当初予算は100兆円
新たな年度にどれくらいの歳出が必要か。そのための歳入をどうするか。令和に入って日本の国家予算は101兆、102兆、106兆、107兆と推移してきました。当初予算に限って言えば、ですが。
新型コロナ対策で大変なことに
新たな年度が始まって予想できなかった事態が出来すると「補正予算」が組まれることになります。
2020年には、新型コロナウィルスの流行とその対策が必要となりました。当初102兆円で組んだ予算は、3次にわたる補正を経て175兆円まで膨らんだのです。
もともと102兆円の予算も32兆円の公債発行で賄っていましたが、補正予算を組むまでに税収が飛躍的に増えることなどあろうはずもなく、補正後予算175兆円のうち112兆円、実に64%が公債金、いわば借金に頼ることになりました。
この記事の画像(4枚)当初見込んでいた年間支出額を上回る借金を新たに抱えたニッポン。
コロナ禍は続く
コロナ禍2年目に入った2021年度予算は、当初、106兆円でスタートしましたが、補正予算を組んで142兆円となりました。当初43兆円を見込んでいた借金は、65兆円に。
そして今年度予算。
当初、107兆円で組まれた予算は、第一次補正で110兆円になりました。そして第二次補正で新たに28兆円が積み増しされようとしています。28兆円のうち22兆円が新たな借金です。
大丈夫かニッポン。
貯金か借金か
「欲しいものがあるならお金をためて買え」「やりたいことがあるならお金をためてやれ」「身の丈に合った生活をしろ」という教育を受けました。
家を建てたり、車を買ったり、後に残る「モノ」のためにする借金は良いけれど、レストランで食事をしたり、海外旅行に行ったりする「コト」のために借金をしてはいかん、というのがわが家の家訓です。
子供のころぼくの周りにいた人たちはみんなそんな感じだったなあ。なかにはお金持ちの人や贅沢好きの人もいたけれど、羨むでもやっかむでもなく、違う世界のことだったように思います。
そもそも赤字国債は原則ダメなのよ
財政法では、予算の赤字を埋めるための借金(いわゆる赤字国債の発行)は認められていません。そのため、予算を編成するたびに赤字を埋めるための国債を発行する法律を作って特例として借金をしてきたのです。ちょっと前までは。
予算編成のたびにいちいち法案を作って国会で審議して赤字国債(特例公債)を発行する手間を省くために、今では2年、3年の時限立法になっているようです。だったら財政法そのものを改正すればいいのにとも思いますが、歯止めが利かなくなることへの惧れや開き直ることへの後ろめたさがあるのでしょうか。
外国から借金するわけではないけれど
開き直りといえば、日本の国債は諸外国と違って国内引き受けが多いから心配いらないんだ、という意見があります。諸外国と比べればそうなのでしょう。
でも、それって子供の貯金を拝借するようなものではないですか。子供に無断で親子二世代ローンを組むようなものじゃないですか。サラ金から借りるよりは心配は少ないかもしれませんが…。
財務当局にはいろいろ思うところはあるでしょうが
当初予算は公債依存率を30%台に抑えて100兆円から漸増にとどめながら、補正予算でやり放題というのも姑息な感が否めません。官僚中の官僚といわれるエリート集団といえども泣く子と与党には勝てないということかしら?
多数決が必ずしも正解を導かないように、専門家を抜きにしたシビリアンコントロールにも不安が残ります。
とは言え…
本当に必要な支出ならば、借金してでもするしかありません。ですが、日本には「人気取り」とか「ばらまき」とか思われかねないような支出をする余裕はないはずです。
毎年毎年当たり前のように借金を重ねると政治家も国民も感覚が鈍感になって、ついには麻痺してしまうのではないかと心配です。
ときどき思い出して気を引き締めましょう。
【執筆:フジテレビ解説委員 岡野俊輔】