全国で相次ぐバス事故。もし事故に巻き込まれたらどう対処すればいいのか。利用者が増える年末年始を前に、西鉄が実施した訓練に密着した。横転したバス車内からの脱出…そのポイントは?
需要高まるも…相次ぐバス事故に不安の声
金曜日の夜、福岡市の西鉄天神高速バスターミナルは、多くの利用客で混雑を見せる。
九州各地や東京、名古屋行きなど28路線、約1,000便が運行し、1日平均1万5,000人ほどが利用するこのバスターミナルは、行動制限がないことやインバウンドの回復などを受けて、年末年始の予約は好調だという。

西日本鉄道 高速営業課・松本ふらのさん:
年末年始は、去年に比べるとプラス40%の予約をいただいているので、このまま推移すれば、もうちょっと多いご利用をいただけると思っています

なぜバスを選ぶのか、利用者に理由を聞くと―。
鹿児島への帰省客:
安いから。新幹線の半分以下くらい
朝倉市からの通勤客:
乗り換えなしで1本なので。高速道路からバス停まで降りてきてくれるので、とても便利に使ってます

運賃の安さや、きめ細かい路線網で需要の高まるバス。一方で、次のような不安も聞かれた。
鹿児島への帰省客:
最近もまた、高速バス事故のニュースを見ました

熊本への帰省客:
冬だし、いろいろある。事故も新幹線より車の方が滑ったりとか多いのかなと
国内で相次ぐ、高速バスや観光バスなどの事故。2022年12月4日には、博多発 - 新宿行きの高速バスが新東名高速道路でトラックに衝突し、8人がけが。

2カ月前には、富士山などを回る観光バスが、のり面に乗り上げて横転。1人が死亡、28人が重軽傷を負う惨事となった。
横転したバス…どこから脱出する?
こうした事故を受け、西鉄は、事故を想定したバスから脱出する訓練を実施。西鉄だけではなく、九州各地のバス会社の運転手など約100人が参加した。
シートベルトをするのはもちろんだが、いざバスが横転するような事故に巻き込まれたとき、どうすればいいのか。メディアも脱出訓練に参加できるということで、川崎キャスターも参加した。

テレビ西日本・川崎健太キャスター:
バスが横転していますが、ここから脱出するという訓練のために、西鉄があえて横に倒しているものです

川崎キャスターもバスの中へ。
テレビ西日本・川崎健太キャスター:
横転したバスからの脱出訓練、この状態(横倒し)から始めます。で、どこからどう出るかなんですけど…、そもそも事故後の倒れたバスなので、下もガラスが散乱しているし、上も窓が割れた状態なんで、こうした中でどうやって落ち着いて出られるかですよね

担当者:
こちらが非常口ですよ。こちらの方にのぼってください

非常口は、運転席側の一番後ろにあるサイドの窓だ。横転した場合、頭上にあることになる。手と頭とを一緒にあげて開けるのだが―。
担当者:
非常口のレバーになりますので、解除して上げるかたちですね。頭で押し上げるかたち
テレビ西日本・川崎健太キャスター:
頭、はい

担当者:
手だけじゃものすごく重いんですよね。で、手はこの辺を持って、解除してぐっと
テレビ西日本・川崎健太キャスター:
おお、おお
誘導されて、何とか脱出することができた。

テレビ西日本・川崎健太キャスター:
車外に出てきましたけど、最後にドアを開ける瞬間がものすごく重たいです。事故があった直後の動転した状態で、さらに、もし火災も起きていたら、果たしてこれができるのかと思います。そして特に、後方に非常口があるという認識を事前に持っておく、この予備知識が大切かなと思いました

バスが進行方向の左側に横転した場合は、非常口が上になるので、そこから逃げることになる。一方、右に横転した場合は、普段出入りする入り口や出口が上になるので、そこから脱出する。

参加した運転手たちも、ここまで想定した訓練を実際に体験したことはほとんどなく、万が一の事故に備える貴重な経験となった。
「想定外の事故を想定外で終わらせないこと」
宇土一成運転手:
訓練に参加してよかったと思う。何かあったときは、やっぱり慌てますからね。やっぱり常日頃から練習しとかないといけないと思いました

主催した西鉄も、まず事故を起こさないことを前提としながら、不測の事態に備えることの意義を強調した。
西日本鉄道 安全推進担当・泉田幸徳係長:
想定外の事故を想定外で終わらせないことが、まずある。こういった事故があったときに、乗務員がどう動くべきかを一度確認しておくことが、平時の備えとして大事なことだと思っている

担当者は、年末年始に向けて、まず事故を減らすべく気を引き締めている。
西日本鉄道 安全推進担当・泉田幸徳係長:
例年12月は事故が多い。人が多くなるし、車も多くなるので、そういったときに、できるだけ事故件数を減らしていきたいと。自分たちはプロのドライバーなので、「事故に遭わせない」と意識しながら指導するようにしている

重要なのはバスの事故を起こさないことだが、コロナ禍の影響もあり、バス業界は運転手不足が深刻な問題になっていて、経験豊富で質の高いドライバーを確保するのが難しくなっているのが現状だ。
当然のことだが、事業者には、運転手の労働時間や健康状態を細かく管理することがこれまで以上に求められている。
(テレビ西日本)