日本は、世界の動き次第で燃料や電気料金が高騰するなど資源が乏しいことで影響を受ける状況にある。それでも、“地熱”は世界第3位の資源量を誇る。資源が高騰するなかで改めて注目される“地熱”を活用して、良い循環を生み出す取り組みが福島市で進められている。

地域の宝”温泉”を活用

福島県を代表する温泉地の一つ、福島市の土湯温泉。
今、地域の宝の温泉を活用した取り組みが全国から注目されている。

福島市・土湯温泉
福島市・土湯温泉
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元気アップつちゆ・佐久間富雄さん:こちらが、温泉の熱を利用した発電施設になります

起点となるのは、源泉エリアに整備された発電所だ。土湯温泉の源泉から出てくるのは、130℃から140℃の蒸気と熱水。この発電所では、蒸気の熱を利用してタービンを回し発電する。

温泉の蒸気熱を利用し発電
温泉の蒸気熱を利用し発電

元気アップつちゆ・佐久間富雄さん:
(お湯が出続ける事から)24時間発電が安定して出来るのが、非常に有利な特徴になっています。全く自然エネルギーだけ一切CO2も排出しない、というのも特徴となっています

元気アップつちゆ・佐久間富雄さん
元気アップつちゆ・佐久間富雄さん

発電で使用した温泉は、成分も泉質も変わらず旅館に送られる。

きっかけは東日本大震災と原発事故

温泉の熱を利用して発電を始めたきっかけは、「東日本大震災」だった。当時16軒あった旅館のうち5軒が、地震で被害を受けるなどしたため廃業。営業を継続した旅館には、原発事故による風評被害ものしかかった。
このピンチを乗り越えようと始めたのが発電事業だった。

16軒あった旅館のうち5軒が廃業
16軒あった旅館のうち5軒が廃業

元気アップつちゆ・加藤貴之代表取締役:
福島県としてはもう「脱原発」だと。これからエネルギーどうしていくとなった時に「再エネ」だと。温泉で、エネルギーを起こす事って出来ないだろうかというのが、まず大きなポイントだったかなと思います

元気アップつちゆ・加藤貴之代表取締役
元気アップつちゆ・加藤貴之代表取締役

2015年11月に運転を開始、一般家庭約800世帯分をまかなえる400キロワットを発電する。
同時に手がけた小水力発電所と合わせると、電気を売って得られる収入は、1年間で約1億2000万円に上る。

売電収入は約1億2000万円に
売電収入は約1億2000万円に

地域の宝の温泉で得た利益は、高齢者と高校生にバスの定期券代を支援するなど地域に還元している。
さらに、発電の副産物を活用した事業も…。

得た利益は地域に還元
得た利益は地域に還元

温水を利用してエビの養殖

元気アップつちゆ・佐久間富雄さん:
発電工程で捨ててしまう水があるんですが、ちょっと温度が高くなりますので、これを利用して陸上養殖を行ってます

元気アップつちゆ・佐久間富雄さん
元気アップつちゆ・佐久間富雄さん

発電の過程で温められた湧き水を使っての「エビの養殖」 温泉街でエビ釣りが体験出来るカフェは、観光客の人気を集める。
発電事業が新たな収益と事業を生み出し、利益を住民に還元して地域が活性化するという良い循環をもたらした。

エビ養殖で観光の目玉に
エビ養殖で観光の目玉に

地元のものを活かして持続可能な地域を

元気アップつちゆ・加藤貴之代表取締役:
土湯にあるものを、しっかりと活かしきっていくという事。しっかり持続可能な地域を作る為に、これからもしっかり考えてまた行動していきたいなと思っています

元気アップつちゆ・加藤貴之代表取締役
元気アップつちゆ・加藤貴之代表取締役

輸入に頼る燃料が高騰するいま、身近に豊富にある“地熱”はまさに地域の宝だ。

(福島テレビ)

福島テレビ
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