スマートフォンの決済アプリなどを使い、賃金をデジタルマネーでもらうことができるようになる。

残高上限は100万円

これは、賃金を「PayPay」といったスマホの決済アプリなどを使い支払うことができるようにするもので、10月26日、厚生労働省の審議会で省令の改正案が了承された。

労働基準法では、賃金は現金で支払うことが原則となっているが、省令の改正でデジタルマネーでの支払いが認められることになる。

安全性を確保するため、アプリ口座の残高の上限は100万円とする。2023年4月に施行され、その後、運用が始まる見通しだ。

「イノベーションのジレンマ」打破へ

三田友梨佳キャスター:
1500人全員がリモートワークで働く会社、キャスター取締役CROの石倉秀明さんに聞きます。
このデジタル賃金、経営者である石倉さんの目にはどう映っていますか?

キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
正直、会社経営者としては、この導入で給与支払いの手間が増えそうだなというのが第一印象です。ただ、新しい働き方を模索している立場からすると、銀行口座を通さないスマホだけで完結する働き方を推進するビジネスが生まれてくる予感はします。例えば、空いた時間にスマホでできる仕事を依頼されて、そのお金がスマホ決済アプリに入金されて、そのデジタルマネーを使って買い物をする。一連の仕事の依頼から報酬の受け取りまでがスマホだけで完結する働き方を実現する人が出てくると思います。そこまで極端でなくても、高校生や大学生がアルバイト代を全部スマホ決済アプリに入金してもらって、そのアプリで生活する世界は容易に想像できます

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三田友梨佳キャスター:
これまで当たり前だった、働いたら報酬は銀行口座に振り込まれるというカタチが変わっていくかもしれませんね?

キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
銀行口座の場合は、利子はほぼないようなものですが、スマホ決済アプリであれば使うたびにポイントが付与されたりすることもあります。クレジットカードなどを持たない若い世代を中心に、デジタル給与支払いは広がっていくことはあると思います

三田友梨佳キャスター:
銀行ビジネスが転換点を迎えることになるかもしれませんね?

キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
銀行はお金を預かるのが仕事ではなく、その預金を元にお金を貸し出してその利子で儲ける訳ですが、もしスマホ決済アプリへの直接入金が増えるとビジネスの根幹である預金額が減ってしまうことになります。また、データ活用という点でも銀行は不利だと思います。銀行口座だといくら入ってくるとか、家賃など大きな金額の支払履歴は把握できますが、1人ひとりがいつ、どこで、何に、いくら使ったかは把握できないわけです。その点、スマホ決済アプリであれば、お金がいくら入り、いつ何に使ったのかを全部把握出来るため、そのデータを使った少額融資とか広告などビジネスの幅を広げやすくて、スマホの中で総合金融会社みたいなものが生まれてくる可能性もあると思います。規制緩和が進む中で、既存の金融機関はこれまでの成功体験を捨てて、いわゆる「イノベーションのジレンマ」を打破できる取り組みがどこまでできるかが注目のポイントだと思います。

三田友梨佳キャスター:
デジタル賃金の普及が加速していけば銀行のビジネスモデルにも影響が及ぶ可能性がありそうですが、新たな選択肢として給与を受け取る従業員の利便性が高まることが期待されます。

(「Live News α」10月26日放送分より)