ミカンがおいしい季節だ。甘みを増すためミカンを貯蔵して熟成させる農家も多いが、一部が腐ってしまうという。こうした農家の悩みを、ミカンの産地、静岡県の企業が解決してくれそうだ。LEDをあてることで空気中のカビを除去し、農作物の腐敗を抑制する効果があるという。
貯蔵で“より甘く より長く” 腐敗が弱点
11月に入り、浜松市北区で三ケ日ミカンの出荷が始まった。

静岡県のミカン産地では、これから冬にかけて旬を迎える。ミカンがおいしい季節だ。

静岡市清水区で青島ミカンを栽培する、天野俊吉さん(71)。
天野さんは収穫されたミカンのうち、一部を熟成させるため貯蔵する。

ミカンは貯蔵することで熟成し甘みが増すほか、出荷の時期をずらすことで消費者に長い間ミカンを楽しんでもらうことができる。

しかし貯蔵するデメリットもある。
ミカン農家・天野 俊吉さん:
20トンくらい貯蔵するので、15%くらいは腐敗が出ます。持った時点でつぶれてしまう
「青い光」LEDで腐敗を抑制
こうした農家の悩みを解決しようと、浜松市の企業が立ち上がった。

竹下昇輝記者:
こちらの装置を使うことによって、野菜や果物などにカビが生えるのを防ぐことができるということです
活用したのは「光触媒」だ。

浜松パルス 企画開発室・近藤正人室長:
今見ていただいた「青」の光が、可視光型の光触媒です

この光触媒は青色LEDをフィルターに照射することで化学反応を起こし、強力な酸化作用を発生させるもので、空気中のカビなどの有害物質を除去することができるそうだ。
こちらの企業ではこのLEDの技術を生かして、農作物の鮮度を保つ装置の開発に取り組んできた。

この装置は野菜や果物の他にも、パンや餅などでも腐敗を抑える効果が確認されているという。
さらに…
浜松パルス 企画開発室・近藤 正人室長:
(人体への影響は)全くありません。オゾン・塩素・紫外線など人体に悪い影響があるものを一切出さないというのが光触媒の特徴です。こうした装置を農家さんで使っていただくことは、健康面でも非常に安全だと言えます
試作品で腐敗抑制効果を確認
2021年 天野さんの貯蔵庫で装置の試作品を設置したところ、例年に比べ大幅にミカンの腐りが抑えられたという。

ミカン農家・天野 俊吉さん:
今までは(貯蔵したミカンの)15%くらい腐敗があったが、去年は3%から5%くらいまで減りました

ミカンの収穫を控えた2022年11月、改良を加えられた装置が天野さんの貯蔵庫に設置された。浜松パルスの近藤室長が使い方を説明する。
浜松パルス 企画開発室・近藤 正人室長:
ミカンを貯蔵する1週間前から(装置を)動かしてもらって、貯蔵庫内のカビ菌を減らして、それから(ミカンを)入れてもらう

2021年に比べ、フィルターや風量が改良されたというこの装置に、天野さんも期待を寄せる。
ミカン農家・天野 俊吉さん:
100%(腐敗がなくなる)というわけにはいかないけど、(全体の)1%から2%まで(腐敗が)減ってくれればいいなと。よりよいおいしいミカンをたくさん作って消費者に届けたい
若者の就農の支えになれば
開発を担当した近藤さんは食品ロスを減らすことで、若者が定着しやすい農業にすることを目指している。

浜松パルス 企画開発室・近藤 正人室長:
SDGs目標に「飢餓をゼロに」がありますが、この装置は食品ロスを減らすことが期待できます。農家さんの生産性を向上させることが、まず第1の目的です。そうすることで、若い農家さんたちが持続性のある農業に興味を持つのではないか。そういったところに我々の技術が生かされれば、非常にいいと思っています

2023年には農家向けに販売を目指していて、将来的には家庭の冷蔵庫にも設置できるよう検討を重ねていくそうだ。
農作物の腐りを抑え、食品ロスを減らすこの取り組み。担い手不足が叫ばれる農業の支援にも、役立つかもしれない。
(テレビ静岡)