楽しいはずの“推し活”に疲れてしまう、「推し疲れ」を訴える人が増えている。

SNS上で「推し疲れ」が発信されると、共感する人が相次ぎ、ツイッターのトレンドで上位に入るほどの話題となった。

では、どういう人が「推し疲れ」になりやすいのか、また、陥った場合の対処法について公認心理師の大野萌子さんに聞いた。

生活を潤す一方でストレス要因にも

――“推し活” が与える心理的メリットは?
コロナ禍で、孤独感や孤立感を訴える方が増える中、推し活”は、それらを解消させる対象になったり、ワクワク感といった効用、モチベーションアップに繋がることがあります。

また、仕事や勉強で“推し”がいることによって、生活の糧、生き甲斐みたいなことに繋がり、生活に活力が養われるメリットがあるほか、夢中になれるものを見つけ、同じものを好きになってくれる人がいることで、承認欲求が満たされます。

公認心理師・大野萌子さん
公認心理師・大野萌子さん
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しかし、その一方で、寝食を犠牲にしてしまうまでにのめり込み、ストレスに発展する危険性もあると大野氏は指摘する。

――デメリットは?
過度に依存してしまうことがあり、日々の自分の生活が犠牲になってしまうほどのめり込んでしまうことがあります。

経済的にも時間的にもゆとりがなくなってしまい、負のスパイラルに入っていくといった相談はすごく増えています。

余裕がなくなるので、辛さとか、嫉妬、不安、怒りみたいな“負の感情”に支配されやすくなります。

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今はSNSで繋がることも多いと思いますので、個人的に攻撃されたりとか、トラブルによって不安や葛藤、不満感みたいなものを抱え込むこともあると感じています。

心地良いライバル程度に共有するまでなら良いのですが、気持ちが病んでしまうほどのマウントの取り合いになってくると、それ自体がストレスの元凶になってしまいます。

“推し活”にハマりやすい5つの条件

“推し活”にハマりやすい人には、5つの傾向があるという。

1、日常生活の中で、不満や不安、物足りなさを感じている
2、真面目で責任感が強い
3、子育て、仕事、介護、試験など、ものごとが一段落し、気持ちにゆとりがある
4、生活環境に変化が少なく、人との接点が少ない
5、答えがないことをよく考えてしまう

こういった人たちにとっては、夢中になる対象を作ることで、現実から目を反らせる効果があるというのだ。

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“推し疲れ予備軍”をチェックする5項目

では、“推し疲れ”かもしれないという危険信号はどうキャッチするのか。

推し疲れ度をチェックする以下の5つの項目のうち、3つ以上に当てはまると、“推し疲れ予備軍”に認定されるという。

【推し疲れを疑う5つの項目】
1、楽しいはずなのに、つらい
2、同じ推しの発言がとても気になる
3、情報チェックが義務化
4、情報収集に気持ちが乗らない
5、推しのすべてを把握したい

そんな中、実際に街の人に“推し疲れ”について聞いてみると、「推しに一喜一憂して疲れてしまう」「ファン同士のつながりに疲れを感じる」などといった声が聞かれる。

これらは、アイドルだけでなく、オンラインゲームの課金やキャラクター集めでも増えているといい、その対処法について大野氏は、「SNSの情報を見ない」「体を動かす」などを推奨する。

SNSを見ない、軽い運動を意識

――“推し疲れ”対策は?
好きなものだから離れたくないと思うのですが、一旦、物理的な距離をとることが大切で、SNS等の情報に触れない、見ないことが大事です。

また、心と体は連動しているので、心が縮こまってしまうと体も縮こまります。軽い運動でもマッサージでもいいと思いますが、体を動かすことを意識することが大事です。

あとは、着手しなきゃいけないことに、敢えて頑張って行動をするというのも1つの方法かなと思います。

(イメージ)
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最後に、“推し活”を楽しむための秘訣は、限度を守ることだと話す。

――“推し活”を楽しむために大切なことは?
何事も適度が大切なので、マイナス感情が芽生え始めたら注意が必要です。

自分で、「少しのめり込みすぎてないかな」、「依存し過ぎでないかな」と早めに気づくことが大事です。

課金やチケット購入など、経済的な予算もあると思いますし、ご自身の生活もあります。

そういった時間とかの基準を、自分の中で明確にするというのも大切で、自分の生活以上に“推し活”を優先することがないように、注意が必要だと思います。