石川県の県庁所在地、金沢市でも地域の足となっていた路線バスが激減している地域がある。公共交通について、市はどのように考えているのだろうか?

県庁所在地でもバス激減

視聴者:
私の実家がある金沢市の湖南地区では、地域の足となっていたバスの本数が激減しています。公共交通機関の現状や市の方針を取材してください。

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こんな依頼をくれたのは、金沢市出身で現在、奈良県に住んでいる笹井武広(ささいたけひろ)さん。

記者:
なぜ今回投稿しようと思ったんですか?
笹井さん:
実家の八田町に帰省する機会があってバスを使おうかなと思ったら、バスが減便になっていた。県外から家族を見守っている立場としては、公共交通がないというのは心配だなと思って、今回このような投稿をさせてもらった。

笹井さんは実家近くへの移住も考えたそうだが、公共交通が少なくためらっていると言う。

笹井さんの実家がある金沢市八田町(はったまち)。金沢市の北部、湖南(こなん)地区にあり人口はおよそ1170人だ。

25本から8本に「行ったら帰れない」

バス停に行ってみると…

向山侑希アナウンサー:
時刻表を見てみると、金沢駅に向かうバス、平日は7時台と8時台。かなり時間が空いて夕方の4時台と6時台、さらに土日祝日は10時台の1本しかありません。

この地区でバスを運行している西日本JRバス。採算がとれないことから、今年3月まで、平日25本あった路線バスは、8本に激減した。

「空気乗せて走っていますから」

町会長に話を聴くと…

八田町 岡島一郎町会長:
行ったら帰れない。これで終わりですから…。
記者:
本数増えてくれたらいいなとか?
八田町 岡島一郎町会長:
実際、空気乗せて走っていますから、バスがね、それを見ていると…。

この日、午前8時台のバスを利用したのはたった1人。町内会としても、バスの減便は仕方ないと話す。町の人に普段の移動手段を聞いてみると…

記者:
移動手段は?みなさんどうしているの?
町内の人:
私は夫の車で行ってますけど…。
町内の人:
今のところ主人が元気なもので、乗せていってもらえるからね。
記者:
運転免許を今も持ってらっしゃる方は?
町内の人:
ほとんど、全員や。
記者:
返納後のことを考えている人は?
町内の人:
そこまで考えとる人はおらんやろ。

今回、話を聴いた人は、ほとんどが車で移動。依頼者である笹井さんの父親も、今は車を運転しているそうだが…。

笹井さん:
今、家族の中で車を運転しているのが父親が中心なんですけど、70歳を過ぎて車を運転していて、持病もあるので、病気が悪くなった時に介護が必要になるかもしれない。

免許の返納も考えたそうだが、公共交通機関が不十分で踏み切れないそうだ。

こうした現状について金沢市の担当者は…

金沢市交通政策課 近藤陽介課長:
年を重ねるごとに運転にも身体的な制約も出てまいると思います。高齢の方で免許を返納された方、これからしなければならない方、そういった方にまずは使っていただけるサービスというものを導入しなければいけない。

試験的に始まった乗り合いタクシー

そこで、金沢市が今年7月から試験的に始めたのが「チョイソコ」という取り組み。

これは公共交通が不便な市内6つの地区で、乗り合いのタクシーを運行するというもの。

事前に登録が必要だが、電話やインターネットで予約をすると、同じ時間帯で予約した人と乗り合いで、駅や病院、スーパーなど市内、約240カ所のスポットに移動することができる。

金沢市交通政策課 近藤陽介課長:
路線バスが走るほどの需要はないけれども、一定の移動があるという所では、まずはタクシーよりも乗り合いのこういう交通サービスを導入していくのが適切ではないかと。

チョイソコは1回で最大8人乗車が可能。運行はタクシー会社が行っていて費用のほとんどは市が負担する。そのため利用料は1回300円からだ。

三谷地区の利用者:
バスが結局廃止になったんで、これしかないから…。タクシーのことを思えば(安い)。自分の行きたい時間をお願いすればちゃんと来てくれるので、その点は便利ですね。

「チョイソコ」で見えてきた課題

八田町のある湖南地区では現在週3回、午前8時から午後3時まで運行している。ただ住民に話を聞くと…

記者:
周りでは使ったりしている方います?
街の人は…:
いや、まだ聞いていない。
街の人は…:
知ってますけど、まだ利用していない。
記者:
使ったことある方いますか?1人もいませんね
街の人は…:
登録はしたけど使っていない。

チョイソコについて知ってはいるものの、利用したことがある人はほとんどいなかった。その理由としては…事前の登録が面倒くさい。午後3時までというのは不便。タクシーを使えばいいと思う。詳しい利用方法をまだ知らないという人もいた。

記者:
チョイソコに登録している方は、多く出会ったんですが…使ったことがある人はなかなかいなくて。
金沢市交通政策課 近藤陽介課長:
認知は進んでいるんですけども、利用者は1日直近で10人程度というところですので、提供できるサービスの量としてはまだまだ余裕があるので、もっともっとたくさんの方に使っていただかなければいけないということで、利用促進に努めているところです。

金沢市は、チョイソコの運用を週5日に拡大し、認知度アップに努めていくと言う。チョイソコの登録率は9月末時点で11パーセント。利用者のおよそ9割は60代以上で1日平均およそ11人が利用しているということだ。

金沢市はチョイソコの周知を図るため、公民館などのイベントでチョイソコをPRしていくと
いう。

(石川テレビ)

石川テレビ
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