんですが、実際にはただのイメージ調査にしかすぎなかった。消費者の誤認を生む可能性があるので、景品表示法に違反するということで。

県は業者に対し、誤った表示を出していたことを利用者に周知し、今後同様の表示を行わないよう要請した。
なぜ処分が難しい?ポイントは「効果効能の表示」
しかし、このように処分されることは珍しいことだと、消費者問題に詳しい弁護士は話す。

消費者問題に詳しい 木村智博弁護士:
景品表示法上問題になりそうなのは、「飲むだけで痩せる」とか、商品の効果効能をダイレクトに表示するようなものが一応、念頭に置かれているんですが。その効果効能が“著しく優良であると示す行為”が(景品表示法で)不当表示になるので、No.1表示で著しく優良性を示せるものというのが、かなり限られると思う。

確かに、多くのNo.1広告では「何かの効果がある」と、直接的には触れていないような言葉が並んでいる。

消費者問題に詳しい 木村智博弁護士:
たとえNo.1表示自体の調査に怪しい点があったとしても、なかなか景品表示法上、不当表示として措置命令などをしていくことが難しい。

私たちの心につけ込む「No.1広告」。鵜呑みにせず、よく見て判断することが重要だ。
(「イット!」12月21日放送)