医療従事者とその家族の苦労を気遣われた両陛下

天皇皇后両陛下は、5月20日、日本赤十字社の大塚義治社長と富田博樹副社長から、新型コロナウイルス感染拡大の現状と医療体制などについてご進講を受けられました。日本赤十字社の大塚社長からのご進講は4月23日に予定されましたが、日本赤十字社の都合により延期され、この日になったものです。

お住まいの赤坂御所でご進講を受けられる天皇皇后両陛下
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ご進講は予定を超える1時間半に及ぶもので、新型コロナウイルスに関するご進講は4回目のことです。ご進講の冒頭で、陛下は次のように感謝の言葉を述べられました。

「日本赤十字社の職員を始め多くの医療従事者の皆さんが、自らの感染の危険も顧みず、大勢の患者さんの命を救うため、また、感染の拡大を防ぐため、日夜、大変な尽力をされてきていることに深い敬意と感謝の気持ちを表します」

そして、医療従事者という立場の苦労に労いと心配の気持ちを示されました。

「医療物資が不足する中、医療に従事される皆さんには、大変なご苦労を重ねられてきていることと思います。また、このような状況が長期化する中、皆さんのお疲れもいかばかりかと案じていますし、心ない偏見に遭う方もおられると聞き心配しています」

偏見や言われなき差別が広がっていることを案じられたのでした。

医療従事者に敬意と感謝の意を表された天皇陛下

また今回は、日本赤十字社の名誉総裁を務める皇后・雅子さまからも感謝と労いのお気持ちを表されました。

「医療現場で働かれる皆さんには、危険も伴う大変重い任務を担ってこられました。皆さんの懸命な医療活動は、多くの患者さんの命を救ってこられたものと思います」

「これまで、医療活動に献身的に力を尽くしてこられている方々、そして、その方々を支えているご家族や周囲の方々に、陛下とご一緒に心からのお礼の気持ちをお伝えしたいと思います」

医療従事者の心労を気遣われた皇后陛下

両陛下からのお言葉の後、大塚社長から、医療従事者の疲労が蓄積する中、長期化の恐れもあり、どのように体制を維持するか、現場での苦労がどのようなことかなどについて説明を受けられたということです。

この中で、皇后さまは、医療従事者の「心の苦しみ」を心配されています。心のケアを組織的に取り組んでいるという説明に大きくうなずかれたということです。また、偏見や差別を受けたケースの説明では、陛下とともに「そういうことがあるようですね」「大変でしょうね」といった言葉も述べられたということです。

その一方で、地域の子供などから励ましや感謝の手紙などが届き、院内で壁新聞にして張ったりしているという話には、両陛下で笑顔を見せられていたといいます。

日本赤十字社の大塚義治社長と富田博樹副社長

そして、両陛下には、看護師さんなどの職員が作った、日赤のゆるキャラが入った男性用と女性用の手作りマスクが渡されたということです。

ご進講を通して、医療従事者の苦労と併せてその家族の方々の苦労に対しても心を寄せられ、無事に医療行為が続けられることを願われたのでした。

秋篠宮さまご夫妻は済生会の理事長らとテレビ電話

皇嗣の秋篠宮さまも医療従事者の現状についてお話を聞くとともに、労いのお気持ちを示されています。

秋篠宮ご夫妻は、テレビ電話システムを使い、社会福祉法人恩賜財団済生会の炭谷茂理事長ら6人から、これまでの患者の受け入れなどについて約1時間、話を聞かれたということです。長女の眞子さま、次女の佳子さまも別室からモニターで参加されたということです。

テレビ電話の様子(済生会ホームページより)

そして、お話を聞かれた秋篠宮さまに、済生会の職員と全国の医療従事者に対するメッセージをお願いしたところ、お言葉をくださったそうで、済生会ではお許しを頂いた上で「新型コロナウイルスで秋篠宮皇嗣殿下からメッセージ」として、ホームページに掲載しています。秋篠宮さまは済生会の総裁を務められています。

秋篠宮さまが寄せられたメッセージ(済生会ホームページより)

感染拡大の中、東京の中央病院で救急を休止し、専用の収容病棟に2病棟を転換して感染者を受け入れたこと、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の患者を受け入れたことなどについて、「いずれのお話からも、感染の危険性を強く感じながらも日々最前線で活動を続ける病院職員の方々の姿勢と奮闘ぶりに大きな感銘をうけました」と述べられたということです。

さらに、「感染防止のための防護服やゴーグルなどの医療資材が不足し、また限られた人数で日々患者と向き合っている皆さんの身体的そしてメンタル的な疲弊を心配しております。また、誠心誠意、治療や看護にあたっている多くの職員が、地域で心ない偏見に遭っていることを聞き、深い憂慮の念を抱いています」と、日々の治療がいかに困難な中で行われているか案じる思いも示されています。

最後には、「長期にわたって続くものと推察いたします。この感染症と日々向き合っておられる皆さんには、くれぐれも自らの感染防止や心身の健康に留意しながら、誇りをもってこの大きな困難を乗り越えていかれることを願っております。そして、皆さんを始め、日本の各地で医療に従事されている方々の多大なご尽力に対し、深く感謝いたします」と済生会の関係者だけでなく、全国の医療従事者へ感謝の気持ちを示されています。

「心を一つにして乗り越える」示された国民への思い

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、皇室行事や皇室の方が出席する行事は、中止や延期となっています。これまでなら、両陛下や秋篠宮ご夫妻は出席した式典でお言葉を述べ、参加者を通して国民に語りかけられることも可能でした。今はその機会もなく、国民に語りかける機会は、こうした発表でしかできなくなっています。

それでも、天皇皇后両陛下は日本赤十字に、秋篠宮さまは済生会にご進講を通して、いずれも医療関係者への感謝の気持ちと心配する気持ちを示されているわけです。医療従事者が偏見を持たれたり不当な差別を受けたりしていることなど、私たちも考えなくてはいけないことを示されています。

天皇陛下は、日本赤十字社からのご進講の中でも「心を一つにして力を合わせ、困難な状況を乗り越えていく」という言葉を述べられています。

新型コロナウイルスの感染拡大は一時期の猛威は見られなくなりましたが、いかに一丸となり感染拡大をさらに食い止め、もう一度調和ある社会にするべきか、私たちは両陛下や秋篠宮ご一家の「お言葉」を深く受け止めなければいけないのではないでしょうか。

【執筆:フジテレビ 解説委員 橋本寿史】