佐賀・多久市の伝統野菜「女山大根(おんなやまだいこん)」が、収穫の時期を迎えている。「夕張メロン」なども名を連ねる「地理的表示GI」に、県内の農林水産物では初めて登録され、生産者は、地域の伝統野菜を絶やさぬよう決意を新たにしている。

この記事の画像(16枚)

幡船の里運営協議会 蒲原政信会長:
女山大根は今年6月29日、農林水産省の地理的表示GIに登録・保護されました

12月6日、多久市で開かれた試食会。これは、「地理的表示GI」登録を祝って行われたものだ。

キムチ製造メーカー代表:
とてもおいしかった。特にプリンがおいしかった

県佐城農業振興センター 職員:
とてもきれいな紫色で、それが料理の中でパッと映えていいなと思いました

女山大根は普通のダイコンとこんなに違う!

多久市西多久町で栽培されている女山大根。2022年も、11月下旬から収穫が始まった。

生産者 舩山真由美さん:
特徴は見ての通り、色が赤いということ

女山大根の栽培を始めて18年の舩山真由美さんは、年間約1,000本を出荷している。通常の青首大根と女山大根の違いは、なんといってもその大きさ。

生産者 舩山真由美さん:
わたしの足より大きい。普通のダイコンと比べて、こんなに違う

重さは4kgから5kgほど。大きいものでは長さが80cm、重さは10kgを超えるものも。
通常のダイコンと比べ、倍近く時間をかけて栽培するためか糖度が高く、ダイコン特有の辛みをほとんど感じないのも特徴の一つ。

江戸時代から旧女山村、現在の多久市西多久町で栽培されている女山大根。しかし昭和初期に入り、ミカン栽培へ転換が進んだことから、一時はほとんど見かけなくなったという。
その後、地域にわずかに残っていた種子から復活させ、現在は、約20戸の農家が栽培している。

伝統野菜を守るため「GI登録」

生産者 舩山真由美さん:
これがGIの登録証。佐賀県第1号という重みもある

女山大根は地元・西多久町の直売所で販売されていて、登録証もしっかり飾られていた。

佐賀市から:
ここだけしかないから、地元のダイコンということでPRしていただければ、もっと売れるんじゃないかなと思う

「地理的表示(GI)保護制度」は、伝統ある農林水産物の名称を、地域の知的財産として国が保護する仕組み。一定の基準を満たしたものだけがその名称を名乗ることができ、県内では女山大根が初めての登録。

生産者 舩山真由美さん:
(販売するときは)このシールを必ず貼るように。このGIマークが入ってないとダメ

GI登録産品は、「夕張メロン」や「いぶりがっこ」などが知られていて、現在、120の産品が登録されている。類似品を同様の名称で販売したり、GIマークを無許可で使用したり、違反する行為は、罰則などの対象となる。

ーーー登録されたメリットは?

生産者 舩山真由美さん:
この名前を保護できたというのが一番。ほかでは絶対使えないので。これで女山大根という伝統野菜を守れたという、それが一番です

一方で、生産するうえでのルールもできた。

生産者 舩山真由美さん:
2kg以上あるものを“女山大根”という決まりを作った。だから、今までみたいに全部が全部、女山大根としては販売できない

県の担当者は、多くの人に知ってもらうためにも食べる機会やPRの場を設け、一緒に盛り上げていきたいと話す。

女山大根まつり
女山大根まつり

県 流通・貿易課 御厨直樹さん:
ほかにも伝統野菜が県内にあり、いろいろ佐賀の良いものはあるので、「酒」と「女山大根」に続いて、また次のものが生産者さんと一緒に盛り上げるきっかけになれば

新メニュー開発!商品化を目指す

多久市の公民館に集まった、生産者や地元の女性たち。普段から女山大根を調理しているという一流シェフに教わりながら新メニューを作っていた。

御宿 竹林亭 今木和人料理長:
一番は、女山大根の特色である色。紫色を生かした使い方と、煮崩れしにくい特色を生かして。糖度が高いのでデザートにも結構向いている

出来上がったのは、白みそと豆乳のホワイトソースをかけた「ふろふき大根」、すりおろしたダイコンに豆乳を入れて仕上げた「呉豆腐」、酒かすに煮詰めたダイコンのコンポートをのせた「プリン」。

写真左から:新ふろふき大根、女山ぷりん はつ恋、女山大根 呉豆腐
写真左から:新ふろふき大根、女山ぷりん はつ恋、女山大根 呉豆腐

どれも女山大根の特徴を生かしたメニューばかりで、今後、商品化につなげたいという話も…。試食会での出席者の反応は上々だった。

横尾俊彦 多久市長:
おいしいですね~。うまいですよ

県佐城農業振興センター 職員:
デザートにダイコンが使えるというのも新鮮だったし、色もとてもきれいで、おいしかった

生産者 舩山真由美さん:
わたしたちが15、16年以上、一生懸命頑張ってきたのが、やっと成果が認められたというのが一番うれしい。やっぱりお客さんに喜んでいただけるのが一番で、“おいしかった”と言われるのが一番うれしい

今回の登録で、生産者たちはあらためて、伝統野菜・女山大根を守り続ける決意を新たにした。

(サガテレビ)

サガテレビ
サガテレビ

佐賀の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。