2022年10月、鹿児島市の平川動物公園が開園50周年を迎えた。鹿児島県内を代表する行楽地だがここ数年、病気や高齢で死ぬ動物が相次いでいる。
「種を守る」という大きな課題と向き合う動物園の今、そして、その先にある未来を考える。

動物園が直面する大きな課題

大好きな木登りをするレッサーパンダに、一生懸命お母さんのおっぱいを吸うカリフォルニアアシカの赤ちゃん。

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鹿児島県内のみならず、県外にもファンが多い鹿児島市の平川動物公園は1972年10月に開園した。
オープン当初は、153種類の動物たちがお出迎え。1984年にオーストラリアからコアラがやってくると、1985年には最多となる年間90万人を超える人が来園した。当時のニュースでは子どもを肩車して、「朝3時半に起きて来ました」と話すお父さんのインタビューが放送されていて、コアラへの関心の高さがわかる。

県内を代表する行楽地として、これまでに約2,800万人が訪れている。

平川動物公園・福守朗園長:
50年前と今では、全く動物園を取り巻くいろんな自然環境だったり、社会環境が異なってきていますから

開園から50年…平川動物公園は今、大きな課題に直面している。

井上彩香アナウンサー:
園でも大人気だったホッキョクグマですが2年前に死に、今は何もおらず、寂しさを感じます

2年前に老衰で死んだホッキョクグマのカナ。

ハチミツを豪快に飲む姿が人気だったマレーグマのハニイ。2022年9月に病気で死んだ。

井上彩香アナウンサー:
当たり前のようにみてきた動物が1種類、2種類といなくなっていく現状は、福守さんは、どのようにとらえていらっしゃいますか?

平川動物公園・福守朗園長:
これは平川動物公園にとってもなんですけど、今、日本の動物園、世界の動物園が直面している共通の課題

トレーニングなど「今いる動物をより大切に」する取り組み

園には多いときで186種類の動物がいたが、現在は134種類に。
動物の高齢化や病気に加え、規制強化で外国の動物を連れてくるハードルも高くなり、2021年の鹿児島市議会では、10年後、8種類の動物が飼育できなくなる可能性が明らかになった。

その8種類に含まれているインドゾウ。飼育担当の秋元さんが推定46歳のアンリーに何やら声をかけている。

平川動物公園飼育員・秋元哲さん:
ヒップ!テイルー!そーう、そうそうそう

平川動物公園飼育員・秋元哲さん:
麻酔を使ったり、鎖をつないだり、強制的な手段で動物に負担をかけることなく、健康をチェックできるので、動物にとっても私たちにとっても、とても有効なトレーニング

動物が自ら動くことで、麻酔などによる身体への負担を防ぎ、健康寿命を延ばす。トレーニングにはそんな狙いがある。

こちらはレッサーパンダ。合図で直立姿勢になったわずかな時間に、飼育員がおなかを触る。実は、これも健康チェック。

平川動物公園 レッサーパンダ飼育担当・日髙愛子さん:
腫瘤(※できもの)とかイボとか異物がないかとか、あとは、おなかの張り具合。結構ガスがたまっていないかとか

種を守るために動物たちと日々向きあっていた。

日光浴をしているのは、トキイロコンドル。日本では、平川動物公園でしか見られない。1976年にペルーからやってきて、既に46年がたった。

平川動物公園 トキイロコンドル飼育担当・山田透生さん:
こういう動物がいるんだよ、ということをお客さまに伝えるというのは動物園の役目でもあるので

“選択と集中”動物園のあり方

種を守る取り組みを進めても、いつか必ず来る動物との別れ。福守園長が見据える動物園の未来像を聞いた。

平川動物公園・福守朗園長:
キーワードは「選択と集中」。飼育する動物の種類数を減らすことで、1種類あたりに割り当てられる面積を増やす。より充実させた環境、内容で飼育することによって、さらに動物の魅力を皆さまにお伝えできる

選択と集中の一つの例が、2015年に完成したチンパンジー舎。かつては、この場所で3種類を飼育していたが、チンパンジーに絞ることでスペースが広がり、群れでの飼育が可能に。繁殖にも成功したそう。

この50年間、たくさんの思い出が紡がれてきた。

1歳の娘と親子3人で来園・父親(鹿児島市出身):
実家もすぐ近くなので、小さいころから来てました

1歳の娘と親子3人で来園・母親(鹿児島市出身):
やっぱり(子どもの)動物園デビューはここだよねって言いながら

シンリンオオカミのファン・広島から来た男性:
ツイッターか何かで目にして来て、そのとき生まれて初めてシンリンオオカミ見たんですけど、一気に引き込まれた。1カ月、2カ月に1回くらいは来させてもらって

平川動物公園・福守朗園長:
10年後、20年後、さらには50年後を見据えて、そういうことを真剣に考える時期になっていると思いますね。世代を超え、時代を超え、多くの方の思い出をつないでいく場所。そういう場所であれたら、私たちとしても非常にうれしく思います

平川動物公園では、種を守りながら、園の今後のあり方が模索され始めている。

(鹿児島テレビ)

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