自民党の税制調査会は、防衛力強化に向けた財源確保のための増税を、2024年以降の適切な時期に行うとするなどの案を取りまとめ、与党の税制改正大綱を16日、決定する。

所得税に“防衛目的税”新設…反発相次ぐも判断先送りし取りまとめ

党所属のすべての議員を対象とした15日の会合では、法人税たばこ税に加え、所得税に新設する“防衛目的税”の3つを組み合わせた案が示された。

きのう(12月15日)の自民・税制調査会
きのう(12月15日)の自民・税制調査会
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増税案では、法人税に、4~4.5%を一律に上乗せし、中小企業に対しては所得2400万円相当の税額控除を設ける。  

また、たばこ税は1本3円相当の引き上げを段階的に行うとしている。  

さらに所得税には、新たに1%のいわば“防衛目的税”を創設し、その分は東日本大震災後に導入した復興特別所得税を引き下げる。

きのう(12月15日)の与党税協の様子
きのう(12月15日)の与党税協の様子

 当初、増税に反対する議員の反発が相次いだが、増税を2024年以降の適切な時期に行うとして判断を先送りしたことでまとまった形だ。
自民党は16日、党内の手続きを経て、与党の税制改正大綱を決定する。

中身の議論も国民への議論も不足…専門家「増税ありきの姿勢あり得ない」

「Live News α」では、経済アナリストの馬渕磨理子(まぶち・まりこ)さんに話を聞いた。

内田嶺衣奈キャスター:
防衛費を拡充するための増税について、どうご覧になっていますか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
防衛費をGDPの2%程度に増強することが既定路線になっていますが、本来は「そもそもこの2%が、多いのか少ないのか」、さらには「防衛費を何に使うのか」といった国の安全保障はどうあるべきかという議論から始めるべきです。
「防衛力の中身」についての議論も、国民への説明も、明らかに足りていないのに、増税ありきの姿勢はあり得ないと思います。

内田嶺衣奈キャスター:
確かに、私たち国民への丁寧な説明に欠けている印象がありますよね。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
増税のかたちを示す前に、既存の予算の使い道を精査して、無駄をなくす作業を行ったのか?国民への説明はありませんでした。
このまま「法人税」が増税されると、企業は、未来の成長のために行う設備投資や人的資本への投資をためらうのが普通です。
日本の企業業績は世界に比べて好調で、OECDの2023年の経済見通しは、主要先進国の中で日本だけがプラス成長の見通しになっています。
順調に経済が成長すれば、当然国の税収も増えるわけで、この前提を忘れていま増税の議論がなされています。

内田嶺衣奈キャスター:
確かに安全保障も大切ですが、私たちの暮らしが豊かになるように景気を下支えすることも、大事な国の役割ですよね。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
経済にブレーキをかける増税ではなく、安全保障は将来の世代も恩恵を受けるので、この将来世代も負担することになる国債でまかなう発想もあっていいはずです。
そもそも日本の国債発行は、国民が政府にお金を貸すかたちになります。つまり国債の発行は、国内で誰かの「資産」となってお金が循環することですので、国が破産してしまうような話ではありません。

内田嶺衣奈キャスター:
企業や働く人への負担が重くなる増税だけではなく、財源を確保する方法は、いくつかあるようですね?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
そうですね、例えば財務省は、外国為替特別会計というお財布をもっています。最近、急激な円安の進行を緩和するために、ドルを売って円を買う為替介入を行いましたが、このお金が外為特別会計です。
このお財布の中にあるお金の多くはドル建てになっているため、円安・ドル高の進行によって
その含み益は約40兆円はあると言われています
。この有効な使い道を考えてもいいはずです。

内田嶺衣奈キャスター:
コロナ禍からの経済再開がようやく始まったばかりのタイミングで増税となると、負担が大きいように思います。財源確保について、増税以外の手段は本当に難しいのか?しっかり議論したのか?その過程を知りたい国民は多いのではないでしょうか。
やはり私たちが納得できるような、丁寧な説明は欠かせないはずです。

(「Live News α」2022年12月15日放送分より)

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