歴史ある楽器メーカーが長年探し続け、編集部でも情報提供を呼びかけた「鍵盤ハーモニカ」の初号機がついに見つかった。

(出典:鈴木楽器製作所)
(出典:鈴木楽器製作所)
この記事の画像(6枚)

これは静岡県の鈴木楽器製作所が1961年から製造していた鍵盤ハーモニカ、メロディオンの初号機「スーパー34」。
その実物が同社になかったため、楽器博物館に問い合わせたり、オークションサイトを調べたり、20年以上に渡って地道に探し続けていたという。そして、同社が来年2023年に創立70周年の節目を迎えるにあたって「スーパー34」を展示・保管するため、特設ページを立ち上げ7月28日から情報提供を呼びかけていた。

情報提供のために紹介された画像(出典:鈴木楽器製作所)
情報提供のために紹介された画像(出典:鈴木楽器製作所)

「スーパー34」は長さが45cm程の鍵盤ハーモニカ。ケースは黒っぽい塩化ビニール製で、発売当時の価格は3500円程度だったという。特設ページでは、当時の広告やケースのイメージなどの情報が掲載され、12月18日まで募集する予定だった。

(参考記事:鍵盤ハーモニカの日本製“初号機”を探しています! 製造企業自らが呼びかけ…50年以上前の商品に情報提供はあった?

(出典:鈴木楽器製作所)
(出典:鈴木楽器製作所)

すると、呼びかけから約3カ月経った10月25日の朝に一報が飛び込み、11月24日に同社サイトで発見のお知らせを発表した。実は「スーパー34」は、同社の子会社で部品を製造するメーカー「ユニバース精機」が保管していたそうだ。

みつかった「スーパー34」は、現在74歳になる子会社の元社員の父親が、仲の良かった鈴木楽器製作所の創業者からもらったもので、20年ほど前に子会社に寄贈したという。そして今回の捜索をネットニュースで知った子会社の社員が社内を調べて発見した。

見つかった「スーパー34」(出典:鈴木楽器製作所)
見つかった「スーパー34」(出典:鈴木楽器製作所)

喜びと感動でした

この「スーパー34」はマウスピースの一部が無く、出ない音もあるものの保存状態はよく、ケースも残されていた。同社は管理体制を整え、来年に社屋1階で展示することを予定しているそうだ。

20年も探してきた楽器と出会ったとき、どう思ったのだろうか?そして「出ない音もある」ということはやはり吹いてみたのか?その音色は?
鈴木楽器製作所の担当者に聞いてみた。

――子会社から発見の連絡があったとき、社内の反応は?

まさかそこに?!という驚きと、ついにみつかった、という安堵の気持ちでした。関係スタッフと歓喜しました。


――ついに実物の「スーパー34」と対面した時の感想は?

喜びと感動でした。
手袋をして緊張しながらケースを開けました。ケースも楽器も状態が非常にキレイでさらに感動しました。実物を見たい、と他部署のスタッフも見に来ていました。


――正直言って、みつかると思ってた?

半ばあきらめていました。

高音が抑えられた柔らかな音が出ました

――実物を鳴らしてみた?どんな音だった?

実際に鳴らしてみました。
やわらかい音色でした。(高音成分が抑えられた音色)


――子会社で見つかったことを、どう受け止めている?

販売子会社へは聞いていたのですが、部品を製造している子会社にあるとは思わず各所への連絡が不十分であったことを反省しています。

メロディオンの現行モデル(下)との比較画像 (出典:鈴木楽器製作所)
メロディオンの現行モデル(下)との比較画像 (出典:鈴木楽器製作所)

今回の募集で、鈴木楽器製作所には初号機以外に7台の旧型メロディオンが提供されたそうだ。
それらはいずれも1960~70年代に作られたモデルで、10数年の間でも細かなマイナーチェンジが繰り返されたことが分かり、大変貴重な資料になったとしている。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。