宮内庁は10日、天皇陛下に「前立腺の肥大が認められる」と発表した。

前立腺肥大とはどういった状態なのだろうか。

混同されがちな、前立腺がんとの違いや治療法、さらに前立腺がんの早期発見に必要な血液検査の重要性について、くぼたクリニック松戸五香の窪田徹矢院長が解説する。

60歳以上の50%は前立腺肥大に

ーーまず、前立腺が肥大するとは、どういう状態?
前立腺は男性だけにある臓器で、その働きというのは男性の生殖器の機能と密接に関係しています。

前立腺が肥大しているというのは、膀胱の下にある前立腺という臓器が、尿道の通り道を塞いでしまう。要は、前立腺が肥大することによって、尿道が狭くなり、おしっこが近くなるとか、尿が漏れるとか、尿が出にくくなるという状態です。

このような症状が出たら“前立腺肥大症“という病気になります。

くぼたクリニック松戸五香・窪田徹矢院長
くぼたクリニック松戸五香・窪田徹矢院長
この記事の画像(5枚)

ーー前立腺の正常な大きさは?
前立腺の大きさはよく“クルミ大”といわれ、正常な前立腺の重量は20gぐらいと言われています。

大きい場合はだいたい30g以上あり、そうなると前立腺肥大という状態になります。

場合によっては、100gとか200gといった、みかんやリンゴぐらいの大きさになる方もいらっしゃいます。

(イメージ)
(イメージ)

前立腺肥大は加齢とともに起こり、大体60歳以上の50%は前立腺肥大の状態になります。2人に1人はあると考えていいです。

また(60歳以上の)4人に1人ぐらいに前立腺肥大症の症状があります。しかし、症状のある人全員が前立腺肥大症で治療しているかと言ったら、それはまた別の話になります。

おしっこが近いのは年のせいだというふうにして、病院に来ていない人の方が多いと思われます。

ーー治療法は?
前立腺肥大症の治療は、まずお話を聞きながら薬で治療するのが一般的です。薬物治療がなかなか効かないという方は手術などをするという形になります。

その場合、前立腺肥大症はがんではないので、症状が良くなればいいわけですから、前立腺を全部取るのではなくて、前立腺には内腺と外腺とがありますが、内側の肥大している部分だけを取る手術をします。

一方で、前立腺がんの場合は、基本的にがんの可能性のあるすべての前立腺をとって、膀胱と尿道をつなげる手術をします。

男性ホルモンの働きが原因?

加齢とともに起こる前立腺肥大だが、男性ホルモンの低下が影響しているとの見方がある。

ーー前立腺肥大の原因は?
前立腺肥大の原因ははっきり言ってよく分かっていませんが、男性ホルモンの働きが関与していると言われています。

男性ホルモンは20歳をピークに、30代、40代ぐらいからどんどん下がってきますが、その男性ホルモンが低下することによって、環境の変化で前立腺が肥大してくると考えられます。

(イメージ)
(イメージ)

一方で、窪田院長は“前立腺がん”との関係については、2つは全く違う病気だと語る。

ーー前立腺がんと前立腺肥大症は違う?
そうですね。前立腺がんと前立腺肥大症は全く違う病気です。

結構間違えられやすくて、がんと肥大がごっちゃになっている方がいらっしゃると思います。

前立腺肥大症があってがんの人もいますし、前立腺肥大が全くないけど前立腺がんの方もいらっしゃいますので、全く違う病気と考えていただいていいと思います。

家系に前立腺がん2人でリスク5倍に

ーー前立腺がんは遺伝する?
アメリカの調査などによると、お父さんや兄弟に前立腺がんの人が1人でもいる男性は、前立腺がんになる危険性が2倍と言われています。

さらに2人いれば、5倍になるという報告もあります。
家系の中でそういう方がいらっしゃると危険度が高くなる可能性があるとアメリカの調査は示しています。

一方、前立腺肥大症に関しては、一般的に2人に1人はなるような病気ですから、特に家族性はないです。

血液検査で早期発見ができる

前立腺肥大などの症状がなくても、前立腺がんを発症するケースがあると指摘する窪田医師。
早期発見のためには、血液検査が重要だと強調する。

(イメージ)
(イメージ)

ーー早期発見のためにできることは?
前立腺がんは、血液検査(PSAの採血)をするだけで、がんかがんじゃないかがわかるので、人間ドックや健康診断でPSA検診をしているところもたくさんあるので、ぜひ男性の方はPSAの採血をしていただきたいと思います。

前立腺がんは基本的にはほとんど亡くならないがんですし、進行も遅いです。
早期発見で速やかに治療するとか、経過観察という段階もあるので、早めに見つけることが大事です。

血液検査をするだけですから、人間ドックや健康診断でオプションがあったら追加すると良いと思います。